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エルフ領①

『はぁ!? バレた!?』


 エドを出てその日の夜、魔物が入れない様に洞穴の入り口を岩で塞ぎ野宿の準備をし、クレン達の方に連絡を入れた。


「いや、バレてはいねぇ。怪しまれそうになっただけだ」

「まぁガクラのせいなんだけどね」

「いつまで引っ張ってんだよ。だから変に探り入れられる前に町を出たんだろ」

『気を付けてよ。僕達の今の目的は調査にしても、正体がバレたら調査しづらくなりそうだし』

「分かってるって。光族のやり方ぐらいちゃんと覚えてる」

「そこまでガクラはバカじゃ無いからね。それで、僕達は明日にはエルフ領に入るけどそっちは?」

『俺達は昨日、竜人族領に入った。今は町の宿で一泊している』

「こっちは野宿中だ。ヤダよ外は」


 野宿は前の長期滞在した世界で慣れたと思ったが、やっぱり寝るならベッドが良い。


『とにかくお互い、バレない様に気を付けよう。……特にガクラ』

「おい。今ボソッて何か言わなかったか?」

『それじゃあまた』

「うん。また」

「おーい、無視か?」


 通信が切れ、メイト達は寝る準備を始めた。

 俺の扱い皆酷くなってないか? 気のせい?


――――――――――――――――――――


 翌朝、俺達は洞穴から出てエルフ領に向かって歩いた。


「もうすぐエルフ領に入るよ」

「つっても、どこからなんだ? 境目が分からん」

「関所みたいなのは無いからね。でもエルフ領は森が多いみたいだから、すぐ分かると思うよ」


 そう言うが、森が多いってだけで、すぐに分かるわけが……。

 ……なんて思ってたら、さっきまで原っぱだったのに、急に木が増えてきて、気付いたら森の中に俺達はいた。


「ほらね。あっという間に森の中だよ」

「いや一気に増えすぎ!」

「エルフは自然を大切にするのはどの世界も同じみたいだね」


 フォクサーは周りの木々を見渡しながら言う。

 まぁ確かに、エルフが住んでるとこって、森ばっかりだもんな。


「夕方頃には町に着くはず。そこで一泊しよう」

「賛成。やっぱり地面だと寝づらいわ」


 アスレルは腰を押さえる。

 当たりめぇだろ。あんな凸凹した地面でよく寝られるか。

 森の中を進み川に差し掛かると、上流側が騒がしく俺達は目を向けると、それぞれ別種の二頭の熊が争っていた。

 一頭は腕に甲殻が付いた熊。もう一頭は体毛が濃い大きめの熊だ。


「あれは、甲殻熊と剛毛熊だね。剛毛熊の方は三級に認定されてるね」


 メイトは以前購入した魔物図鑑で二頭の熊を調べた。


「三級……前に俺がぶっ飛ばしたアサシンパンサーより低いが、倒して大丈夫か?」

「甲殻熊の方は大丈夫だけど、剛毛熊の様な三級の魔物の推奨ランクはDだから、まだ一応止めた方が良いと思う」


 Dか。俺達は今Eランク。

 倒して大丈夫かどうかと言われると微妙だな。


「近くに魚の山がある。多分餌の取り合いだね」

「熊だからな。熊と言ったら魚だからな」

「俺達には気付いて無さそうだし、このまま素通りしようぜ」


 俺達は二頭が争っている隙に先に進んだ。

 すると、剛毛熊が甲殻熊の首に噛みつくと、振り回してあろうことか俺達の方へ向かって投げ飛ばした。


「うおっ!?」


 俺達は投げつけられてきた甲殻熊を避けると、甲殻熊は岩に激突し、そのままバタッと倒れた。

 振り向くと、当然俺達に気付いた剛毛熊は唸って咆哮を上げると、俺達に襲い掛かった。


「ちょっと俺が行って良いか?」

「ん? じゃあ頼んだ」


 エグラルが前に出ると、剛毛熊は後ろ脚で立ち上がり爪を振り下ろそうとすると、エグラルの正拳突きが剛毛熊の腹に命中し、剛毛熊は倒れた。


「三級はこんぐらいか。案外大したことねぇな」

「まぁ、二級でもガクラが一撃で倒しちゃったからね」

「なんか一級ってのも大したこと無く感じちまうな」

「多分それは無いと思う。一級は下手したら国の軍隊が出動する程だって聞いたから、魔物の中では別格なんだと思う」

「国の軍隊が出るって、結構な大事だと思うよ」


 それを聞くと、大したこと無いって思えなくなるな。

 その一級とやらには気を付けとくか。

 ようやく森を抜けると、遠目に町らしきものが見えて俺達は向かった。

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