森で会った冒険者①
悲鳴みたいな叫びが聞こえ振り向くと、冒険者らしい四人組が慌てた様子でこちらに走って来た。
「あの四人。お前が今言った特徴と一致しないか?」
「あ~、あの四人よ、私達が探してたのは。ちょっと四バカ! どこ行って――」
「あ、おーいマル!! あと誰か分かんないけど、急いで逃げろ!!」
リーダーらしい魚人族の少年が走りながら警告すると、四人の後方から前脚に刃が生えた黒い豹の魔物が四人を追いかけていた。
「ちょっと、なんてものを連れてきてんのよ!?」
こいつ等の慌て様から強めの魔物っぽいな。
一応俺達、初心者冒険者だしどうすっか?
なんて考えてる内にあの四人は俺達の元に駆け込んで来て、黒豹はすぐそこまで迫ってきていて、俺は考えるまでもなく黒豹の顔を殴りつけると、黒豹を吹き飛ばした。
「よし」
『……』
俺は手をパンッパンッと払っていると、何故か二パーティーが俺を見て唖然としている。
「つ、強いなあんた。結構ランク高いんだな」
「いや? この間冒険者になったばかりだ」
「え? でもアサシンパンサーは二級の魔物よ。初心者冒険者じゃ普通倒せないわよ」
「二級? 何だよそれ?」
聞きなれない言葉に俺は訊ねると、魚人族の少年のパーティーの一人のドワーフの少年が説明した。
「えっとね。魔物の中で特に危険度が高い個体は、上から一級、二級、三級って三区別されているんだ。さっきのアサシンパンサーは二級に認定されていて、推奨冒険者ランクはAランクなんだ」
「へぇー。…………」
(あれ? ヤバくねこれ? そりゃあ変に思うよな。初心者冒険者が格上の魔物をぶっ飛ばしたら)
どう誤魔化せば良いか考えていると、テレパシーでアスレルの声が頭に響いた。
『何してんのよバカ。どうすんのよ、思いっきり怪しんでるわよ!』
『知るか! 俺達も追っかけられるよりはマシだろうが!』
『とにかく、これ以上怪しまれない様に早くこの場を去った方が良いね』
メイトの言う通り、早くこいつ等から離れた方が良さそうだ。
「じゃ、俺等依頼があるからこの辺で」
「え? ちょっ……」
俺達は行こうとすると、魚人族の少女のパーティメンバーのエルフの少年が呼び止めた。
「待ってください。右手怪我してますよ」
「ん? あ、本当だ」
さっき殴った時か?
するとエルフの少年が俺の右手の怪我に手をかざした。
「【ヒール】」
エルフの少年の手から光が出る。回復魔法か。
だが、俺の右手の傷は全く治らなかった。
「あれ?」
(やべっ)
俺は右手の傷に光素を集中させて傷を塞いだ。
(危なかった。光族には回復魔法が効かねぇからな)
「え? どうして今頃――」
「サンキューな、治してくれて。んじゃ」
俺達はそそくさとその場から離れた。
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「いやぁー危なかった。あのままだと怪しまれてたな」
「って、元はと言えばあんたがあのアサシンパンサーって魔物をぶっ飛ばすからでしょうが!」
「仕方ねぇだろ、やっちまったもんは!」
「まぁまぁ。とりあえず今は尾手猿の討伐に行こう。それが目的なんだし」
「そうだね。多分距離からして彼等もエドにいるかもしれないし、なるべく会わない様にして早めに次の町に行った方が良いね」
いきなり怪しまれるし、何か幸先悪い気がしてきた。
俺は頭を掻くと、前方から木の実が飛んできて俺は右手で木の実を掴み取った。
前方には、エドに着く前に見たあの尾手猿が何体もいて、その内一体が笑っていた。
「上等だエテ公。今度は逃がさねぇぞ」
俺は木の実を握りつぶすと、大剣を手に持った。
「じゃあ俺達も戦闘準備といきますか」
「そうね」
エグラル達も武器を手に取り戦闘準備を整えると、俺達は尾手猿の群れに向かった。
俺は大剣で斬りつけ、アスレルは鞭で巻き付けて叩きつけ、メイトは剣で斬り、エグラルは拳で殴り飛ばし、フォクサーは魔法銃で撃ち抜き、一人二体ずつ倒して丁度10体倒した。
「よし。ちょっとスッキリした」
「戦ってみると意外と呆気なかったな」
「特に危険度が高い魔物じゃないみたいだからね。まぁ人々に迷惑をかけるのは間違い無いけどね」
「まぁ倒し終えたし戻るか」
尾手猿を倒し終えた俺達はエドへ向かった。
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「はい。では今回の依頼で皆様の冒険者ランクがEランクに上がりました」
ギルドで依頼の報告をすると、俺達の冒険者ランクが上がった。
まだ下から二番目のEか。
まぁこんぐらいの勢いぐらいならあんまり目立たねぇかもな。
「さっきの冒険者達に会うとまた怪しまれて調査しづらそうだし、この町での調査は最低限にして早めに出よう」
「そうだな。はぁ~面倒事は避けてぇし」
「こうなったのはあんたのせいでしょ」
アスレルに指摘され、俺達はギルドの外に出ようとした。
『あ』
「「「「「ん?」」」」」
振り返るとそこには、さっきの冒険者達がいた。