中立の町と冒険者ギルド
検問を終えた俺達は、アスタラード最初の町に入った。
「随分デケェ町だな」
「ホントね」
「うん。それに、色んな種族がいがみ合わずに暮らしてる。やっぱり五千年前とは大分アスタラードの状況は違うみたいだね」
五千年も経てば流石に変わるよな。
……色んな種族がいがみ合わずに手を取り合う。
この光景は正しく、俺達光族が望んでいる世界の光景だな。
「まずは、どの町にも入りやすくなるように身分証を作ろう」
「そうだな。町に入る度に金なんか払ってたらあっという間に底に着く」
「んで、身分証は何処で作んだよ?」
「んなもん誰かに聞きゃあ良いだろ」
俺は近くの露店のおばちゃんに聞いてみた。
そのおばちゃんは額に一本の角が生えていた。鬼っぽいから鬼人族か?
「すんませーん。身分証を作りてぇんだけど、何処で作れるんだ?」
「身分証かい? それなら役所か冒険者ギルドで作れるよ。腕に自信があるんなら冒険者ギルドの方がオススメだよ。色々と融通が利くしねぇ」
「そうか、ありがとな」
聞き終えた俺は皆の所に戻って話した。
「となると、やっぱり冒険者の方が良いね。強い一般人だと逆に目立ちそうだし」
「それに冒険者の仕組みも他の世界と大差が無いだろうしな。金も稼げるはずだ」
この町の冒険者ギルドは町で一番大きな建物だと聞いた俺達は早速その建物に向かった。
「調べてみたけど、この町はネイトラーって名前で、この辺りはどの種族の土地でもない中立地帯なんだって」
「中立地帯か。どうりで色んな種族がいるわけだ」
「じゃあ、その種族の土地だったらその種族が多いって事?」
「偏りはあるだろうね。そういう場所だと種族仲はどうなってるんだろう?」
「まぁ今はさっさとギルドに行こうぜ」
ネイトラーの町中を歩く俺達は、町の中央付近にある冒険者ギルドの前に着いた。
「デケェ建物だな。まるで小せぇ城だな」
「どうやらネイトラーの冒険者ギルドは本部らしいよ」
「本部ならデカくて当然だな」
ウルファーがいつも通り冷静にそう言うと、俺達は冒険者ギルド本部の中に入る。
中は武装をした様々な種族の奴等で湧き溢れていた。
「凄ぇ数だな」
「本部だからじゃない?」
「とりあえず今は冒険者登録だね。多分あのカウンターで出来ると思う」
「じゃ俺が貰ってくる」
俺はカウンターへ向かい受付嬢らしい女に声を掛ける。
「冒険者になりてぇんだが」
「分かりました。では向こうのテーブルでこちらの書類をご記入下さい」
「あいよ。あと仲間の分も欲しいからあと九枚くれ」
「九枚ですか? 分かりました」
受付嬢は九枚の紙を取り出すと俺は受け取った。
「サンキュー」
俺は紙を持って皆の元へ向かうと、すれ違った白い長髪の人間の少年の肩にぶつかった。
「ああ、スマねぇ」
「うん、大丈夫」
少年はカウンターへ向かい、俺は皆の元へ戻った。
「この紙を書けってさ」
「成程。じゃあ早速書こう」
俺達は指定されたテーブルへ向かい書類を書く。
名前……性別……種族。
「……なぁ。『種族』の所どうする?」
「流石に正直に書くわけにはいかないし、『人間』で大丈夫だと思うよ」
「だよな」
『光族』って書いたら目立つし、魔王にすぐに見つかりそうだもんな。
俺達は書類を書き終えると受付嬢に渡しに行った。
「はい。それでは冒険者カードをお作り致しますのでしばらくお待ち下さい」
俺達は完成を待つために席で待つことにした。
10分ぐらいするとカードが完成したらしく俺達は受け取りに行った。
「こちらが皆様の冒険者の証である冒険者カードです。皆さんは一番下のFランクからのスタートなります」
「ランクってどれくらいあるの?」
「冒険者ランクは下からF、E、D、C、B、A、S、そして最高ランクのSSランクがございます。SSランクは現在10名にも満たない程の数しかございません」
「ここだけでも百人はいそうなのにそんなに少ないんだ」
「はい。最近の魔物の凶暴化で命を落とす冒険者もいます。それはSSランクの冒険者も例外ではございません」
魔物の凶暴化。魔王と関係ありそうだな。
それで強い冒険者もいなくなるんじゃあ、この世界だけでの解決には時間が掛かりそうだな。
「依頼はあちらのボードでお探しください。右側に行けば行く程高ランク向けの依頼となりますので、左側の依頼から始めて下さい」
「……と言っても、左側全く無ぇぞ」
「真ん中……しかも右寄りに依頼が多いね」
「はい……。最近は魔物討伐の依頼が増えたのですが、弱い魔物が格上の魔物にやられて数が減っていってしまい、初心者冒険者向けの依頼があまり入って来なくなったんです」
依頼が無くて初心者が育たない。……これも大分ヤバい状況だな。
「皆さんは武器をお持ちですか?」
「武器……」
俺達は全員目を合わせると首を横に振った。
「いや、無いな」
「では、こちらの引換券をお受け取り下さい。あちらの隣接している武器屋でこちらの引換券と武器を交換できます」
「随分太っ腹だな」
「と言いましても、交換出来るのは武器としては使えてもお店には出せないような武器ですね」
つまり、店には出せない程の完成品だが、武器としては使える物をこれで交換して武器として使えるって事か。
「これで冒険者登録は終了です。頑張って下さい」
「あいよ」
俺達は冒険者登録を終え、冒険者カードもとい身分証を手に入れた。




