24話 焼き鳥
今回の焼き鳥の前に夏の日差しと公爵というエピソードが入る筈でした。
順番修正の入ってる回に話数が追加されています。
カクヨムからの転載に疲れてまたパニクったら、こちらの更新滞るかもしれないので、その時はカクヨムをご覧ください。そちらはリアルタイム投稿です、すみません。
「ケーネスト、あなた昨日は森へ行かれてたんですか?」
朝の食堂にて妻と遭遇し、そんなことを言われた。
森に魔獣退治に行った話が妻に伝わっていたようだ。
「ああ、魔法の修行に魔獣狩りだ。ほら、記憶が欠損してるから念の為に魔法使いに教わっておくかなと」
「それで、大丈夫だったのですか?」
「けっこう疲れたけど、なんとかなったし魔獣も狩れたぞ。飛行タイプだったので今日の昼は焼き鳥が食べられる」
今回は調味料もあるから、焼き鳥のタレが作れるし、キャベツのタレも作れる。
「まぁ、それは食べても大丈夫なやつなのですか?」
妻が魔獣と聞いていぶかしむ。
「もちろん魔法使いや騎士に食べられると保証されたものだけを食べる」
そして俺は、お昼には魔獣、魔鳥の焼き鳥を作った。
庭園で! 厨房のおまかせではなく、お庭で自ら炭火を使った!
お庭バーベキューでしか味わえない風情と味があるから!
そしてご機嫌で大好きな焼き鳥をもぐもぐと食べ進めていく。今回はタレ味と塩味の2種ある。
あー! うめぇ~! この濃厚なタレ味!
しかし、こちらの塩味も捨てがたい! 素材の良さが伝わる!
「美味い……」
実際に口に出す言葉は、念の為に選んだ。
何しろ公爵だからな。
脳内はともかく、表向きは多少品もよく。
と、たまに庭の警備の兵士や騎士が怪訝な視線を向けてくるが、気にしないこととする。
そんな風にお庭バーベキューを満喫してたら、また日傘を差した妻のアレンシアが現れた。
「あなた……またこんなところで……公爵邸の庭園をなんだと思っているのですか?」
「私の……庭!」
なんと言ってもケーネストは公爵だから!
「それはそうでしょうが! おかしいでしょう! 邸内の食堂ではなくこんなところで」
「すまない、そんなに目障りか? 一人ガーデンパーティだと思って見逃して欲しいんだが、君がそんなに嫌なら今度は近所の河川敷まで行くべきか」
「おやめください! 領民が驚くでしょう!! 全くあなたって人は!」
「そうカリカリせずに、君も食べて見るといい」
「まぁ! 私にその串にかぶりつけとおっしゃるの!?」
そうだけど……貴族女性には厳しいか。
「もー、しょうがないな、じゃあ串から外してやるけど、特別だぞ、私の妻だから」
特別サービスだ。
「しょうがないですって?」
妻がむっとしてしまった。
「上品な奥様は串物にかぶりつけないんだなぁ、せっかく刺したのに。ほら、肉を外したからフォークで優雅に食べるといい」
と、皿を差し出す俺だったが、
「……」
妻は憮然とした顔で相変わらず手には日傘を持ち、タレ味の鶏肉と塩味の鶏肉を見てるだけだ。仕方ないなぁ。
「口を開けろ、ほら、あーんだ」
「なっ!?」
「あーけーろ」
「くっ」
なんでそんなクッコロ女騎士みたいな反応なんだよ。
「ほら、どうだ? このタレ味は初めてだろ?」
……もぐもぐもぐもぐ。
妻に無理やり口を開けさせ、肉を突っ込んだら顔を赤くしつつも普通に食べている。
「この味は初めてですけど! それが何か!?」
「じゃあ次、塩味な、これは炭火で炙ったから、また少し違うかもだ」
「…………食べられますけどぉ……」
そんないい方ではあるが、アレンシアのその目は輝き、顔は紅潮している!
「素直に美味いと言えばいいのに」
「し、知りません!!」
妻はプンスコと怒ってまた俺の飯をなんだかんだと味見して去っていった。
ぶつくさ言いつつも毎度飯時にわざわざ外にでてくるから、気にはなるんだろうな。
「パパー」
「お、マイエンジェル、ミルシェラ!」
今度は愛娘のミルシェラが現れた。娘は串が口の中に刺さると怖いから、肉を外して食わしてやることにする。
「おいちい」
「ミルシェラは塩とタレ、どっちが美味い?」
「こっち!」
流石子供、タレ味を選んだ。
アレンシアにも今度は塩とタレ味のどちらがよかったか、訊いてみるか……。
なんだかんだ 本日のお庭バーベキューも美味しかったな!




