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没落お嬢様の荷物持ちやってたら世界救ってました。  作者: 肋骨亭
第2章〜力不足を嘆いていたら人外になってました〜
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29. 成長

◆◆◆◆◆



修練場の乾いた地面と、喧騒に吸い込まれる剣戟の音。その音は単一のものではなく、いくつもの音が複雑に絡み合って鳴り響いている。


「中々やるねっ!」

「そちらも!」


その中でも一際激しく剣を打ち合っている組があった。片方は日光を受け美しく反射する褐色の肌を持つ少女、アンリ。普段は大槌を豪快に振り回す戦法を得意としているが、今は大槌を直剣に持ち替え、軽快に立ち回っている。

もう一方はダンジョン攻略用に改良されたドレスを身にまとった没落お嬢様、ティナ。こちらも普段とは違い細剣ではなく重厚な大剣を振り回している。


「っし、一旦きゅうけーい! どう? いつもと違う武器を使ってみた感想は」

「それはもう、違和感だらけですわ。この武器、重くてとてもダンジョン攻略には持っていけませんわね」

「やっぱしティナにはデカくて攻撃力が高い武器より、軽くて扱いやすい武器のがいいのかなー」

「それで、こんな意味不明な組手をやらせた理由をお聞かせ願えるかしら」


想像以上の疲労に苛立ちながら、大剣を下ろす。周囲では未だ、他の連合員の声や音で会話がしにくいということで、修練場の外縁に腰を下ろすことにした。


「ルクスバードを倒したでしょ? ティナたちの昇格試験の時の」

「ええ。ノインが初めて黒獅子の剣から魔術を放ったのが印象的でしたわね。それがどうかなさって?」

「とどめの一撃はティナだったし、あんな細い剣で魔物を倒せるなら、ひょっとして大きい武器の方が相性いいのかなーって」

「ふむ、しかしあの時は止まっている標的の急所を確実に攻撃できる状況でしたし、何より翼がもげて瀕死だったと思いますわよ?」

「あ、もしかしたらスキルかな? ティナのスキルってなんなの?」


ティナは少し迷った後、自虐的に笑った。


「……ありませんわ。鑑定をしたわけではないですけれど、これといって特殊な能力を実感したことは一度も」


アンリは直前の発言を後悔した。なぜなら冒険者にとって、スキルとは強力な武器だ。一部ではスキルの善し悪しによって冒険者としての素質の有無が決まると考える派閥もある。言ってしまえばスキルを持たないというだけで差別が起こりうるのだ。


「ご、ごめん。そんなつもりじゃなかったの」

「いいんですのよ。きっと便利なスキルを持っていたらノインという逸材に気付かぬままだったでしょうし。その代わりと言ってはなんですが、アンリのスキルについて聞かせてもらえないかしら?」


ティナの対応に安堵し、アンリは快く自分のスキルについての解説を始めた。


「私のスキルは単純明快! 強くなる!」


風が吹き、ぽかんと呆気に取られたような反応を見て、慌ててアンリは釈明した。


「ごほんっ、つまりは身体能力が高くなるってことだよ。こんな風にっ」


身を屈ませ、その場で飛び跳ねたかと思うと、彼女の姿は空高くまで消えていき、見えなくなってしまった。

しばらくして、アンリは音も無く着地した。


「凄いですわね。もしかして、あの巨大な槌を軽々と振り回せているのもそのスキルのおかげかしら?」

「その通り。スキルがなきゃ持ち上げるのが精一杯だよ。もちろん、鍛えてないわけじゃないけどね」

「面白い話を聞けましたわ。それじゃ、組手を再開しましょうか。もう一回り軽めの大剣なら扱えそうですわ」

「いいねえいいねえ。さて、あっちは大丈夫かな──」


そう呟く彼女の視線は連合のアイテムショップの方を向いていた。


「──あ、そだ。ねぇねぇティナ……」

「ふむふむ。それはいいアイデアですわね……」



◆◆◆◆◆



太陽の光が差し込む修練場とは打って変わって、人工の鈍い光によって照らされた広い部屋。そこでは先程の彼女たちとは違った形での特訓、あるいは実験が行われていた。


「これはどうやって使うの?」

「その玉のトリガー……引っ張った後に床に叩きつけて見て下さいぃ……」


指示に従い、床に叩きつけてみると、その玉は小さな破裂音と大量の煙を放ち始めた。煙はたちまち部屋中に広がり視界を埋めつくした。


「けほっけほっ……これ、すごいね」

「実戦で試したわけではないのですが、いざという時の目くらましにはなるかと……」

「……レパラ、そろそろ私に隠れながらノインと話すのやめないですか」


レパラと呼ばれた耳長族の少女は、首をふるふるさせ抵抗する。


「ゆっくり慣れていけばいいよ。まあ、そこまで嫌がられると流石にクるものがあるけどね……」


ティナや他の連合員と話す時とは異なる対応に思わず苦笑するノイン。


「あうぅ……すみません……」

「それで、どうしてノインはレパラのアイテムに目をつけたのです? この子の作るアイテムは一癖も二癖もあるものばかりです」

「なんていうか、びびっと来たんだよね。扱いづらい所もあるけど、その分強力だったりするし。特にこれなんか……」

「あっ、それは」

「あばばばばばばばば」


それは以前アンリが見つけた電撃を発生させる筒だった。痺れる手を何とか動かしスイッチを切る。


「ごほん。こういうのもモンスターの動きを止めるのに使えるかもしれないだろ?」

「確かに、一理あるかもです」

「そういうこと。他にも何か使えそうなアイテムがあるかもしれない。レパラ、もっと色々持ってきてくれ!」

「は、はい……!」


部屋の扉が突然開かれ、同時に元気のいい声が響きわたる。


「ほいほーい、突然だけど、明日から<舞う楓>と<深眼の孤狼>の合同で仕事することになったから! そのための仕事ももう見つけてきたよっ」

「え、ええぇっ? ほんとに急だね?」

「私は遠からずこうなりそうな気はしていました。こういう時だけはアンリは仕事が早いです」


 呆れつつも、期待がこもった声で話すリアンを見て、一蹴するのも悪いかと、了承するノインであった。



◆◆◆◆◆

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