ガクラとエスティー⑤
「久々だなこの感じ」
「ああ。俺もだ」
屋敷の外では、それぞれの武器を手に持っているガクラとエスティーが対峙していた。
そして屋敷のすぐ傍で、光の兄弟と冒険者達が二人の様子を見守っていた。
「あの二人の勝負を見るのは数千年ぶりね」
「エスティーがライテストを出ちゃったからね」
光の兄弟は、二人の久々の勝負に懐かしみ、少し楽しんでいた。
「確か、いっつも引き分けで終わっちゃうんだっけ?」
「そう。全部引き分けだから、そのせいですぐにあの二人喧嘩してたのよね」
「決着着けないと、二人の気が納まらないからね」
アスレル達が話をしている間に、準備を終えたガクラとエスティーが武器を構えた。
「そろそろかな? それじゃあ……試合開始!」
メイトが開始の合図を言い終えると同時に、ガクラとエスティーは地面を蹴って近づき、大剣と二本の剣を振り当てると、土埃が広範囲に広がった。
「げほっ! げほっ!」
ユール達が咳込むと、土煙の中からガクラの大剣とエスティーの二本の剣が飛び出してきて、近くの地面に突き刺さった。
土煙が晴れると、武器が手元に無くなった二人は殴り合いをしていた。
「もう武器意味なくなってるけど、良いの?」
「元からあの二人に武器は意味ねぇよ。いっつも殴り合いだし」
「まぁ光族の訓練はあんまり武器使わないしね」
二人の殴り合いは凄まじく、拳がぶつかる度に衝撃が届く。
ガクラが右拳を突き出すと、エスティーは右手で受け止め左拳をガクラの腹に向かって突き出したが、ガクラの左腕に防がれた。
二人は弾いてガクラは右足、エスティーは左足で蹴り飛ばそうと突き出すと、互いの足裏同士がぶつかった。
互いの足がぶつかったまま踏ん張ると、もう片方の足が地面から離れ二人は脚を伸ばした勢いで吹き飛ばされる。
二人は起き上がると、再び地面を蹴り殴り合いを再開した。
「……なんか、全然終わる気がしないんだけど」
「昔に比べたら長ぇな」
「あの頃より強くなってるからね。でも本当に何時終わるんだろ」
その後も二人は全く倒れる様子が無く、もう一時間以上も続き、飽き始めた者も出てきた。
「おいどうしたガクラ……ハァ……息が切れてるぞ……」
「オメェこそ膝が笑ってるぞ……ハァ……ギブアップしたらどうだ?」
「「んだとコラァ!!」」
二人の闘志に更に火が付き、勝負は長引く。
長引く勝負に見飽きてる者が居ても二人はお構いなしに続けた。
ガクラの回し蹴りをエスティーは背中を反って躱し、元の態勢に戻る反動を利用して左拳を突き出すと、ガクラも右拳を突き出した。
両者の拳はクロスカウンターの様に通り過ぎ、相手の顔に命中した。
「うっ! 何かぶつかり合う度に風圧が来る」
「それほど凄ぇ衝撃なんだろ」
「ガクラの実力は知ってたつもりだが、そのガクラとここまで渡り合うとはな。エスティーも強ぇな」
…………。
相手の顔に拳を当てたまま二人が全く動かなくなり、ユール達に戸惑いが生じた。
「なんか……二人が動かなくなったんだけど?」
「あー……多分アレは」
アスレルが微動だにしない二人の元へ歩き指で突くと、二人は地面に倒れた。
「やっぱり。二人共気失ってる!」
「じゃあまた引き分けだね」
「何時になったら決着着くんだコイツ等?」
気を失った二人を運び、皆は屋敷の中に戻った。
――――――――――――――――――――
「次こそ本当に決着着けるぞ」
「当たりめぇだ」
俺はエスティーと睨み合い、次こそ勝つ意欲を強める。
「良いもんが見れたぜ。光族同士の勝負。前から思ったが、光族って体柔らけぇよな」
「訓練に柔軟があるからね。体が硬い方より、柔らかい方が戦略の幅が広がるからって」
「成程。そう言うのもやってるんだね」
「あと、エスティーって左利きか?」
「あ? そうだが」
「やっぱりか。左手での攻撃が多かったし、左手の方が微妙に強かったからな」
ブラークが色々分析してる様に言うと、エスティーが床に落ちてる一枚のチラシを拾って見た。
「おい。これって……」
「ああ。ドラスナー王が主催する『超闘祭』って大会のチラシだ」
半月程前、リューロン王国国王のドラスナー王主催の最強の冒険者パーティーを決める大会、「超闘祭」の知らせが世界中に渡った。
ドラスナー王は祭り事が好きみたいで、よく色んな催しを行うらしい。今回もその一環だろうな。
「お前等、コレ出るのか?」
「まぁな。この屋敷と土地を買ったせいであんま金無ぇからな」
優勝賞金は五千万ゴルド。
こんな大金用意するなんて、随分太っ腹だなドラスナー王は。
「確かユール達も出るんだよな?」
「うん。でも参加条件が五人一パーティだから、ブラークとカゲキリ姐さん。ソルラとマルナの五人で参加することにしたんだ。優勝出来たら四パーティーで分けるって事で」
「ふーん。ブラークとソルラが出るのは分かるが、マルナもか?」
「この大会、パパも運営に協力してるから、宣伝の為よ」
流石大商会の娘だ。商売魂があるな。
「国王主催の大会だし、今の世界の状勢を考えると、残りのSSランクの冒険者も参加するかもね」
「SSランクか。あとどれくらいいんだ?」
「そうだね……。確かあと、三人ぐらいいた筈」
ユール達を合わせると、SSランクは合計で八人か。
確かに10人もいないって聞いたな。
SSランクも気になるが、他にはどんな冒険者が出るんだ?
楽しみだ。




