最初の依頼と最初の出会い
依頼を受けた俺達は、早速討伐対象である大牙猪がいる場所へ向かった。
「武器はあるから良いとして、服とかはこのままだと流石に心もとないな」
「もう少しお金が貯まったら装備を整えよう。それに今回の討伐対象の大牙猪は初心者でもどうにか倒せるほどの強さ。この世界の魔物の強さを知るには良いと思う」
世界によって似た魔物でも強さに違いは出るからな。
アスタラードの魔物はどのくらいなんだろうな。
「あの森に大牙猪の群れがいるみたいだよ」
「意外と近いな。そういやぁ群れってどのくらいの規模なんだ?」
「確か10体ぐらいだったかな」
「なら一人一体か。物足りねぇな」
不服そうなエグラルに俺も同意だ。
この世界の魔物の強さを知るためにも、もうちょっと多くて良い気がする。けど、ここで文句を言ってもしょうがねぇな。
俺達は森の中に入って大牙猪の群れを探した。
しばらく歩くとそれらしい魔物の群れを見つけた俺達は近くの茂みに隠れる。
「あれか?」
「間違いないでしょ。名前の通り牙が大きい猪だし」
「だよな。……けどさ、一体多くない?」
10体いるって聞いたのに、11体いる。
しかも多いその一体が他のに比べて一回りデカい。
「あの一番デカいのは、群れのボスかも知れなねぇな」
「ったく。依頼の内容ぐらいしっかり書けっての。で、どうする?」
「そりゃあ……突撃じゃあ!」
俺は茂みから飛び出すと、続けてエグラルが飛び出し、最後に皆が呆れ顔で飛び出した。
俺達に気付いた猪達が一斉に俺達の方を向いた。
猪達は鼻息を荒くすると何度も地面を蹴り、一番大きい猪以外が俺達に向かって突進してきた。
「流石猪。突進の迫力があるな」
「攻撃はシンプルだね」
俺達は引換券で手に入れた武器を構えて、突進してくる大牙猪に立ち向かった。
大牙猪の突進を躱すと、横から大剣を振り下ろし大牙猪の胴体を斬りつける。
効いてるっちゃあ効いてるが……あんま致命傷になってねぇな。
「やっぱこの武器ダメだな」
商品にもならねぇ武器じゃあやっぱり満足いかねぇや。
他の皆も不満げな表情になってる。
その後苦戦することなく大牙猪を倒すと、最後の一番大きい大牙猪が地面を蹴り突進してきた。
デカいからさっきの個体より迫力がある。
猪の突進を俺達は避けると、猪はすぐに旋回して突進してきた。
「小さいのより動きが良いな」
突進を躱し、俺は大剣を振って当てるが、体が硬いからか大剣が脆いからか弾かれた。
「げっ。この剣じゃあ無理か」
猪は俺を睨み、俺に向かって突進してきた。
「ふんっ!!」
俺は大剣を放り投げ猪の牙を掴んで受け止めると、右腕に力を込め殴り飛ばした。
猪は岩に激突し倒れた。
「素手の方が強いな」
「この程度の武器じゃあ、普通に格闘戦で戦った方が良いね」
「早くまともな武器を手に入れないと、素手で戦い続けたら変に思われるもんね」
「そうだな。まぁ、今は報告の為に町に戻ろうぜ」
俺達は町への帰路に就くために森を出ようとすると、フォクサーが何かを見つけた。
「ねぇ。あそこで戦ってる人、危なくない?」
フォクサーが指差した先を見ると、遠くてよく見えないが、確かに一人の少年が魔物と戦っている。
ん? アイツ、よく見たらギルドで俺と肩がぶつかった奴じゃないか?
そいつの周りには緑の鱗に覆われた小型の肉食恐竜の様な魔物が倒れていて、残る一体の大きな個体とそいつは対峙しているが、結構ボロボロでかなり危険な状況だな。
「うっ……」
そいつがフラつくと、魔物が飛びかかった。
俺は大剣を投げ、魔物に突き刺さると、魔物は地面に倒れた。
呆気に取られた少年の元に俺達は近寄る。
「悪かったな。余計なお世話だったか?」
「え……? いや、討伐対象は小型の方だから、逆に助かったよ」
少年は肩の力が抜けたのか、膝を着いて倒れそうになった。
「おいおい、大丈夫か?」
「う、うん。思ったより数が多かったのと、成長した個体がいたのが予定外で……」
こっちもデカい大牙猪がいて予想外だった。
コイツも同じみたいだな。
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「それはボス牙猪ですね。大牙猪が更に成長した個体です。ボス牙猪がいたという報告は受けていませんね。もしかしたら、報告時には離れた所にいていなかったのか、報告の後に現れたのかもしれません」
「そうか。とにかく、依頼はクリアって事で良いのか?」
「はい。ボス牙猪も一緒に討伐したことですので、その分の報酬を追加しておきます」
俺達は依頼の報酬を受け取った。
報酬量も増えたし、最初の依頼は成功だな。