新たな任務
無数の巨大な球体が漂う無限に広がる空間。その球体一つ一つが世界だった。
その空間、『ワールドスペース』を飛ぶ一隻の巨大な船の船内から爆発が起きて黒煙が立ち昇る。
「クソッ! 撃て! 撃てぇぇ!!」
防護服を着た色んな姿をした男達が手に持った銃を撃ち続けると、一人の男が銃弾の雨を突き進み防護服の男一人を殴り飛ばすと、別の男を蹴り飛ばし倒していく。
「その程度の銃で俺を倒せると思ってんじゃねぇぞ」
頭に二本の角に左目に傷がある青い目。赤と青の体をした男は掌をパンッパンッと払うと、遠くから防護服を着た別の男達が駆け寄ってきて銃を構えると、光の矢が飛んできて銃を貫き爆発した。
「ガクラ。捕らわれていた奴隷達は全員救出したって」
「そっか。んじゃあ、後はこのアホ共の拘束だけだな」
その後、船の船員を全員拘束すると、仲間達と共に船を破壊し、船は粉々に砕け散った。
「闇商船の破壊完了。後はコイツ等をパラレルプリズンに送ればいいな」
「うん。それと、捕まってた人達をイムに送らないと」
「それで任務完了だな」
ガクラ達は事後処理を済ませると、自分達の世界へと向かった。
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大小様々な浮島が浮かぶ世界、ライテスト。そこはガクラ達、光族が住む世界。
任務を終えたガクラ達は所属している組織、異世界調査団の本部の中に入り、奥にある指令室に入った。
「ゾフィア団長。闇商船の破壊。商人と従業員の捕縛。それと奴隷達の解放を完了しました」
「ご苦労だったな、光の兄弟」
赤と白の体に、胸には幾つもの金色の斑点があり、六角形の紋様がある赤いマントを羽織った異世界調査団団長ゾフィアが労いの言葉を贈ると、ガクラ達光の兄弟は頷いた。
「次の任務があるまで待機していてくれ」
『はい』
ガクラ達は返事をすると指令室を後にした。
「大分活躍してきているな、光の兄弟は」
指令室の奥から歩いてきたのは、頭に大きな二本の角を生やし赤いマントを羽織っている異世界調査団大団長のケンドだった。
「大団長。ええ、そうですね。個々としての実力も勿論ですが、何より彼等の一番の強みはチームワークです」
「『あの事件』が起きてから心配はしていたが、立ち直れて良かった」
「そうですね」
ケンドとゾフィアが心配そうに言うと、首に赤いマフラーを巻いた赤い体の光族、ハンゾウが指令室に入ってきた。
「ケンド、ゾフィア。アスタラードに滞在しているグリーフから連絡が来た」
「グリーフさんから?」
「……」
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「てりゃぁぁぁ!!」
ライテストの大修練場で、一人の光族の少女がガクラに向かって手刀を振り下ろすと、ガクラは右腕で防御し、背後から光族の少年が蹴りを放つと、ガクラは右足を後ろに伸ばして防ぎ二人を弾き飛ばした。
「大分力が付いてきたな。歓心歓心」
「むぅ~。そんな余裕そうに言われても実感が無いよぉ」
「父さんだって今も強くなってるだろ。実力差が埋まってる感じがしねぇよ」
「自分の子に負けたら父親として立つ瀬が無ぇだろうが」
俺は息子のガネンと双子の妹のクラカを相手に模擬戦を行っていた。
二対一は結構俺の特訓にもなるからよくやっている。
近くでも光の兄弟の一人、エグラルが自分の娘と模擬戦してるしな。
「三人共頑張ってるわね」
「ああ、クカナ」
「「母さん」」
妻のクカナを見かけると、模擬戦を一旦止めて俺達はクカナの元に集まる。
「わざわざ見に来たのか?」
「ええ。私何所にも所属して無いから暇なんだもん」
「まぁ母さん戦えないしな」
光族は一応人間より運動神経も体力もあるが、戦闘訓練とかしなければ普通の人間と大差無いからな。
「あら? 親子勢ぞろい?」
そう言って俺達の元に来たのは光の兄弟の長女・アスレルだ。
「何だよアスレル。親子が一緒にいちゃ駄目か?」
「別にそうとは言ってないわよ。そんな事より、大団長から光の兄弟全員に召集が掛かったわ」
「マジか。なら急がねぇと。エグラル! 大団長から召集だ!」
「おう、分かった!」
エグラルは娘との模擬戦を終えると、大修練場にいる他の光の兄弟のメンバーを集めて調査団本部に向かった。
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「大団長。光の兄弟来ました」
「ああ。急な呼び出しによく集まってくれた」
「当然じゃないですか」
「それで、召集の目的は?」
光の兄弟六男・メイトが訊ねると、ケンド大団長が答えた。
「今回お前達を呼んだのは、ある世界の調査だ」
「その世界とは?」
「……五千年前、闇族と大戦を繰り広げた世界、アスタラードだ」
その世界の名を聞いた俺達は驚く。
五千年前、光族と敵対関係にあった種族、闇族と大きな戦いが起こり、その舞台となった世界だ。
当時俺達は物心付いてない赤ん坊だったから全部聞いた話だけどな。
「そのアスタラードで何か起きたんですか?」
「現在アスタラードでは、どうやら魔王によってバランスが崩れ始めているらしい」
「魔王……。でも確か、アスタラードの魔王は五千年前に……」
「ああ。アスタラードの戦士によって肉体は滅ぼされ、魂は光族によって異空間の奥深くに封印された」
「その魔王が復活したって事ですか?」
「恐らくな。お前達にはアスタラードを調査し、問題をアスタラードの民達で解決が可能かどうか判断してもらう。もし解決不可能と判断したら……分かるな?」
「はい」
ケンド大団長が頷くと、俺達は準備をする為に指令室を後にした。
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「ケンド。おんしは今回の事態をどう思う?」
光族、リュウバの言葉に、ケンドはゆっくり両腕を組む。
「復活があまりに早すぎる。それに規模も五千年前とは比べ物にならない。他の世界から何か関与していると見て間違いないだろう」
「グリーフもそう言っていた。だがまだ百パーセントとは言い切れない。関与していれば我々の出番だが……」
「この事態は、光の兄弟に任せよう。彼等ならやってくれる」
ケンドの判断にリュウバとハンゾウは頷く。
「一応聞いてもえいかな。どいて今回の件を彼等に任したがじゃ?」
「直感……だろうか。彼等はあの世界に行くべきなのではないかと何故か思った。あるいは運命か」
「運命か。いつの間にロマンチストになったんだ?」
「ふふっ。だが。彼等に任せるべきだ……そう頭の中で過った」