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「銃の欠点は、当たり前っちゃ当たり前だが、枕じゃないことだ」

――家主、ボケた?


スパンと頭叩かれた。


「形状と機構の複雑さから枕から遠いって意味だボケ。球一発につき枕一個を投げるのと同じくらい魔力を消費するのは、この違いも理由の一つだ。やるなら連射じゃなくて単発で、もっと威力を上げたもんにすべきだったろうな」


どこかから呪詛みたいに「ロマンを、ロマンをわかってなぃぃ」って声がしていた。


「次があるとしたら、そういう銃撃戦になるのかもしれんが、今はまだ接近用の凶器が多いな」

――うう、痛い……

「あー、悪かった悪かった、また今度掃除でもしてやる」

――そ、それはまた今度にしません!?

「なんだ嫌か」

――連続は身が持たぬです……


家が撫でられてる姿を、微笑ましさ半分、怨嗟半分みたいな視線が包んだ。

怨嗟の出どころはよくわからなかった。ポルターガイストからかもしれない。


「それにしても、毎度のことだが隠れてやり過ごそうとする奴が割と多いな」

――そうなんですか?

「今回は多少はマシだが、賞品はそれなりに数がある。枕投げで勝つよりは最後まで生き残る、そういうかくれんぼ戦略を選ぶやつもそれなりにいる」

――あー、森の方に隠れた人とか。

「見つけてわざわざ倒しに行くのはコスパが悪いからな、案外、賢いやり方ではあるんだろうぜ、つまらんけどな」


たまに何人かで組んでるところもあるけど、基本的に誰もが一人で動いてる。

倒すにしても、近くの敵が優先で、遠くでひっそり隠れてる人を探しに行くのは後回し。

だって、下手に探そうとすれば不意打ちを食らう。敵は動かず自分は動くから、どうしたって音は出る。


中にはギリースーツ――葉っぱとかをミノムシみたいにつけた格好の人とかもいたし、森の中は隠れてる側が有利だった。


家がなるほどと頷いてると、アイドルの子が、なにかを喋っているのを見かけた。

それまでずっと説得していたらしい、慌てて音声を繋げる。


『――る、これがあたしの目標、是が非でもやりたいこと。都立劇場監督の協力は、もうすでに取り付けた』


家から見ると、なんか無人の野に向けて喋ってる感じだった。

たぶん、ポルターガイストの集団を相手に演説してる。


『あたしはあなた達のことを尊敬する。そのあり方を称賛する。だから、どうか考えて欲しい』


けど、その身振り手振りは、声の出し方は、ちゃんと皆の心を動かすもので。


『あの子ともう一度おしゃべりする、それが本当にあなた達のやりたいことなのかを。あなた達はかつて、自分自身のためじゃなくて、あの子のために、皆のために願いを使った。何度でも言う、あたしはその行動を評価する。それはすごいんだ。それは誰にでもできるようなことじゃないんだ。この寮では多く見えても、全体で見れば絶対に少数派だ』


頭を下げる、心から頼んでいるとわかる。


『だからどうかもう一度。あたしのためじゃない。あの子をより輝かせるために、その舞台を整えるために、協力して欲しい。あの賞品を、あの端材を、あの子のカケラを、願いを強化する物品をひとつでも多く手に入れるために』


「……いままでに無かったな」


家主が険しい顔でぽつりと言う。


「一時的な協力関係を結ぶ奴らは、たまにいた。けどこれは別モンだ」


画面の中では、アイドルの子が質問を受けて返答しているみたいな場面があった。まったく焦らず、ただ真剣に対応している様子がわかる。

ぜんぜん見えないけど、散らばっていた集団が、だんだんと近づきつつあるような雰囲気があった。


「チームですらない。一つの目的に向けて作られた集団だ、きっとこの大会が終わった後でも続く人の集まりだ――」


枕投げ大会中、そこだけ異様な雰囲気があった。

熱に浮かされたように画面を見つめる人たちの姿すらある。


「これはもう結社だ」


どこかで見たようなポーズを取り、それに呼応するような振動が空気を揺らし――

すべてを飲み込むポルターガイストの集団が誕生した。

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