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獣人族領②

「ゴオォォォォォォォ!!」


 俺達の後方に下り立った赤いワイバーンは、咆哮を上げると火を吐き、俺達は散開して避ける。


「ったく。依頼完了寸前って時に。メイト、こいつは何だ?」

「これはキングワイバーン。二級の魔物だよ」

「二級かー。逃げられると思うか?」

「難しいね。相手は飛べるし」

「だよなぁー」


 ……人の気配は無い。

 見られる心配は薄いと考えて良いか?


「……しゃあねぇ。コイツ倒すか。いたら邪魔で依頼を進められねぇ」

「俺は賛成」

「ま、しょうがないわね」

「っつーことでフォクサー。銃でコイツの翼撃ち抜いてくれ」

「はいはい」


 フォクサーは魔法銃を手に持ち、キングワイバーンの翼に向けて魔力弾を撃つと、キングワイバーンは飛び上がり魔力弾を避ける。


「思ったより飛ぶスピードが速いな」


 飛び上がったキングワイバーンは、空から火球を吐く。

 俺達は降り注いでくる火球を躱し続けると、木の上に登ったフォクサーが、銃を構えて狙いを定め、放った一発の魔力弾がキングワイバーンの右翼を貫いた。

 キングワイバーンは落下すると、翼を何度も羽ばたかせ地面に落ちる寸前に留まったが、そこへ俺がキングワイバーンの目の前まで跳び、大剣の腹を顔に叩きつけて地面に落下させる。

 起き上がろうとしたキングワイバーンの顔をエグラルが殴り飛ばすと、メイトが左翼を剣で斬り落とした。

 メイトを睨んだキングワイバーンが口から炎を吐こうとすると、顎の下に潜り込んだアスレルがキングワイバーンの下顎を蹴り上げ、その勢いで塞がれた口内で炎が爆ぜて、口から黒煙が出てふらつく。

 顔を振り体勢を戻したキングワイバーンは、体を回転させ尻尾を振るう。

 迫りくる尻尾に合わせて俺は大剣を振るい、キングワイバーンの尻尾を斬り落とした。

 最後に俺が喉元に大剣を突き刺すと、そのまま首を斬り落とした。


「よし。これで邪魔者はいなくなったな。んじゃ、毛を採取しますか」


 俺は大剣を鞘に仕舞うと、今回の依頼の目的である桃色のコングの毛を採る為、見つけたコングの死体の元へ行こうとすると、フォクサーが気まずい顔で口を開いた。


「ねぇ皆。言いづらいんだけど……」

「どうした?」

「さっきのキングワイバーンの火で、コングの死体が焼けちゃってる」


 フォクサーが指差すと、その先には毛が真っ黒に焦げたさっきのコングの死体があった。


「……おい、嘘だろ」

「一本も残らず真っ黒焦げね」

「これは……また探すしかないね」


 俺は倒したキングワイバーンを睨むと、憂鬱になりながらまたコング探しを始めた。


――――――――――――――――――――


「やっと手に入れられたな」

「うん。これだけの量なら十分だと思う」


 キングワイバーンと戦ってから二日後に、ようやく桃色のコングを見つけ、サクッと倒した俺達は毛を袋一杯に毟り採って町に戻ってきた。

 本当だったらもっと早く終わるはずだったのに、あのキングワイバーンのせいで二日遅れちまった。

 ギルドに着いた俺達は、受付に行って報告をした。


「ほい。依頼のコングの毛だ」

「はい。確認しますね」


 受付嬢は袋の中を覗いて中身を確認した。


「桃色のコングの毛で間違いありません。量も問題無いので、依頼完了です」

「あいよー」

「では報酬になります。あと、ギルドマスターが皆さんをお呼びです」

「は?」


 ギルドマスターが俺達を?

 何も呼ばれるような事はしてねぇはずだが。

 まぁとにかく、呼ばれたようだしギルドマスターの部屋に行くか。


「やぁ、待ってたよ。座って」


 ギルドマスターの鹿の獣人族の女に言われるがまま、俺達は向かいのソファに座った。


「君達を呼んだのは、君達の冒険者ランクをCランクまで昇格することが決まったからなんだ」

「「「「「は?」」」」」


 Cランク? 俺達はEランクだから、次はDランクじゃねぇのか?


「どうして二つも上がったの?」

「君達だろ? 二日前に森でキングワイバーンを倒したのは」

「「「「「何のことでしょうか」」」」」

「こんなにあっさり否定されるとは。でもね、目撃者がいるんだよ。丁度森の生態調査をしていたギルドの職員が、望遠鏡で見たんだ」


 望遠鏡か。だから近くに気配を感じなかったのか。

 誤魔化せるか? これ?


「本来、Bランク以上が推奨の二級をEランクの君達が倒した。これぐらいの昇格は普通だよ。折角ならBランクまで上げても良いんだけど、ギルドの決まりでランクは一回に二つまでしか上げられないからね。だからCランクなんだ」

「まぁ、そっちの決まりは分かったが……」

「高い実力を得てから冒険者になる人はいる。多分君達はそう言う類だろうね。もし断っても、また同じような事が起きないとも限らないと思うが、どうする?」

「「「「「……」」」」」


――――――――――――――――――――


『で、結局ランクアップの話を受けたと』


 その日の夜、俺達は宿の部屋でクレン達と話していた。


「しょうがねぇだろ。今後の為に変に怪しまれない様にするには」

「そっちはどう? 何か変わった事とかあった?」

『特に無いよ。ランクの話をするなら、今はDランクだよ』

『こっちも二級と戦えざるを得ない状況は遭ったが、誰にも見られてはいない』

「そうか、分かった。んじゃあ明日な」


 通信を切ると俺達は明日の予定を話し合った。


「明日は獣人族の王都に行こうと思う」

「王都か。ま、人が多い場所なら色々と調べられるだろうしな」


 クレン達は明日、竜人族領に入るっつってたな。

 俺達の集合地は人間の王都。

 まだ距離があるが、急がず調査はしっかりやらねぇとな。

 ……魔王の居場所も分かんねぇし。

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