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没落お嬢様の荷物持ちやってたら世界救ってました。  作者: 肋骨亭
第2章〜力不足を嘆いていたら人外になってました〜
32/44

31. 凄惨

◆◆◆◆◆



「はあぁぁぁぁ……」


雷の魔術による重傷を負ったノインは、人が魔物に堕ちた姿である魔族となって立ち上がった。今や攻撃を受けた痕などは消え、瘴気の影響か赤みを帯びた瞳に獣を映す。

その危険性を本能で理解してか、警戒するように唸るボルテクス。ノインは剣を逆手に構え、吐息を落とした。


「ガアァッ」


張り詰めた糸が切れたように戦闘が始まった。凄まじい速度でぶつかり合う両者。刃と牙が激しく打ち合い、丈夫なはずのお互いの肉体から血が流れ始めた。


「ど、どうしよう!?」

「とにかく、今は見守るしかありませんわ」

「それに、今のノインに正気があるとは思えないです。今は魔物に集中していますが、奴が倒されたとき、次の標的は私たちかもです」


彼女たちは少し離れた場所で戦いの行く末を見張ることにした。魔族と魔物による殺し合いは苛烈をきわめた。度重なる攻撃を受け、あるいは

浴びせ、両者の身はの誰のものとも分からない血液に塗れていた。


「なんと禍々しい……。見てられませんわ……」

「やはり身体能力が向上する代わりに、理性なく暴れるようになってしまうようですね」


それまで圧倒していたノインの猛攻を振り切り、引き剥がすことに成功したボルテクスは再び電撃を放とうと力を溜め始める。


「また()()だよ、流石にもっかい食らったらヤバいんじゃ!?」


そういいつつも、彼女らに出来ることは無い。しかし、雷の魔術が発動する瞬間、ノインの姿は魔物の視界から消えたのである。否、消えたのではない。彼は魔物の頭上高くに瞬時に跳躍していた。ボルテクスの俊敏さをもってしても反応することができなかったノインの動きは、最早人の理を外れていた。


「跳んだ!?」

「掴みかかって一体何を……?」


上空からボルテクスに飛びかかるノイン。彼の本能が必要ないと判断したのだろう、いつの間にか黒獅子の剣は捨てられていた。獣じみた雄叫びをあげ、魔族化により牙と呼べるほど鋭利になった歯を剥き出しにする。


「ね、ねえ、あれって……」

「魔石を、食べているのでしょうか……?」


あろうことか、ノインは魔物の背に伸びる結晶化した瘴気である魔石に齧りついていた。餌を待ちかねた愛玩動物のように、一心不乱に魔石を食らう。ボルテクスは魔石へのダメージに耐えかね、血が混ざった絶叫を繰り返していた。


「こんなの、酷すぎるよ」

「とても見ていられるものではありませんわね……」


魔族流の食事、とでも形容できそうなその光景は数十秒続いた。既に魔物は抵抗することはなく、ピクピクと反射を続けるのみであった。やがてノインは立ち上がり、魔物の血液や魔石の欠片が付着した顔が露わになる。

先程の彼の行った凄惨な行為を目の当たりにし、その相貌に彼女たちは恐怖したのは言うまでもない。


「…………っ」


こちらをノインの赤い眼が捉える。その瞬間、全員に緊張が走った。最早確認など取らなくとも理解(わか)る。次は私たちの番だ、と。



◆◆◆◆◆



重々しい雰囲気の中、ノインの攻撃をギリギリの所で躱し続ける3人。それぞれの方法で猛攻に対処していたのはいいが、少しづつ、だが確実に傷が増えていた。


「このままでは埒が明かないです。何か手立ては無いんですか」

「前にこうなっちゃった時はどうやって元に戻ったの?」


ノインの鋭い爪を大槌で受け、振り下ろされる腕を土で弾きながら姉妹が問う。


「あの時は出血が酷くて、失神のショックで元のノインに戻ったのだと思いますが……今の私たちにそんな芸当は出来ませんし、出来たとしても従者の身を自らの手で傷付けるなど、畑を踏み荒らすに等しい愚行ですわ」

「じゃあどうするのっ!?」

「一つだけ方法が。詳しい説明は後でしますので10秒、いえ5秒で構いません、ノインの動きを止めてくださらないかしら!」


何かしらの活路を見出したティナに笑みで了解の意を伝えるアンリ。リアンともアイコンタクトを取り、2人は行動に出る。


「そおっれぇ!!」


大槌を天高く蹴り上げ、ノインをそこにおびき寄せるアンリ。天を舞う大槌が落ちてくるまでの間、身軽になった彼女は超反応で攻撃を避け続けた。


「じっとしとかないと危ないよっ!」


大槌の柄が地面に突き刺さると、彼女は柄を挟むようにノインの背中にまとわりつき、羽交い締めのような格好になった。だが、魔族となったノインにとってその拘束はあまり意味を成さない。圧倒的な力で強引に拘束を解こうとするノインの下半身を、アンリごと魔力を帯びた土が固めた。


「拘束、完了です」

「これでも長くは保たないと思う! ティナ、ひと思いにやっちゃって!」

「ええ、あなた方の働き、無駄には致しませんわ!」


細剣を構え、抵抗し咆哮をあげるノインに向かい一直線に駆ける。そんな彼の額にそびえる角にはエネルギーが集束していた。それはまるで先程まで戦っていた相手の模倣。しかし、その本質はボルテクスのそれと遜色は無いように思える。


「なんかヤバそうだけど、どうするつもり!?」

「知ったことですか! このまま押し切りますわ!」


ティナの瞳が輝く。同時に、臨界点を迎えた角から高威力の電撃が放たれた。



◆◆◆◆◆

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