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107話「聖女降臨祈願」

 ついに王都の大神殿にて聖女降臨祈願の祭事が執り行われた。


 正装をしてエルシード公爵夫妻たる我々も来ている。


 白い花があちこちに飾られた神殿は綺麗で見応えはあった。


 そして厳かな雰囲気の中、巫女達が聖歌を歌ってる。


 神官達はいかにも神職って衣装だが、我々貴族はドレスコードがあり、布を身体に巻きつけました!みたいな、つまり古代ローマ風の白い衣装で並ぶことになっている。


 そして衣装は前もってアレンシアが用意してくれていたので特に問題は無かった。


 アレンシアはしごでき嫁である。



「なんで神官でもない我々も呼ばれるんだろうな」

「高位貴族の魔力を聖杯に注いで欲しいそうですから」

「ああ……そういうことか。儀式に参加してご協力くださいだけで、詳しくは書かれてなかったのに」


「貴方はろくに貴族達の茶会にも出ませんから情報に疎いのですわ」

「あはは」

「あははでは有りませんよ、外国の食品輸入関連の家門の方とばかり会食して、人選が偏ってるのですわ」



 そんで聖女降臨祈願の儀式は原作にもあったのに忘れてたな……。

貴賓席にチラリと目をやると王族は皆、揃っている。



「では、我らが国の太陽と月たる国王陛下と王妃様に魔力を注いでいただきます」


 大神官の声が響き、豪華な椅子に座っていた王が鷹揚に頷き、王妃と共に立ち上がる。

 そして赤いカーペットの敷かれた祭壇への道を二人が歩く。


 若干バージンロード感がある。


 聖歌の響く厳かな雰囲気の中、先に王が聖杯に赤い炎のような魔力を注ぎ、次に王妃が青いオーラを注いだ。


 その後王女殿下が婚約者らしき他国の王子と共に祭壇前に行き、二人が魔力を注いだが、王女の魔力はオレンジ色の温かい色だった。

 しかし、この始めての共同作業感よ……。


 そんで王女エカテリーナ様は留学中なのにこの為に呼び戻されたらしい、お勤めご苦労さまです。


 ちなみに王子二人はまだ子供なせいか、貴賓席で見学だけであった。


 俺は極力目を合わせないよう、頭を下げて挨拶だけはしてる。



「では、貴族の皆様、前の方から順番にこの杯に魔力を注ぎ入れてください」



 大神官にうながされ、続々と魔力を注いでいく貴族達。

 最後の方で俺達夫婦が聖杯に魔力を注ぐ番がきた。


 なんで我が公爵家が大とりを任せる配置なんだよ。

 王都の学園で普段寮生活をしている愛娘のミルシェラとタウンハウスで会う待ち合わせをしてるから早く終わら行きたかったのに。



「……ふぅ、終わりましたわ、次は貴方の番です」


 アレンシアが先に力を注いだので、いよいよ俺の番だ。


 えーと、この聖杯に魔力を注ぐイメージをする……と、


「「「おおっ……!!」」」



 俺の白銀の魔力オーラが聖杯に注がれるのを見たギャラリーから声が上がった。魔力の色が珍しい白系だったから、この反応のようだ。



「ここに聖杯は魔力で満たされました! 祭壇に供えさせていただきます!」


 大神官が声高らかに宣言した。

 はい、お疲れ様ー、解散、解散。


「じゃあミルシェラが待ってるはずだからタウンハウスへ行こう」

「ええ」


 俺はアレンシアの手をとり、我々はタウンハウスに向かった。



 ◆ ◆ ◆



 しばらく馬車に揺られて我々はタウンハウスに到着した。


「お父様! お母様!」



 玄関に迎えに出てくれていたのは我が愛娘。

 ミルシェラの弾けるような輝く笑顔を久しぶりに見た気がする。



「やあ、元気にしていたかな?」

「学園の方は何も問題はありませんか?」


「……たまたま王子殿下に話しかけられたり、変わった人がいましたが、それ以外は別に……だ、大丈夫だと思います」


 なんだって!?

 サロンに移動して詳しい話を聞くことにした。

 人払いもしてだ。


 ◆◆◆


 サロンにて家族三人が揃った。

 皆、豪華なソファに腰掛けている。


 お茶も既にメイドが淹れてくれたものがあり、いちごの生クリームケーキもある。


 まず、茶を1杯飲んでから、舌を潤わせる。

 そして、俺はミルシェラに先ほどの会話の続きを促した。



「それで、話しかけてきたのはどちらの王子だ?」

「第一王子殿下です」

「そうか」


 そっちなら、まだしもだな。


「何故話かけられたんだ?」

「私は一人でお弁当を食べていたのですが」

「お待ちなさい、貴方一人でって、お友達や取り巻きはいないのですか?」


話のこしを折るアレンシア。


「土日だけは特別です。実家から送られてくる大切なお弁当ですので、一人でゆっくり味わって食べるつもりだったのです」

「貴方に似てて食いしん坊になってしまったではありませんか……」


 俺のせいかよ。


「それより、第一王子から一緒に食事をしようと話しかけられたのか?」


「毒味済みの冷めた料理ばかりで食欲がわかないみたいで、お一人で来られて私に声をかけられました。食事に誘われたというより……私の魔法で転送されたばかりのほかほか弁当に目を止められ……興味をひいてしまい、凝視されたのです」


「……つまり、お弁当を殿下に分けてさしあげたの?」

「しかたなかったんです! じっとお弁当を見てくるし」

「ちなみに何のメニューの時になの?」


あ、嫌な予感がする!


「焼き鳥弁当です……」

「ああ〜〜っ!!」


これは俺のせいだ!


「それは、ちゃんと串から外して食べたんでしょうね?」


 アレンシアが問い詰める。


「せっかく料理人がせっせと串打ちしたのかと思うと、そのまま食べるのが礼儀かと思い……」


「ま、まさかかぶりついているのを見られたの!? しかも王子殿下に!?」

「はい……」


「お、俺が悪いからミルシェラは怒らないであげてくれ」

「まったく、なんで貴方は串のまま送るのです!」



 俺が避雷針だ! 俺に落ちろと願ったとおりに

 アレンシアの雷が俺に落ちたが、これでいい。



「その方がビジュアル的に美味しそうかなって!外すとただの肉野菜弁当に見えるだろうし!」


俺は一応言い訳をした。


「別に味は焼き肉野菜で似たようなものではないですか!」

「だから焼き鳥と肉野菜炒めでは見た目の印象がだいぶ違うんだよ」


「お、お二人とも落ち着いてください、今後は串から外しますので」

「まったく、レディが串にかぶりつくなんて、はしたないったら」

「はい、申し訳ありません」


「そして、話を戻すが、変わった人というのはどういうやつなんだ?」

「神学クラスの敷地に間違えて入ってしまった時に、どことなく第一王子殿下と似た感じの男の子と会いました」


 !!


「その男の子は神官服を着て、片目メカクレだったか?」


「はい、なぜか私のことを知っていて、君はもしかしてミルシェラかって私の名前を呼んだのです、ファーストネームの方を」



 間違いない……その特徴的な男の子は「異世界転生したら聖女だった件! 〜執着してくるイケメン神官様が実は王子様!?〜」の、原作漫画の正ヒーローだ!!


第一王子とは双子で不吉とか言われて神殿に預けられた片割れだから、顔が似てるのは当たり前!


 でもデビュタント前のミルシェラをなんで知っているんだ?

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― 新着の感想 ―
おぉ~、またしても新たなフラグが立ちましたね!、、さてさてどんな展開になりますやら、
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