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今回はテンポが速いけど、普通はもっと隠れている人が多く残って決着はまるでつかない。このままでは見ている方も退屈で、事態は動かないしお腹も減る。

なにより、減った魔力を補充する必要があった。そのためにこの昼休憩は必要だ。

一旦は枕投げ状態は解除され、あちこちからゾロゾロと寮生が家へと戻る。


――よし。

「座ってろ」

――なぜに!?

「いま何しようとしてた」

――もちろん、料理を作ろうと。

「いらん」

――でも、家の仕事が……

「ただでさえ混雑するんだ、オマエが直々に作るとなるとそこに殺到する。無用な混乱を起こすな、座っとけ」


恐慌因子扱いされてしまった。


家は仕方無しに食堂の広い机の前にちょこんと座った。場所的にはお誕生日席だけど嬉しくない。

横に家主がつまんなさそうな顔して座っているのはちょっと嬉しい。


次々に寮生が入ってくるけど、家がそれを料理で出迎えられないのは悲しい。

普段は生活リズムが違うから、ここまで一同に介することがない、ずらっと満員に近い様子は壮観だった。ちょっといい気分。


当たり前だけど、誰もメニューを開かないし、聞きに来ることもない。その必要がない。

ここでの注文の仕方は、それぞれの頭の中にメニューが展開されて、それを選ぶ方式だった。

『願い』を叶えるときのシステムの応用で、割と便利と好評だ。


ただ、初見のフェルさんは混乱して、目をパチパチさせていた。食堂に入ったとたん脳内にメニューがドンだ。なにか起きたか分からない。

まあ、主に春先によく見かける光景だった。


そう、これは、家の出番ですな?


「いらん、座っとけ」

――うおう。


強制着席させられた。

見れば、最初に機関銃乱射してた人が、親切にやり方を教えてた。

毎年ここで混乱する人が多いから、教える方も慣れていた。

ついでに銃の素晴らしさについても布教しようとしてるのは、きっと個人的な趣味だ。


よくよく観察してみれば、そこかしこで集団ができている。

そう、この昼休憩は、ただ飯を食って午前中に消費した魔力を回復しようぜのターンだけじゃなかった。

交渉のため、あるいは準備のための時間だ。

アイドルの子がやっていたみたいな集団構築は、普通はこの時間に行われる。


ここまで生き残ってはじめて、組むに足る相手だと見なされる。

事前に組んだら相手が魔法火薬を持ち出していきなり着火、共犯扱いされたなんて話もある。


そのアイドルの子は、左壁際にある別の大机で突っ伏していた。多人数が座れる机なのに一人しかいない。だけど、なんかこう、その一帯に妙な熱気があった。見えないだけで強い念がわだかまる。不用意に近づいたらやばいとわかる。

家に向けて多くの視線を注いでるような雰囲気もあるし。


「――」


アイドルの子が、無言のまま顔を上げて家を見た。

手を振ってみるけど、しばらくじっと家を見つめ、何回か口を開いて喋ろうとパクパクした後、バッタリとまた顔を机に顔を預けた。かなり調子が悪そうだった。


ちゃんとご飯が食べられるかどうか心配だ。

見えない誰かが、その背中をさすってるような気配があった。


フェルさんは無事に注文できたのか、鶏肉のソテーをぱくついてる。

隣の機関銃の子が、妙にひきつった顔をしているのが印象的だ。


色んな人が喋ったり食べたりしてる。

その数と勢いを証明するように、家の頭の中では、注文、料理、提供の情報が流れてる。割りと壮観だ。


騎士の人は兜を脱いで、美味い美味いと笑顔で食べていた。案外、マナーがしっかりしてる。骨付きチキンを手づかみじゃなくてナイフとフォークで食べる騎士って初めて見たかも。周囲の恐怖と憤怒をブレンドした視線を気にした様子もなく、落ち着いた様子で口へと運んでいた。


ギリースーツとかを着ていた人たちは、簡単につまめるものだけ頼んですぐに戻ろうとしてた。

勝手に元の場所に転送してくれるシステムじゃない。

時間ギリギリの移動は隠れ場所を教えているようなものだから、いち早い休憩終わりが必要だった。

そのはずなんだけど、なぜか何人か集まってる様子がある。真剣な顔で顔を突き合わせている。四角い簡易食料を口にしながら小声で交わす様子は、秘密の取引をしているみたいだった。


そう、多くの寮生が午後に向けて作戦を練っていた。

午前中での出来事を元に、どうすればいいのかを模索する。どうすれば事態を打開できるのか。


広い食堂では、料理だけじゃなくて情報も満載だ。

今もすごい勢いで流れる注文と料理作成に負けず劣らず、大量の会話がされて――


――んん?


いや、さすがにもうそろそろ注文は一段落する頃なのでは。

最初こそ大変だけど、追加する人とかそんなにいないし。


不思議に思って周囲を見渡すと、小山ができていた。

積み上がった、空皿の山だった。


その向こうでは「んー♪」と嬉しそうなフェルさんの声が聞こえ、また一つ皿が積み重なった。

注文が、メニューの上から下まで全部くらいの勢いでされた。

物理的なタッチ注文じゃ無理なテンポは、「もっと速くもっと足りない!」と急かしているみたいだった。


自動調理システムから、当たり前みたいにエマージェンシーコールが鳴り響いた。


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