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43. 標石

◆◆◆◆◆



2年を賭しても再び会うことは叶わなかった唯一の相棒は、なんの前触れもなく、そして唐突に、ティナの目の前に魔族の姿で現れた。


「ノイン! 今までどこで何をして──」

「ごめん、もう君とは一緒に行けない。それだけ伝えに来たんだ」


顔を明るくさせたティナだったが、遮るようにして放たれたノインの言葉にすぐさま表情を歪める。


「……それは、どういう」

「詳しいことは言えない。とにかく、もう僕のことは探さなくていいから」


先程倒したモンスターの亡骸から魔石を取り出したかと思えば、ノインは森の闇へと溶け込んでいった。


「お待ちなさい! まだ話は……!」


ようやく見つけた目標をみすみす逃すわけにはいかないと草を掻き分け森に入っていくティナだったが、既にノインの姿は消えてしまっていた。


「そんな……」

「ティナ!」


ガサゴソと森に入ってきたのは、〈舞う楓〉の2人。戦闘の音を聞きつけ、やってきたのだろう。何も無い場所に1人項垂れるティナを不思議に思い、リアンが声をかける。


「ティナさん、何かあったのですか」

「ノインに、会いましたわ」

「そりゃよかったじゃん! 今夜はお祝いだね……って、あれ? 当のノインが見当たらないけど……」

(わたくし)は今まで、何をしていたのでしょうね……っ」


彼女は先程の戦闘で負った傷に顔を歪ませながら、自嘲気味に顔を上げた。


「ケガが痛むみたいです。近くに安全地帯(セーフエリア)もありますし、手当のついでに何があったか説明するです」



◆◆◆◆◆



「つまり、ノインはティナの話も聞かずにどこかへ消えてしまった、と。むむむ、どうしてだろう?」

「彼は何も話してくれませんでしたわ。ただ、もう自分のことは探さなくてもいいとだけ」


腹部に包帯を巻きながら、達観した表情で顛末を語るティナ。応急処置を施しながらも、あれだけ自分を仲間として着いてきていたノインが何故あんな言動をとったのか考えていた。

2人が離れ離れになったあの日、ノインは魔族であるベンゲルに担がれ連れて行かれた。そしてさっき出会ったノインのあの姿は正しく魔族のもの……。などと。


「もしかしたら連れ去られた先で洗脳でも……いえ、こんなのは希望的観測に過ぎませんわ。それにあの時の様子。完全に魔族の力をコントロール出来ていると見て間違いないでしょうね」

「本当の魔族になっちゃった……なんてことは考えたくないよね」

「可能性としてはないわけではないですわね。……どちらにせよ」


砂利の上に後ろに倒れ込み、彼女は呟いた。


「もう、疲れましたわ」



◆◆◆◆◆


〈偽りの谷〉の秘匿された領域にて──。


「ほんとによかったんスか? あのお嬢サン、ずーっと貴方を探してたみたいっスけど」


2年経っても変わらない丸眼鏡をかけたベイトが問う。


「ああ。これから僕らがやろうとしていることに、ティナを巻き込むわけにはいかない」


問いに応えたのは既に魔族化を解いたノインである。こちらは以前とは違い、黒と赤を基調とした衣装に身を包んでいた。


「もうすぐ準備が終わる……僕がどう生きるのかも、決まる」


ノインは自らの決意を固めるように、拳を握りこんだ。



◆◆◆◆◆

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