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子供たちには名前がなかった、仕方がないので家が命名することにした。

左からA、B、C、D、Eと名付けたが、かなり不評だった。

なぜだ。

人間の命名方式と違い、実に理にかなったやり方だと思うのだが。


「せめてもうちょっと捻れクズ」

――ならば、アルファと。

「んん? まあ、いいのか……?」


どうやら受け入れられたようだ。

残りも同様に、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロンとした。


ベータは「まあ、所詮、名前など記号ですし」と察したように言った。この子はなぜか家の後をよく付いてくる。

ガンマは「可愛くないぃ!」と不満たらたらだった。別の名を提案したが、なぜか拒否された。

デルタは「名前、怖い、名前、怖いぃ……」と恐怖した。この子が怖がらない対象は非常に少ない。

イプシロンは「うわ、みんなの名前、短すぎない? それ本当に名前? ねえねえどうなのそれ?」と煽った。いつものことだった。


ともあれ、あとは座学をし、戦闘訓練を行う。

食事はバランスを考えた、完全栄養食品を提供すれば事足りる――

と思っていたが、なぜかこの件だけは全面的なストライキにあった。


「クソみたいに贅沢なこと言ってるのはわかってる、わかってるんだが、これをずっとは最低最悪だ、そこらの動物狩って食った方が遥かにマシだろうがよぉ!」


食べやすいようにペースト状にしたものだが、たしかに味は考慮していなかった。

いくらかバージョンが必要だろうか。


「普通に、料理して、芋でも肉でも食わせてくれって、そこまでダメなことか、なあ! なんでいちいち全部粉々にしてんだよ!」

――普通……

「アルファ、ダメだ。この家に最も欠けているのは常識です」

――そうか、人間はいつまでも離乳食では、ダメだったのか。

「赤ちゃん扱いされてたの、あたしたち!?」

――その辺は、人間側にも問題がある。家にもわかりやすいよう形態変化をしてはくれないか?

「やだあ! 腕とか増やしたくないぃ!」

――そんなワガママを言うべきじゃない、きっと探索にも便利だ。

「……ドン引きなんですけど……」


人間とは難しいと、切に思う。


――いや、これもそれもあの家主が出ていったことが原因であり、家は悪くない。

――どうして元ダンジョンだけに育成をさせて、一人で逃亡したのか。


そう言うと、なぜか全員が微妙な顔をした。


「あー、そのな?」


口を開けば暴言だけしか飛び出さないことで有名なアルファが、なぜか言い淀みながら述べた。


「無理もないとは、思う。仕方なかったんじゃないか、たぶんだけどよ」

「あの高齢では、しかも変化の兆候も……」

「あ、あたしは可愛かったと、思うし!」

「怖いけど、怖くない……」

「あはは、あんな風にくたばもがっ!?」


イプシロンの口を全員が塞いでいた。

いろいろと問題はあるが、彼らの仲だけは良いようだ。


多少なりとも問題はあったが、一年も経つ頃には上手く回った。

比較対象がないので不明だが、それなりの強さを得ることはできたと思う。

今はオークを一対一で倒せる程度だが、集落を単独で撃破できる程度の力はつけて欲しい。


「要求レベル高すぎだろ! 俺等をどうするつもりだよ!」

――む? 狩猟を行う動物は、神話レベルの力を得たいと誰もが願うものなのでは?

「こいつら守りたいくらいは思うけどよ、神様にとやらにまではなりたくねえよ……」


「僕は、すべてを知りたいです。別にすべてを倒したくはないです」

――ああ、なるほど、記憶領域の拡張を……

「そういう話でもないです」


「最強に可愛く! 誰よりも美人に!」

――かわ、いい……?

「うん、ごめんね、家にはちょっと難しかったね」


「怖いから、怖いのぜんぶ、壊したい」

――おお!

「でも、わたしが怖いのになるも、怖い」

――おお……?


「なんかさー、みんな真面目じゃない? こーんなわけわかんないとこに連れて来られて勝手されて、その上、変なものにならされんの? ちょっと理解できないんですけど?」

――うん、家も理解できない。

「……そこで同意されんの、一番困るんだけど」

――わからないから、教えて欲しいのだ。


人間とは、一体なにか。


それは、あるいは家から初めて発生した「願い」だった。

あまりに遠く、あまりに違う。

わからないからこそ、知りたいと願った。

別に、今のこの暮らしも、家はそれほど悪いとは思っていないのだから。


代わりに、人間を家は守ろう。

この願いを達成するためにも、それは必要なのだから。


そのような所感を述べたところ、

彼らは天を仰いだり、肩をすくめたり、含み笑いをしたり、ぽかんとしたり、目を見開いたりした。

ただ、最後に顔を合わせてうなずき合っていた。


上手く言語化ができない。

だが、この時、ようやく何かが前進したと、そう思えた。

それはまるで人間の成長のようだった、明確でわかりやすい違いがどこにもない、進化による形態の変化など何もない。ただ、いつの間にか明らかに異なっている。


気づけば、見える景色が変わっていた。



  ◇ ◇ ◇



四年ほど時間が経った。

順調に彼らは成長した。

だがそれは、絶対の確証ではなかった。

家はいつしか忘れていたのだ、彼らは、人間だったことを。家は、家でしかないことを。



  ◇ ◇ ◇



「家、家ぇ!」

「ごめん、僕が、僕がミスったばっかりに!」

「……」

「へ、へへへ、別に――」

「なんでよ、なんでよ! なんでっ! ああ、もう喋らないで!」


――あ。

――え……?


いつもみたいに、訓練に行って、実戦経験のために、向かって……

なにも変わらないはず、なのに、なんで出力結果が違う……?


「家、家、頼む、お願いだ!」


アルファが、叫んでいた。

心からの叫びだった。


「デルタを、助けてくれッ!」


ひと目見てわかる。

致命傷だった。


全力を出す必要があった。

そう、そうだ、家は記憶し変移をさせるものだ、も、元のす、姿形は憶えている、問題ない。あとは、t,ただ、変更させれば――


……家の冷静な部分が、阿呆のように単純な事実を指摘した。


そのためのエネルギーが、燃料が足りないと。


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