表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/107

52

閃光、轟音。

天井からはパラパラと石の欠片が降り注ぐ。


撃ち終わった体勢のまま、ボクは思わず膝をついた。

この先の生涯、二度とありえないほどの力を放出した。瞬間的に身体に無理をさせすぎた。


放った力は円形闘技場の壁面を粉砕し、ダンジョンの壁を露わにしていた。

破壊の中央には、ヴィガーラの痕跡だけが残る。

大の字に張り付けられた消し炭だ。


相手は、悪魔型のボスだ。

これでも倒し切れたとは言い切れない。

止めを刺すべく膝に力を入れる。


見れば闘技場の中央では、黒い影法師の何人かが徐々にその姿を消し、人間の姿を外気に晒そうとしていた。

やはり操られていたようだ。

ガラスケース内の人たちもきっと元に戻る。


初撃の奇襲で決着。ボクらしいやり方で、この最悪を終わらせた。

まだ完全決着とはいかないが、ここからの巻き返しなんて出来ないし、絶対させない。


影法師の一人がーー前騎士団団長が、頭部にまとわりつく影を抑え込んでいた男が、無念を滲ませながら叫んだ。


「逃げろッ!」


え、と思う間もなかった。

空気が変わった。

音もなくただ見守っていたものが激怒した。


怒り狂い、熱を帯び、糾弾する。

してはならぬことをした、やってはならぬことを行った、許しがたい罪人がここにいる――


全方向からボクへの異議と誹議を溢れさせる。

見えぬ怒りが荒れ狂っていた。


覚えがあった。


「ダンジョン制限の、違反……?!」


憤怒しているのは、ダンジョンそのものだ。


「カッカッカッカッ――!」


欠片も残さず消し去った痕跡、その中央から逆巻くように形貌が現れる。

元のようなスーツ、元のような帽子、手袋、靴、そして巨大な口。

何事も起きなかったかのように、出現する。


「ダメだろぉ?」


ヴィガーラだ。

帽子をパンと叩き、口をあからさまに馬鹿にする形に歪め。


「ここはソロダンジョンだあ、何人もつれて挑戦しちゃいけない、本当に悪い子だァ!」


ダンジョン違反によって起きることは、モンスターの強化と――

ボスモンスターの、即時復活だ。


それが、成された。

ソロダンジョン内に二人以上の人間がいることで。


「お前が、お前が開放しただけだろうがッ!」

「さて、知らんねえ、なんのことだ? クレームはダンジョンに向けてどうぞ?」


この悪魔の討伐が、不可能になった。



  ◇ ◇ ◇



闘技場中心の何人かが、人の姿を取り戻し、周囲の影法師と戦う。

誰もが心底から悔しそうな表情をした。

慚愧に堪えないそれは、彼ら自身こそが「討伐不可能」の礎になったからだ。


「お前は、『生きたまま』収集していたのか」

「当たり前だよなあ? 集めたものを最適な形で、劣化させずに保存するのはさあ」


コレクションを開放された瞬間、「ダンジョン内に二人以上いる」ことにされた。

生きたまま保存され、生きたまま開放された。

とんだ自作自演の詐欺だが、ダンジョンの判定は融通が効かない。「今ダンジョン内に二人以上の人間がいる」としか判断しない。


「さあて? どうやらバフをかけたみたいだが、お前のそれはどれだけ持つ? おお、好きなだけ俺を倒していいぞ、何回俺を滅ぼしても構わない。カッカッカ! 1か月間それを続けられるのなら見逃してやってもいい! ここには水も食い物も無いがなあ!」


きっとここに来るまでの無意味な距離の長さもそのためだ。

一本道で、追跡しやすいように作られている。

休む場所も、隠れる場所もここにはない。


「趣味が悪い――ッ!」

「おいおい悪魔に趣味の良さを求めるなんて正気か? カカカっ!」


浮かぶ手のひらが開き、そこから黒い閃光が放たれた。



  ◇ ◇ ◇



戦いは、絶望的だった。

能力では勝っている。

自力ではともかく、バフが乗っている状態であれば打倒できる。

このボス自身は、それほど強くはない。


「死ね!」

「やーらーれーるぅー!」


だが、どれだけ倒しても、それこそ芥子粒残さないほど消滅させても、ダンジョンそのものが、ボスを復活させる。

何事もなかったかのように、また現れる。


おどけて唇を突き出し、手を広げる。


「ナアナア、もう諦めてギブアップしねえ?」

「うるさい」

「悪いようにはしないヨ、ホントダヨ!」


甲高い声で気色の悪いことまで言い出す。

完全に調子に乗っていた。


「さあ、お前も俺のコレクションにならないか!」

「黙ってろ」

「おやおやぁ? 余裕がなくなってますねえ、だんだん弱ってますねえ、限界が近いようですねえ?」


白い魔力を操り、攻撃を繰り返す。

ボスを吹き飛ばし、影法師を覆っている影を消す。

ガラスケースに収められている方は、別系統の処理がされているのか壊せなかった。


「カッカッカッ、どういう気分だ、どういう気持だ。俺が何度も何度も立ち向かうことで負けようとしてる心境は。「こんなはずがない」とお前も思うか? 「こっちの方が強いはずなのに」ってなあ! そういう奴らが攻略される絶望の顔こそ俺の好物だッ!」


今のボクは、願いにより強化し、さらに上乗せする形でバフを加えている。

当然だけど、永続なんてしない。


刻一刻と力は失われていく。


「これ以上はなにがある? どうやって俺を楽しませる?」

「倒す」

「ああ残念、それは現在お取り扱いがされておりません。俺を倒すのは、このダンジョンそのものを破壊するみたいなものだ。ダンジョン解体土木事業計画を立ててからどうぞ?」


袋小路の中、一筋の勝機を探してボクはあがき続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ