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没落お嬢様の荷物持ちやってたら世界救ってました。  作者: 肋骨亭
第2章〜力不足を嘆いていたら人外になってました〜
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39. 群集

◆◆◆◆◆



「ふあ……。ええと、ここどこ……?」


焦げ茶色をした木材で作られた小屋のような手狭な空間に配置された簡易的なベッドの上で、ノインは目覚めた。


「傷の手当がされてる……それに、服も新しい……?」


ベンゲルとの戦いで怪我をした部分には包帯が巻かれ、自分のものともベンゲルのものとも知れない血がたくさん付いた服は脱がされ、新しいものに着替えさせられていた。


「とにかくここから出ないと。ティナのことも気がかりだし。っと、あれ」


ベッドから降りようとすると、腕が引っ張られる。見ると、ベッドと手首を手錠で括り付けられていた。


「まいったな……荒っぽいことはしたくないけど、やってみるか」


幸い、スキルで仕舞っている物までは取られていなかったようで、黒獅子の剣はすんなりと手元に現れた。


「やりにくいな……。ん?」


片手で、しかも手錠に繋がれた体勢では上手く力を乗せられず、中々拘束を解けずにいると、小屋のドアが何者かによって開かれた。


「……ッベンゲル!」

「まあ落ち着けよ。その状況じゃまともに戦えないし、そもそも今のお前じゃ俺には勝てない」


ドアから現れたのは強敵、ベンゲル。煽るような発言を気にも留めず、ノインは剣先をベンゲルに向ける。


「ここは一体どこなんだ?」

「とりあえずそいつを仕舞えよ。じゃなきゃ出してやらねぇ」

「仕方ない、か……」


敵意はないと判断し、ノインは剣をスキルの空間へ収納した。ベッドに括り付けられていた方の拘束はもう片方の手に移され、ノインは外に出る。


「ここ、もしかしてダンジョン……!?」


視界に広がったのは、奇怪な果実を実らせた木々。それに鼻腔をくすぐる瘴気。ノインは感覚で理解した。ここはダンジョンだと。


「これからお前には。ま、詳しい話はコイツから聞けや」

「お久しぶりっス、ノインサン」


見覚えのある丸眼鏡と特徴的な喋り方で現れたその人物は、親しげにノインに話しかけてきた。


「君は、確かベイト……! もしかして君も捕まったのか!?」

「ああいや、それは違うッス。自分は望んでこの場に居るんスよ」


そう言い、歩き出すベイト。何故彼と敵であるはずのベンゲルが行動を共にしているのか。この場所と自分に一体どのような関係があるのか。そもそもここは何なのか。ノインの脳内を様々な疑問がよぎる。


「僕を殺すんじゃないのか?」

「そんなことするわけないッスよ。ノインサンは超重要人物なんスから。」


先頭にベイト、その後ろをノイン、挟むようにベンゲルといった順で1列になって林道を歩く。


「重要? 僕が?」

「そうッス。どこから話すッスかね……。まず、魔族についてどれぐらい知ってるッスか?」

「人が魔物になった時に魔族って呼び方をして、凶暴でとても強くて……それぐらいかな?」


あまり知られていない魔族の情報を当たり前のように知っているベイトに疑問すら抱かず、ノインは素直に答えた。


「半分正解ッス。でも、彼を見て、どこが凶暴に見えるッス?」


ベイトは後方を歩くベンゲルを指差した。


「どこがって……どこも凶暴に見えるけど? すぐ襲いかかってくるし、戦い方だって……」

「テメェ、今すぐバラされたいかァ……?」


感じたままをぱっと言ってみただけでそこまで激昂されると思っておらず、ビクつくノイン。


「確かにベンゲルサンは危険人物ッスけど、ちゃんと理性があるんスよ」

「あァッ!?」

「つまり、魔族に『手当たり次第に周囲を襲う』みたいな特徴は無いってことッス」

「そうは言っても、僕が魔族化した時は暴走してたんだけど……」

「ノインサンは特殊なんスよ。まあ、何が言いたいかってことなんスけど……、帝都(キルドニア)にある、魔族に関する情報はねじ曲げられている」


瞬間、ベイトの語調に重みが加わった。


「魔族化した人はどうなると思うッスか?」

「元の人には普通、戻れないんだよね。だとしたらダンジョンとかで生きてくのかな? いやでも食べるものが無いしなあ……」

「食うもんならある」


突然、ベンゲルが口を開いた。その瞬間、側方の物陰から小型のモンスターが襲いかかったが、彼は一瞥(いちべつ)もくれず5本の爪を突き立て、魔石を直接取り出した。モンスターは言うまでもなく即死である。


「これが魔族(俺たち)の食料だ」


そう言うと、ベンゲルは手にした魔石に齧り付いた。


「う、うえぇ……」

「ベンゲルサン、やめてくださいよ〜。ノインサン引いちゃってるじゃないスか〜」

「チッ」

「冗談だよね、ベイト?」

「冗談じゃないんスよねー、これが。彼らの主となる栄養は瘴気。つまり、瘴気の塊である魔石は食料に打って付けってわけッス」


バリボリと魔石を噛む音を背後に感じながら、もしかしたら自分も、などという想像をしかけたが、止めた。今自分は両手を拘束され、よくわからないところを歩かされているのだ。


「そもそも、どこに向かってるの?」

「もうすぐ着くッスよ。ほら、見えてきたッス」


森を抜けた先に広がるのは、木々に囲まれた小さな集落だった。外では子供が走り回り、大人は仕事に励む様子が伺える。


「なんなんだ、ここは……!?」


ごく平凡な光景のはずが、驚きの声をあげるノイン。では、何に驚愕したのか。よく見ると、働く大人たちも、外を走る子供ですら、人間ではない。この集落を構成している住民はみな、魔族だったのだ。



◆◆◆◆◆

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