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到着、アスタラード

 大団長から新たな任務を受けた俺達は、目的地であるアスタラードへ向かうためにワールドスペースを飛んでいた。


「アスタラードか。まさか俺達がそこに行くとはな」

「どの世界にも行く可能性はあるでしょ。私はちょっと楽しみ」

「楽しみって、僕達は任務で行くんだよ。浮かれてる場合じゃないよ」

「分かってるわよエンジェ。でもレイルは残念ね。別の任務で今回は別行動なんて」

「しょうがねぇよ。人手不足らしいんだからよ」


 レイルは別任務の助っ人の為、今回は俺、クレン、エンジェ、ファルク、エグラル、メイト、フォクサー、ウルファー、アスレル、ノクラーの10人で任務に向かうことになった。


「それにしても、アスタラードは光族にとっても思い入れのある世界だから、そんな世界の任務を任されるとなると、少し緊張するよ」

光闇(こうあん)戦争か。確かにあれは光族の歴史の中で一番の事件だからな。赤ん坊だったから知らねぇけど」


 今俺達が向かっているアスタラードで五千年前に起きた、今はもう絶滅していない当時光族と敵対関係にあった種族、闇族との間に起きた大戦、光闇戦争。

 アスタラードを侵略しようとやって来た闇族を食い止める為に光族は戦ったが、全く決着がつかず戦いは長引き、挙句の果てに光族はアスタラードの戦士達、闇族は魔王軍と手を組んで戦う程にまで激化した。

 長い戦いの末、光族側が勝利し闇族は全滅。魔王は異空間に封印された。

 その戦いは後に、アスタラードで光闇戦争と呼ばれるようになって、光族もそう呼ぶようになった。


「皆、アスタラードが見えたよ」


 メイトが指差した先には、赤く光る巨大な球体が浮いていた。


「あれか……。じゃあ行くぞ!」

『おおっ!!』


 俺達は突っ込むとアスタラードの中に入っていった。


――――――――――――――――――――


 アスタラードのある国の城の一室で、その国の王様が書類の山を片づけていた。

 最後の一枚を終わらせると、束の上に置いた。


「ふぅー。ようやく一段落着けそうだ」


 王様は背もたれに寄り掛かり体を伸ばすと、ノック音が聞こえて扉が開いた。


「失礼します。陛下、冒険者ギルド本部より、先月の魔物による被害報告が届きました」


 部屋に入ってきた騎士団長の言葉を聞いた王様は全身の力が抜けた。


「へ、陛下?」

「なんでもない。そこに置いてくれ」


 騎士団長が机の上に書類を置くと、王様はその書類に目を通した。


「……二級の被害が殆どだな。それにやはり、一級の被害も増えている」

「はい。昔は年に10回にも満たない程度のとても僅かな頻度でしたが、年々増えて、今では月に最低三回は起こっています」


 王様は書類を机の上に置き再び背もたれに寄り掛かると、顔を上に向けて天井を見上げる。


「……ラゴム。お前は五千年前の伝説を知っているか?」

「五千年前……光闇戦争の事ですか? 勿論存じております。子供の頃に一度は耳にしますからね」

「ああ。だが五千年も昔の出来事故、ただの伝説だったり作り話だと大人になるにつれてそう思ってしまう」

「はい。……それで、光闇戦争がどうかいたしましたか?」

「いや。光闇戦争に出てくる光族が実在してほしいなと、最近思ってしまってな。ふふっ」


 突然笑い出した王様にラゴム騎士団長は首を傾げると、ヒュルマノ王国国王、オグラース王は窓から外を眺める。


「伝説の存在に頼ってしまうとは。大分追い詰められてしまっているのかもな、魔王に」


――――――――――――――――――――


 次元の穴を抜けてアスタラードにある一つの町から少し離れた所に出た俺達は人間の姿に変わった。

 光族には本来の姿と、エネルギーを節約するための人間の姿が存在する。

 光族は『光素(こうそ)』と言う光族以外では感知出来ない光のエネルギーを糧に生きているが、ライテスト以外の世界では、光素の濃度が圧倒的に少ない為、ライテスト以外の世界ではエネルギーの消費を押さえる人間の姿で行動する。


「見た感じあまり異変は無さそうだが……」

「ワールドスペースから見た限りだと、この世界のバランスは乱れていたから異常なのは間違いないよ」

「ああ、分かってる」

「なんにせよ、まずは魔王に関する情報を集めだね」


 俺達は早速調査の為に近くの町へ向かった。


「そういやぁこの世界には色んな種族がいるって聞いたが、どんなのがいるんだ?」

「えーっと……アスタラードに住んでいる種族は、人間、エルフ、ドワーフ、獣人族、鬼人族、魚人族、小人族、竜人族の八つの種族だね」

「五千年前は仲は良くなかったって聞いたが、今はどうなってんだろうな」


 町に近づくと、町の正門には入るための列が並んでいて、俺達も列の最後に並ぶ。


「結構並んでるな」

「うわ~、私並ぶのとか嫌なんだけど」

「我慢しなよ。それにしても、本当に色んな種族がいるね」

「ああ。それにいがみ合ってるって感じもしないな」


 五千年も経てば、流石に仲の悪さは解消されたか?

 列が進み正門の手前まで来ると、町の衛兵らしい人間が歩いてきた。


「すみません。身分証の提示をお願いします」

「身分証……俺達、持ってねぇんだけど」

「誰もですか? そうなりますと、お一人五百ゴルドのお支払いを頂きますが」


 ゴルドがアスタラードの通貨か。って言うか金払わねぇといけねぇのか。


「ちょっと待ってくれ」


 俺達は少し離れて集まる。


「金ある?」

「一応、昔地球に長期滞在した時に稼いだ皆の金は持って来たよ」

「長期滞在を終えてから全く使わなかったが、ここで役に立ったな」


 昔稼いだ金を、別の世界の通貨に変えるライテストの発明品、マネーチェンジでアスタラードの金に変えると衛兵に渡した。


「10人で五千ゴルド……はい、大丈夫です」


 通れるようになった俺達は町の中に入った。

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