エルフ領②
エルフ領に入った俺達は、最初の町に着いた。
「流石、エルフの町だけあって建物は木製だな」
「そうね。で、まずどうするの?」
「まずは宿で部屋を取って、次に冒険者ギルドに行ってみよう。そこで少し情報を集めよう」
やる事も決まり、俺達は早速宿に向かって部屋を取った。
次に冒険者ギルドに着くと、中に入り依頼を見てみた。
「ん~……ここも高ランク向けの依頼ばっかだな」
「依頼が沢山来ると思われるネイトラーはともかく、エドでも高ランクの依頼多かった。多分、他の町でも同じ感じだと思う」
「おいおい、どうする? 今の俺等のランクでこんな依頼クリアしたら間違いなく変だよな」
「うん。間違いなく変に思われるね」
「やっぱり、ランクに見合った依頼を受けるべきなんでしょうけど……全く無いわね」
依頼ボードを見渡しても、Eランクの俺達が受けても問題無さそうな依頼が全く無ぇ。
討伐系の依頼ばかりなのを見ると、やっぱ弱い魔物は格上の魔物にやられてるって考えた方がいいな。
「どうする? 諦めて次の町行くか?」
「流石に二回連続で町をすぐ出る訳にはいかないよ」
「そうよね。何か一つぐらいは受けましょ」
俺達は依頼ボードを見渡し、ランク相当の依頼を探すと、蜘蛛の写真が貼られた依頼が目に入った。
「何だこれ? 薔薇蜘蛛?」
俺がその依頼を見ていると、メイト達がその依頼を覗き込み、依頼に書かれている薔薇蜘蛛の特徴を読み上げた。
薔薇蜘蛛は薔薇の形をした腹部が特徴で、薔薇に擬態し、近づいてきた獲物を麻痺毒のある綿毛を飛ばして動けなくして仕留める。
「危険度はそんなに高くねぇみたいだが……推奨ランクが『D』って書いてあるな」
「じゃあ今の俺達じゃあ受けられねぇな」
今の俺達は全員ランクはE。興味本位で見てみたが、今の俺達じゃあ受けられねぇな。
「多分受けられると思うよ」
「は? 何でだ?」
「いや、冒険者登録した時にギルドの職員が言ってたじゃん」
「何か言ってたか?」
俺がそう訊ねると、メイトが呆れ顔でため息を吐いた。
「パーティーに推奨ランクが二人以上。もしくは一つ下のランク四人以上なら、推奨ランクが一つ上の依頼を受けられるって」
「あ~言ってた……様な気がする」
「聞いてなかったわね、これは。ま、どうせガクラの事だから聞いてなかったとは思ったけど」
「なんだと? 俺だって話を聞くとはあるだろ」
「先輩達の話はね。それ以外は半分聞いてるって感じじゃない」
「あぁ?」
「で、結局この依頼は受けるの? 受けないの?」
「ん? ああ、受けるぞ」
その依頼を持って受付に行くと、依頼を受理出来て、俺達は早速薔薇蜘蛛がいる森に向かった。
――――――――――――――――――――
「相手が蜘蛛なのはこちらとしても助かるね」
「何でだ?」
「蜘蛛は虫じゃ無いから」
「あ、確かに」
確かに危なかったな。
蜘蛛が虫だったら、虫嫌いのアスレルが辺りを吹っ飛ばしちまうからな。
となると、虫の魔物の討伐依頼は受けない。あと、虫の魔物には遭遇しない事が重要だな。
「で、薔薇蜘蛛は何処にいるんだ?」
「図鑑によると、薔薇蜘蛛は水辺を好むらしいから、まずは水辺を探そう」
森に入った俺達は、まずは薔薇蜘蛛が好む水辺を探す事にした……が。
「おい。結構水があるじゃねぇか」
この森、結構広い範囲で地面に水が溜まってる。
こんなに水があるんじゃあ、いつどこから現れるかも知んねぇな。
「それにしても何だろう、この森の水の色は。何でこんなにカラフルなんだ?」
メイトはしゃがみ込んで水を眺める。
確かに派手なんだよな、この森の水。
赤かったり青かったり、他にも緑や黄色なんてある。
「においは……辛いような、甘いような……。毒の可能性もあるんだよね……」
「おーいメイト。今は水より蜘蛛探しだろ」
「そうなんだけど……気になって」
気になる気持ちも分からなくはないが、今は依頼を終わらせるの優先だ。
森の中を進んで薔薇蜘蛛を探すが、全く見つからねぇ。
こんなに水があるのに。水辺を好むんじゃなかったのか?
「ねぇ。何処にいるのよ、薔薇蜘蛛は。水辺にいるんじゃなかったの?」
「僕に聞かないでよ。水辺を好むってだけで、水辺にいるって訳じゃないよ」
「薔薇に擬態するっつーんだし、薔薇でも探すか?」
エグラルがそう言うと、フォクサーが何かを見つけて拾う。
「何だろうこれ? 毛かな?」
フォクサーが拾ったのは、丸っこい赤い毛だ。
その毛を眺めた後、顔を近づけてにおいを嗅ぐと、フォクサーは嫌な顔をして遠ざける。
「なんか、鼻の奥がピリッと痺れるようなにおいがする」
フォクサーが鼻を摘まんで言うと、近くの茂みから物音が聞こえ、俺達は振り向くと、そこから銀髪のエルフの青年が出てきた。
「おや? 冒険者か?」
「あ、ああ。お前は?」
「僕は冒険者ギルドの職員だよ。ここには魔物の調査に来たんだ」
「調査?」
「そう。魔王が現れてから、各地の魔物の動きが活発になってきたからね」
話を聞くと、どうやら魔王が現れる前と後の魔物の変化を調べてるらしい。
あんなに討伐依頼があったらそりゃあ調べるよな。
「それで、君達はここに何をしに?」
「僕達は薔薇蜘蛛の討伐に来ていて、今探してる途中なんだ」
「薔薇蜘蛛か……。あっ。それは薔薇蜘蛛の綿毛だね」
青年がフォクサーが見つけた毛を指差す。
「これ薔薇蜘蛛のなんだ」
「うん。ちょっと見せて」
フォクサーは綿毛を青年に渡すと、綿毛を手で扇ぐ様に嗅いだ後ジッと眺める。
「においの強さ、色の度合いから見て……この綿毛はさっき落ちた物のようだね。となると……」
今度は辺りを見渡すとどこかを指差した。
「この先に水が流れる洞穴ある。そこでよく薔薇蜘蛛が目撃されるよ」
「そうか。サンキューな」
俺達は教えてもらったその洞穴を目指した。
――――――――――――――――――――
ガクラ達が向かった後、青年は調査の為再び森の中を歩こうとすると、ふと空を見上げた。
空には分厚い雲が出始め、太陽を隠した。
「これは……一雨来そうだね。しかも大雨が。……そう言えば、彼等は知ってるのかな? この森の主を」




