表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/62

悪役令嬢の父に異世界憑依転生!?

悪役令嬢の父親になった元社畜の物語です。

カクヨム先行で連載しています。

 日本が令和になってから、姉に勧められて読んでいた漫画の中に憑依転生した、32歳の社畜の俺。


 つい最近まで、一応彼女はいた……寝取られたけど!


 そんな俺が5月に事故にあい、貴族令嬢漫画に出て来た悪役令嬢の父、ケーネスト・ディック・フィン・ギリングズ・エルシードに憑依転生した経緯の話をしよう。


 その夜は残業終わりにお気に入りの焼き鳥屋に行った。そしてそこには飲みにつきあわされていた後輩男子がいた。


「今日はどうしたんです? 最近仕事量もハンパないし飲み過ぎですよ、先輩」



 既に大ジョッキビール4杯に、強めの焼酎も4杯飲んで、ちゃんぽん状態の泥酔状態。

 いつもならセーブしてビール2杯までしか飲まないから、後輩の心配は当然とも言えた。



「仕事量なんてうちの会社じゃ何時もの事だろぉ? でも頑張って金を貯めてよぉ、結婚を考えていた彼女をよぉ、他の男に寝取られた……これが飲まずにいられるか!?」



 夕方にSNSでお別れしようのメッセージが届き、後輩相手にくだを巻いて絡んでしまった。

 しかし今はもう夜の10時半を過ぎ、終電前に

は帰してやらんと……。



「か、彼女を寝取られたぁ? そ、それはご愁傷さまです」

「ここはおごる、先に帰っていいぞ」

「あざーす、お疲れっした!」


 後輩はいい奴なので、心底気の毒そうな顔をしてから帰って行った。



 そんな訳で彼女を寝取られた社畜な俺、やけ酒を飲んだあげくにオーバーワークの過労のコンボで、ふらふらしつつ歩いていつの間にやら歩道橋。


 そこをふらふら歩いてたら……階段の上の方から下へと落ちた!


 そして気が付いたら、幽体離脱状態!


 眼下には病院で意識不明のまま沢山のチューブと計器に繋がれ、起きない状態となった俺の肉体が見えている。



『ど、どういうことだ!? 早く肉体に戻らないと!』



 しかし……戻れない!!

 ベッドで横たわる肉体に魂を重ねようとしても、すり抜けるのだ!


 救いを求めて俺の魂はふわふわと浮遊霊のように浮かびつつ、近所の神社へ向かった。

 


『神様、お助けください!!』


 俺は御賽銭箱の前で霊体のまま手を合わせた。


 すると、何故か俺の魂は眩い光に包まれたと思った瞬間、意識を失った。



 そして目が覚めたら豪華な屋敷の中にいて、別人の体の中に入ってしまっていた! 病院ではなく、違うベッドの上にいた。

 側には白衣を着た医者らしき男の人がいる。




「公爵様がお目覚めになった! 奇跡だ! 早く奥様にお知らせしろ!」


 ……は? 公爵? そして奥様だと?

 未婚の俺に妻が!! そしてなんと金髪に緑眼の美女が登場した! しかもマリー・アントワネットみたいに豪華なドレスを着ている!



「……誰だ?」



 何処かで見たような顔ではあった。しかし、どこだったか? そういや、なんか知らんが言葉はわかるな、日本語ではないようなんだが。

 そして今は寒くも暑くもないから、春か秋くらいの季節のようだ。多分。



「妻に向かって誰だですって!? 主治医、どういうことですか!?」

「公爵様は先ほどまで死の淵を彷徨っておられたので、記憶が混乱され、一時的に記憶喪失状態かもしれません」



 やはりさっき聞いたとおり、公爵? 俺が高位貴族に? これが流行りの憑依転生ってやつか?



「あなた! 私が分からないのですか? あなたの妻です! アレンシア! アレンシア・マレド・フィン・カセドラル・エルシードですわよ!?」

「アレンシア……エルシード?」


 何かの漫画で見た記憶が……。

 俺は壁際に立っていた執事らしき男に鏡を要求し、ひとまず現状把握の為に手鏡で自分の顔を見ることにした。


 そこに映っていたのは、慣れしたしんだ黒髪の日本人の顔ではない、ファンタジー系の銀髪イケメンの顔! 瞳の色はなんと紫色だ。



「パーパ!」



 そして、重そうな扉を開けて、見覚えのある金髪に紫の瞳の幼女が登場した!


 こ、これは「異世界転生したら聖女だった件! 〜執着してくるイケメン神官様が実は王子様!?〜」という漫画で見た悪役令嬢の幼少期の姿! 将来悪役令嬢になるとも思えないくらいに可愛かったから、覚えてる!


 名前は……ミルシェラ・マレド・フィン・ギリングス・エルシード!!


「ミ、ミルシェラ?」

「パーパ!! おっきした!」



 ヨロヨロとベッドに駆け寄る3歳くらいの健気な幼女! 守ってあげたいと急に思った! 小さき命……。



「何故に娘は覚えてるんですの?」

「ち、父の愛的なものでしょうか? あとはしばらく旦那様には安静になさる様にしてください、私はこれで失礼します」



 おっと、妻に問い詰められた主治医らしき男が逃亡した。


 と、とりあえず現在の状況を整理しよう。

 原作の記憶を掘り起こすぞ。


 悪役令嬢ミルシェラの父親は領地を守る為の魔族との戦いで致命傷と呪いを受け、死にかけていた。

 どうやら今の俺はその父親たる公爵で、公爵の体に社畜の振られ男たる自分の魂が入ってしまったって流れ……か。


 作中で語られた悪役令嬢エピソードによれば、公爵はかつては黒髪イケメンだったが、魔族との戦いで大量の魔力消費をした影響で死ぬ前の1年間は銀髪になっていた。

 そして今の俺も銀髪になってる。


 父親を心配して涙目のミルシェラが、娘が……俺の銀髪を優しく撫ででいる。

まるでいたいのいたいの飛んでゆけと言ってるみたいに……。


 なんだかとっても愛おしい……。

 これが……父性愛!? 急に父性愛に目覚めてしまった。


 例の神社の神様が哀れに思って新しい人生をくれたのか……それで何故マンガの世界かは分からんが…しかも苛酷な悪役令嬢の家族……。


 しかし異世界から来た自分の魂が悪役令嬢の父親の体に入ったことで、あそこで死ぬはずだった公爵が延命してしまったから、原作のストーリーに歪みが入ったと思うが、それは……構わないのか?


 それともこの世界は悪役令嬢救済のスピンオフか何か?


 作中の娘は第二王子の婚約者になるファザコンの悪役令嬢。

 父に似た銀髪の第二王子に惚れてしまい、婚約をした。


 しかし、第二王子は自らが王位につくため、第一王子の暗殺を計画した。


 第二王子は娘を愛するふりをして、誘惑し、自分の都合の良いように操った。

 父を早くに亡くし、父性愛に飢えていた娘は父と似た銀髪の王子にコロリと騙はれたのだ。


 いずれ王妃にしてやると娘を唆かし、娘は第一王子暗殺に手を貸したが、一人で汚名を着せられ、利用された挙句捨てられ、処刑される運命の……悲劇の悪役令嬢!!


 ちなみに家族も王族殺害の罪で没落、連座で死に至る。


 ちなみに父親は本来彼女の幼少期に死んでいたので、連座で処刑されたのは母親と祖父母となる。酷い話だ。俺は家族に迷惑をかけたくない。


 彼女を他の男に寝取られた情けなきやさぐれ男でも、そのくらいの良識は……ある。


 まず、髪を染めようか。元は黒だったのだし、と行動を起こそうとする。

 ファザコンの娘が、銀髪の第二王子に唆されないように、とりあえず黒に染めるのだ。

 そして執事に毛染め剤を要求すると、


「何故わざわざ黒く染めるんです? まさか今更若い女にもてようとしてますの?」



 妻が夫の不審な行動を見て、突っ込んでくる。



「俺はもともとは黒だったろう?」

「それがなんです?」

「黒の方が上品だし……」

「白や銀が下品だとでも?」


「いや、そういう訳ではないが元の髪の方が馴染み深いだろ?」

「別に銀髪でもいいではないですが? かつて神秘的でいいと自分で言っていたではないですか」


「しかし、なんだか厨二っぽいし、なんとなく縁起が良くないからな」


「チュウニとはなんです? わけの分からない事を言わないでくださいまし! 白や銀が縁起が悪いなら、老人はどうなるのです? 全員不吉なのですか?」


「実年齢より老けて見えて得をするのは未婚者だけだろう? 私にこれ以上貫禄が必要か? 既に公爵なのに」



 妻は未だ不審の目だ。

 しかし、白やグレーは縁起が良くないと言いはると最後には折れてくれた。


 俺の意識、魂がいつ日本の寝たきりの体に戻るか分からない。もしかしたらあの体はもう死んでるかもしれないが哀れな娘の未来を変えたい、救いたい。


 その為に、今はここで出来る限りのことをしておきたいと思う。


 ──ところで、メイドに今の季節を聞いたら、春と言われたので、俺の事故った日本の季節とそう離れていないタイミングのようだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
新作です!久々のなろうでの投稿、感謝です。さてさて、失意のアラサーがまさかの男性に憑依ですか、、それもゲーム内、、どんな展開になるのでしょうか?楽しみにしています。
「妻は忘れようとも、最愛の幼女は忘れぬ」 (`・ω・´)キリッ とかやったらビンタじゃ済まないなw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ