14
枕投げ、それは平和でちょっとしたお遊びで、夜中にやりすぎる怒られるもの。
だけど、ここではちょっと違った。
というか、いつの間にか違うものになっていた。
「家」
――はい。
右に拡声器、左で家を指して家主は言う。
「枕投擲大会機構、起動」
――了解。
枕投げ大会用に確保していた魔力貯蔵を開口する。
記憶燃焼機構でいえば数年分の、結構な量の魔力が溢れ、特殊構築システムに通される。
家の内部を巡り、力を現し、すべての窓に隔壁が降ろされ、家自身の構造的な強化を行い、魔術的仕切りにより区画への出入りを禁じ、敷地内へ条理を強制する。
ブゥン――と音を立てて、地面から淡い魔力が立ち上り、参加者たちに条理を課す。
ここでは枕だけしか攻撃手段がない、そういうルールを。
「初参加のやつもいるだろうから説明しとく。これは、以前の馬鹿な寮生が願ったシステムだ。揉め事やら争奪戦があれば、決着は枕投げで決める。そういう願いだ」
そうなのか。
「投げた枕には魔力が込められ、当てられたやつはその分の魔力をごっそり奪われる。魔力が全部が無くなればソイツは脱落だ。奪った魔力は家が吸収し、次の大会運営用に回される」
……ええと、なんか、ものっすごい量の魔力が、あったんだけど。
「本来なら、マジで平和で穏当な争いだった、喧嘩にしたって傷つくことがねえで終わる。見た目的にも微笑ましい。だが、願った奴は想定してなかった。本当に欲しいもんを目の前にした人間ってのは、なんでもやるってことを。まあ、これを責めるのはコクってもんだ」
騎士の人が取り出す。直剣だった。
ギラリと禍々しく輝いてる。
「……そこの馬鹿騎士みたいにだ、「一ヶ月以上それを頭の下に置いて寝ていたら、それは枕として扱われる」なんてこと、普通は考えねえ。けど、システムはそう判定しちまった」
見ればアイドルの人も、メリケンサックを取り出して手にはめていた。
それ以外にも、そこかしこで色々な凶器がギラギラ並ぶ。とてもじゃないけど、枕投げ大会をする雰囲気じゃなかった。
今から始まるのってバトルロワイヤル?
「できねえとは思うが攻撃魔法の類は禁止な、あくまでも「枕」を投げろ。投げた枕は一定時間で手元に戻るようになってるから、まあ、気軽に投げていいんじゃねえか、少なくとも無くすことはねえ」
誰もが黙ったまま戦意をたぎらせていた。
フー、フーッ、と荒い呼吸をしている。
これ、家のいらない端材的なものの争奪戦だよね?
「一応は安全機構が働いてるはずだが、絶対とはいえねえ、致死性の攻撃はやめとけ。手足一本奪うくらいのつもりでやること」
みんな素直に頷いてるけど、雰囲気的に通じてない。なんか言葉を知らない人の集まりみたいだ。
OK、ぶっ殺す。
オデ、ヤル。
ウッホぉぅぉオオオっ!
って無言の返答があった。最後は本当に叫んでた。
「あー、それと前と同じはちょっとツマランよな。数には限りがあるが、そこそこの人数が確保できるっぽいしな。だから、今回はこれも賞品につける」
家主が懐から取り出したのは、なんか古ぼけて錆びついた、あんまりよくなさそうな釘だった。
「この家の、最初期に使われてた釘だ」
なのに、シン、と場が静まりかえった。
誰もがあんぐりと口を開けてそれを見つめる。
チリチリと、導火線が燃えるみたいな緊張があった。
「これがあれば割と色々なことができる。最後まで生き残った奴のモンだ。まあ、ポルターガイストやってるやつも、記憶を戻すことはできなくても、しばらく認識されるくらいのことはできるだろうぜ」
集まってる人はもちろん、それ以外の全方向から雄叫びみたいな振動があった。




