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とりあえず、1分間だけでも付き合ってみよう

作者: 最条真

「今から世界が滅ぶらしいわ」


 長年の付き合いである彼女からの朝っぱらからの電話に面食らっていると、そんなことを粛々と告げられた。


「は?」

「1分後に。世界が滅ぶらしいのよ」

「マジか」

「ニュースを見ればすぐ分かることだけど時間のムダね。さしあたっては、私と付き合って欲しいのよ」

「1分後に世界が滅ぶのに?」


 オレは電話越しの彼女の告白が冗談ではないと分かっているのに、まるで冗談のように聞こえてしまって。

 思わず、声を上げて笑ってしまった。


 1分後に世界が滅ぶらしいのに、告白してくる人がいるとは、思っていなかったのだ。

 電話越し、ここにはいない彼女の顔が、簡単に想像できる。悪ふざけではない、本気の告白だということも。


「ずっと言わなかったのよ。世界が滅ぶことを知るまで、言うつもりもなかった」

「なんでーー」

「だって貴方、好きな人がいるでしょう」


 隣の席の女の子、気がつけば目で追っていることがあると、笑いながら彼女に話したことがある。


「いや、アレはーー」

「御託は良いのよ。それで、私と付き合うの?」

「じゃあ、付き合います」

「あら、返事が良いわね」

「彼女がいないまま死にたくねぇもん、オレ」

「そんなことで私からの返事を受けたの? 最低ね?」

「世界が滅ぶ1分前に電話してくれる女の子と、そうじゃない子じゃ前者に軍配が上がるかな」

「私にしか勝ち目がないじゃない」

「そうだな、お前しか勝たん」

「嬉しいわね」

「そうだな。百年の恋が目覚めるわ」

「......ッ、貴方のワードセンスは分かりづらいわね」

「悪い悪い。ところで、これから付き合うわけだが、おすすめのデートスポットとかある?」

「1分後に世界が滅ぶのに?」

「世界が滅ぶ前に聞いておきたいの。とりあえず、1分間だけでも付き合うんだからさ」

「......だから?」

「今後のリサーチが必要かな、と」


 そうオレが言った後、彼女は電話越し考えるように唸って、色々な案を出した。


「......そうね。動物園とか、水族館。遊園地なんかは定番ね。あと、お家デートとか」

「じゃあ、全部行こう」

「本当に? 全部行く?」

「当たり前だ。最近オレがバイトに励んでるのはなんのためだと思ってる」

「好きな女の子と同じバイト先で働きたいからじゃないの?」

「違うからな。本当に」


 何やら未だに勘違いを続けている彼女に、訂正をするようにオレは言う。


「ーー好きな子のクリスマスプレゼントって、何が良いか相談してただけだ」

「......は?」


 電話越し、そこで彼女はすっとんきょうな声を上げた。


「ね、ねぇ。それってーー」

「ところで!」


 話題を切り替えるように、オレは言った。


「とっくに1分経ってるんだが」

「......嘘に決まってるじゃない。唐突に世界が滅ぶとでも?」

「ちなみに、本当に付き合うからな」

「......世界を滅ぼしかけた女よ? 私は」

「滅んでねぇからな世界」


 そこでオレは立ち上がって、外に出る準備をする。

 最近は肌寒くて、コートは欠かせないから、当然の厚着である。


「今から家行っていいか?」

「何しに来るのよ......」

「そりゃアレだよーー」


 電話越し、ここにはいない彼女の顔を思い浮かべながらーー、




「ーーお前の顔が見たくなって」









『彼女』

電話越し、この場にいない女の子。

「1分後に世界が滅びる」と自分に暗示をかけて告白してきた。クリスマスも近いしね。

フラれる前提だったのが、まさかの大勝利。お幸せに。


『オレ』

恋愛相談の体で彼女の好感度を探ろうとしたら、マジで勘違いされまくってたっぽい。

将来のデートやら諸々の資金を集めるためのバイト先が、好きだと勘違いされた女の子と被ってたこともあり、まぁ大変。クリスマスに告白するつもりではあったが、彼女に先を越された。

今から彼女の顔を見に行きます。





作品を作る気力はあるのに、中々うまく行かない今日この頃。

クリスマスが近いね。作者は予定がありません。多分小説かいてる。

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― 新着の感想 ―
[一言] え、すごく良い。彼は笑いを堪えてたんかなw
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