170話「夏休みの計画」
公爵家の晩餐に家族が揃った。
目の前には豪華な料理が並べられている。
子豚の丸焼き等はいつ見てもインパクトがすごい。
「先日またあちらに行った時は、随分ゆっくりでしたわね」
日本に行ってから、帰りが遅かった俺達に対して、アレンシアが言葉でチクチク刺して来た。
「あちらは娯楽が多くてね、ミルシェラも初めて見るものが多くて新鮮だったろうし」
ケーネストの名前が出せない代わりに娘の経験の一つだと言い訳をしてみる。
「お母様もあちらに行けたらいいのですが」
ミルシェラものっかってくれた。
「私は言葉も通じないところに行きたいとは思いませんわ」
「この夏は自粛でよそに行かないなら、せっかくだし、少しあちらの言葉の勉強でもしてみるかい? わたしとミルシェラで少しずつ教えてもいい」
子供向けアニメから勉強してみるとかな。
翻訳、通訳は俺とミルシェラでやればいい。
「そうですよ、お母様! そうすればあちらの映画も楽しめるようになりますし! 老後の楽しみにできます!」
「老後って……まぁ、確かに暇ですから、多少は勉強してもよいですけれど」
「夏といえば水場でボート遊び等だった気がするが、君はボート遊びもたいして好きではないだろう?」
「買い物とオペラ鑑賞などの方が好きですわ」
「買い物! まぁ、それなら」
「オペラ……? ではお父様、宝塚動画等で勉強していただいたらいいのでは?」
「あー! なるほどな、あちらのな。でも円盤とか買わないと最初から最後までは無いような気がするから、そちらの前に簡単そうな子供向けアニメから」
「そうですね」
「子供向け?」
「アレンシア、子供向けとはいえ、バカにしてるわけではないよ、多くの人が外国語を学ぶ時によくやる手法だから、悪くないと思うんだよ」
「まぁ、いいですけれど」
「買い物で思いだした。君の行方不明騒ぎで忘れたんだが、お土産の化粧品は食事が終わったら渡すよ。見た目の綺麗なのは通販で注文しているが、届くのに時間がかかるから少し待ってくれ」
「そうですか」
アレンシアは皿の上のお肉をナイフで上手に切り分け、上品に食べている。
「服や雑貨なんかはカタログがあるから、なんなら自分で選ぶといい、自宅で買い物ができる」
「ミルはアイスが食べたいです!」
「それなら……後で一緒に作ってみるか?」
「はい!」
「化学の勉強と家庭科の勉強が同時に出来るみたいなものだしな」
「お母様も一緒にアイスを作りましょう!」
「料理は料理人に任せた方がよいでしょうに」
「夏休みらしいことをしたいので!」
「仕方がないわねぇ」
アレンシアはアイス作りにはたいして興味がなさげであるが、ミルシェラの勢いに押された。
そして晩餐の後に、
「はい、お土産、執事に渡しておくな」
荷物になるのでひとまず執事に紙袋ごと渡す俺。
ドラッグストアのビニール袋から綺麗でオシャレな花柄の紙袋に変えるくらいの気遣いはしてある。
「ありがとうございます」
「ついでに夏らしく花火と灯篭祭りでもやってみるか?」
「お父さま、灯篭はどうやって手に入れるんです?」
「紙で作る、そして夜空に飛ばすぞ、願いをかけて」
「素敵! ロマンチックです!」
ミルシェラは嬉しそうに手を叩いた。
「また手作りですの? 職人に頼むのではなく?」
「ほとんどは職人に頼むよ、でも自分達が願いをかける灯篭くらいは自分で作ろう。でもアレンシアのは絵を入れるだけにするよ」
「絵を入れるのですか?」
「ああ、花の絵でも猫でも好きなものを描くといい、刺繍だって何か柄を入れるものだろう?」
「それはまあ、確かに」
「絵が嫌なら、言葉でも良いと思いますよ、金運アップしたいなら、財運とか書けばいいかと」
「そちらのほうが簡単そうね」
「でも今日はもう夜だから、アイス作りも灯篭作りも明日からな」
「はーい」
「ひまわり畑に行きたかったわ……」
アレンシアが独りごちる。
あ、ひまわりの花畑かぁ。以前他の領地で見たなぁ。
「か、川遊びか海に行きましょうよ、お母様! 綺麗だと思います! そしてひまわりはうちの庭にも少し咲いてます!」
「そういえば以前ひまわりの種をいただいて植えたのだったわね」
「紙の灯篭が夜空に沢山飛ぶのは幻想的で綺麗だよ。領地の者達にも灯篭祭りをやると告知をだそう」
「毎年、夏にやればエルシードが夏の観光名所になりそうですね」
ミルシェラはアニメやゲームで紙灯篭が空に舞うのを見たことがあるので、とても嬉しそうだ。




