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42. 再会

◆◆◆◆◆



帝都(キルドニア)付近に数多く存在するダンジョンの中でも、紅葉のもつ美しい赤や水面に反射する空が見る者に癒しを与える湖など、その危険さに目をつむれば景観を楽しむことの出来るダンジョン、〈偽りの谷〉。〈舞う楓〉にティナを加えた冒険者パーティは、ここにとある調査に赴いていた。


「この辺り、報告にあった地点が近いはずですわ」

「ティナ、後ろ!」


ティナはドレスの腰に提げた二振りの細剣のうちの一つを手に取り、振り返ることもなく背後に現れた異形の怪物を両断した。


「この程度の雑魚、(わたくし)の敵ではありませんわ」

「にしても、モンスターさえいなきゃいいとこなのにねー」

安全地帯(セーフエリア)であれば、落ち着いて景色を眺められるかもです」

「ありゃ、魔石取らなくていいの?」

(わたくし)は近辺を探して参りますわ。欲しければどうぞ」


そそくさと姉妹から離れ調査に向かうティナ。モンスターから採取することのできる魔石は冒険者の収入源となる物だが、まるで興味が無い様子に困惑しつつも、姉妹の姉であるアンリは魔石を回収していた。


「ま、3級に上がって収入も安定してきたから、ちまっとしたのに見向きもしなくなるのはわかるけどねー。うひゃー、この魔石どろどろだよ〜」

()が居なくなって2年ほど、でしょうか。クロネ様から送られてくる、魔族の拠点がある可能性の高いポイントを調査しては外れ、ティナさんに焦りが生まれてきたように思います」


彼、というのはティナと共に冒険者パーティ〈深眼の孤狼〉として活動していた相棒、ノイン=ヴァストのことである。彼がダンジョンで魔族に拉致されて以来、ティナたちは捜索を続けていたのだ。


「まっ、まだ全部のダンジョンを探したわけじゃないし、私たちも頑張らなきゃね、リアン!」

「そうですね。ノインさんが居るかもしれないという魔族の拠点……。なんとしても見つけ出さないと」


魔石の採取を終え、姉妹はティナの別の方向へと調査に向かうのだった。



◆◆◆◆◆



アンリやリアンと別れてから数分。ティナは谷底での探索を開始していた。

谷の中心には大きな川が流れており、そこを辿っていけば魔族の拠点となっている場所に通じていると推理したのである。しかし……


「ここも外れ……」


いくら探しても、魔族の拠点に至る道やそれが隠されているような場所は見つからなかった。


「これまでに色んなダンジョンを巡ったものの、ノインに関する手がかりはまるで見つからない……。もう手遅れなのかしらね」


左手に持っていた情報が書かれた紙片を握りしめ、ギリッと歯を噛み締めるティナ。しかし、モンスターは空気を読んではくれない。傷心気味な彼女の背後には、鋭利でハサミのように二股に別れた腕を持つ虫の姿をした怪物が襲いかかろうとしていた。


「……ッ!」


ハサミによる斬撃が自身の胴体を両断する直前に反応し、咄嗟に振り返り攻撃を捌いた。が……


「キツいの、もらってしまいましたわね……!」


致命傷は避けたものの、脇腹を抉られ、そこから零れる鮮血が地面を濡らす。


「(完ッ全に油断しましたわ……! このダンジョンに2級相当のモンスターが現れたというのもそうですが……)」


 彼女は傷ついた脇腹を手で押さえ、もう一方で細剣を手に取る。助けを呼ぶという選択肢は既に除外されている。というのも、この2年でティナと<舞う楓>の姉妹は普通のパーティとは違い別行動を取ることが多く、そのためお互いの距離が離れてしまい助呼ぶとなると他のモンスターまでひきつけかねないのだ。


「やるしか、ないようですわね」


 覚悟を決め、異形と対峙する。じりじりと滲み寄るモンスターと次第に距離が縮まっていき、両者の攻撃がぶつかる。そこからは一瞬の出来事であった。ティナの負った傷が思ったよりも足を引っ張り、細剣が手から弾き飛ばされたのだ。


「(仕方ありませんわ、多少モンスターを呼んだとしても彼女らなら大した問題はないはず──)」


 と、鞄から出した笛を吹こうとした刹那。

 何者かによってモンスターの肉体が爆散した。


「なっ、何が起きましたの!?」


 その衝撃から顔を庇うようにしていた腕をどけたティナの目の前には、一人の男が立っていた。


「……ようやく会えましたわね」


 漆黒の装甲に身を包んだ、ティナが探してきた相棒(パートナー)、ノインだ。

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