1 ある断片
「ロボットってかっこいいんだ」
ーーそうなんだ。
「でかいし強いし、こう、飛ぶし!」
ーー飛ぶの!?
「そう、そうなんだ、日本だと当たり前だったから!」
ーーニホンってすごい。
「うん!」
頷いた拍子に咳をして、家はあわててその背をさすった。
ーーだいじょうぶ?
「へへ、こ、このくらい、どうってことないぜ……!」
ーーそれもロボットのセリフ?
「これだとパイロットかな」
ーーおおー。
「異世界だと乗れるかなって、思ってたんだけどなぁ」
ーー現実ってそういうものらしいよ。
「魔法あるんだから頑張ってくれよぉ!」
――無茶言ってない?
「言ってるかも」
ゆっくりと横になり、子供は言う。
「ああ、もう大変すぎ」
――なにが?
「人生が」
――人間って大変だ。
「そうなんだよぉ。そっちは?」
――家は寮生が上手く行けばわりと嬉しい。
「……そこはもうちょっと、こう、欲深くなっていいんじゃない?」
――家、強欲だと思うけど?
「どの辺がよ」
――寮生全員がハッピーになって欲しい。
「それは……あー……強欲かもね」
複雑に笑う子供は、集中治療の特別室で横になっている。
可能な限りの魔力調整はしたけれど、それでも無理な部分がある。
生まれながらに魔力の形質が、この世界と合っていなかった。
治療でどうにかできる問題じゃなかった、放置された氷をどうやって長持ちさせるかに近い。
「ねえ」
――なに。
「願いを、言いたい」
――やだ。
「どうして」
――家は、忘れたくない。
まっすぐに見つめて言う。
――生きるために願うのなら、いいよ。悲しいけど家は諦める。でも、絶対にそうじゃない。だから、聞きたくない。
「ここって願いを叶える家じゃないの?」
――そうだよ、家が叶える。だから、叶えるかどうかも家が決める。
「傲慢すぎない?」
――家なんだから当然。
「なにそれ」
――人間っていう弱い生き物を保護してやってるのが家。だから家は人間よりも偉いのである、ふふん。
「好意がけっこう歪んでる」
――すべての家は、人間が幸せに暮らすことを願ってる。
「……」
――だから、幸せになれない願いは、叶えない。
「なら、なおさらだ」
横たわったまま、目をつむったまま言う。
「そんな風に泣きながら笑ってるやつの顔なんて、もう見たくないっつーの、とっとと僕のことなんて忘れちまえ」
この第一話は、たまに違う話になるかもしれません。




