獣人族領①
「う……うう……うおぇっ……!」
「あのー……お客さん大丈夫ですか?」
「気にしないで。いつもの事だから」
獣人族領を目指す俺達は、あろうことか馬車で移動していた。
エルフ領の王都から馬車に乗って出発した途端、俺は乗り物酔いに襲われた。この乗り物の独特の揺れに弱いんだよな俺。
俺はあれ程歩いて行こうっつったのに、コイツ等全然俺の話聞いてくれ無ぇ。
「だから言ってんじゃない。アンタだけ歩いて行けばいいって」
「お前等は馬車に乗って俺だけ歩いてるって、なんか寂しいじゃん」
俺はこう見えて寂しがりやだからな。
「まぁ二日で町に着くらしいし、それまでの辛抱だよ」
「二日かぁ~……」
……今からでも歩こうかな?
でもやっぱり俺だけ歩くのはちょっと寂しい。
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「ご利用ありがとうございました」
ようやく町に着いた俺達は馬車から降りた。
やっとこれで酔いから解放される。
「じゃあ宿を探して、冒険者ギルドに行こっか」
「なんか町に着いたら定番って流れになって無いか? これ?」
「分かり易くて良いじゃない」
アスレルが言う分かり易い流れ通りに、宿に行って部屋を取ると冒険者ギルドに向かった。
改めて見ると、やっぱり色んな獣人がいるな。
犬に猫、狐や虎。狼に兎。
ギルドに着いた俺達は貼り出されている依頼を見た。……けど。
「……やっぱりここも依頼があんまり無いね。初心者向けの」
これもいつも通りになったな。
まだ俺達Eランク出しな。そろそろDランクに上がりてぇな。
「これは? 僕達でも受けられそうだよ」
フォクサーが一枚の依頼を見つけ、俺達はその依頼に目を向けた。
『桃色のコングの毛の入手』
「桃色のコング? 何だそりゃ?」
「コングは名前の通りゴリラの魔物だね。コングの毛の色は個体によって違うみたいで、その中で桃色の毛のコングを探せば良いんだよ」
「成程。見つけて毛を毟り取れば良いって事か。じゃあこれにするか」
俺達はその依頼にし、早速受付に持っていった。
――――――――――――――――――――
町の西にある森を訪れた俺達は、目標の桃色のコングを探した。
「こんな緑だらけの森の中でピンクは目立ちそうだな」
「そうね。緑色の毛だったら逆に見つけづらそうだったけど」
「コングは木登りが苦手みたいだから、木の上にいる事はまず無いね」
「ゴリラなのに木登り苦手なのか。ま。猿も木から落ちるって事だな」
コングを探してしばらく探索していると、前方に一匹のゴリラがいた。
「あれコングか?」
「うん。でも毛の色が違うから探してるコングじゃないね」
俺達が見つけたコングの毛は赤。
赤も森の中では目立つが、俺達が探してるのはもっと派手そうなピンクだ。
見つけたコングを放って置き、目標のコングを探した。
「にしても何でピンクのコングなんだ? レアなのか?」
「依頼分に書いてあったけど、どうやらアクセサリーの材料に必要みたいだよ。桃色の毛をした魔物って珍しいから」
「確かに。そんな毛色の生き物なんて滅多にいねぇな」
ピンクの毛を使ったアクセサリーか。
女には人気が出そうだな。
「殆どの生き物の体は保護色で自然に近い色をしてるからね。自然界にピンクなんて全くないもんね」
「そんな見つかりやすそうな色をしてるから、やっぱり外敵に狙われやすいんじゃないかな?」
「あり得るな。だから数が少ねぇかもな」
だとしたら、見つけるのに時間掛かりそうだ。
その後も日が沈むまで探したが、結局見つけられず、俺達は魔物が入って来られないような洞穴の中で一晩過ごした。
翌朝、目を覚ました俺達はコング探しを再開した。
「探すにしろ、やっぱ手がかり無しだと面倒だな」
「コングは果物が主食だから、果物が生ってる木を探してみれば良いと思う」
「その果物がある木が何処なのか分から――」
「あったよ」
フォクサーがそう一言言って指差した先を見ると、赤い実が生っている木が生えていた。
その木の下に行ってみるが、辺りにコングはいなかった。
「いねぇな」
「うん。でもこれを見て」
メイトが地面から拾った物を見せると、それはピンク色の毛だった。
「ピンクの毛じゃねぇか」
「もしかしたら、まだ近くにいるかも」
「……もうこれギルドに出せば良くね?」
「いや、少なすぎるよ。アクセサリーの材料なら、もっと沢山必要だと思うよ。だからコングを探そう」
「はぁ~」
俺はため息を吐くと、再び森の中を進んだ。
何時間も森の中を歩いて流石に気が滅入って来ると、遂にターゲットを見つけた。
「いたぞ! ピンクのコング!」
「声下げろよガクラ。逃げられるかも知れねぇだろ」
「悪ぃ」
茂みに隠れて様子を見てると、コングはずっと寝そべったままで動かない。
「動かねぇな。寝てんのか?」
「それにしてはピクリとも動かなさすぎるよ。……もしかして」
メイトが茂みから出てコングに近づくと、俺達も茂みから出る。
「……やっぱり。このコング死んでる」
「マジで?」
俺達も近づいて見てみると、確かにこのコング息をしてねぇ。
「まぁ、今回は討伐じゃ無くてコイツの毛を毟り取る事だから別に問題無ぇだろ」
「そうね」
俺はコングの死体から毛を毟り取った。
その直後、俺達の後方に空から何かが下り立った。
振り向くと、そこには赤い鱗に覆われたワイバーンがいた。




