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没落お嬢様の荷物持ちやってたら世界救ってました。  作者: 肋骨亭
第2章〜力不足を嘆いていたら人外になってました〜
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◆◆◆◆◆



クエストを完了し、洞窟型のダンジョンから出ることを一先(ひとま)ずの目的とした〈深眼の孤狼〉の2人。出口を求め歩み始めたのはいいものの、迷路状に枝分かれしている構造の道を行けば、迷うのは当然なわけで。


「ここは右だと思う」

「いや、左でしてよ」

「この道さっき通らなかったっけ?」

「同じところをぐるぐると……!?」


といった紆余曲折を経て、出口まで続く一方通行の通路に到達した。同時に最後の関門と言わんばかりにモンスターが群れとなって姿を表した。


「やっぱりすんなりとはいかないよね……、ティナ、戦えそう?」

「まだ傷が痛みますが、なんとか……」


言葉ではそう言いつつも、武器を持つ手には力が入っていない。このまま戦闘に入ればかなりの苦戦を強いられる。と、そこまで思考したノインの背後から、肩を透かすように土の塊が飛来し、それは魔物の一体に着弾した。


「ヒエッ」


自分の身スレスレを通り過ぎたので、思わず縮こまった声をあげるノイン。そして、土の塊の次にはなんと、回転する大槌が飛んできた。


「コヒュッ」


大槌は魔物の頭蓋を破壊しながら地面にめり込み、それだけでほとんどのモンスターを倒してしまった。


「やはー、スカッと爽やか〜」

「油断するのは早いです。まだ残ってるです」


再び背後からの気配。それはノインやティナにとって聞き覚えのある声だった。


「も、もしや!」

「ほいほーい、〈舞う楓〉、参上ってね」


ノインらの頭上を跳躍し、大槌を手に取ったその人物は昇格試験の際に同行した4級冒険者の姉妹で構成されたパーティ〈舞う楓〉の姉、アンリだった。


「てことは!」

「リアンもいますよー」


とてとてと、杖を持ち走り追随するのは妹のリアンである。


「よし、僕らも──」

「2人とも怪我してるっぽいし、ここは私たちに任せて!」

「ここはお言葉に甘えさせていただきましょう。助太刀、痛み入りますわ」


〈舞う楓〉の戦闘技術は数ヶ月前とは比べ物にならない程向上していた。大槌を振るい敵を薙ぎ払うアンリと、そこから漏れた幾匹を的確に撃ち抜くリアンのコンビネーションにより、モンスターをノインら〈深眼の孤狼〉には一度(ひとたび)も触れさせなかったのである。


「2人とも、どうしてここに?」

「依頼がなくとも魔石だけでもお金になるからね〜」

「それに、私たちは魔族とも接触しています。あれに対抗できるほどの実力を付けなければ、と」


アンリは大槌を背負うと、まじまじとノインやティナの傷を見つめた。


「ええっと、何か?」


照れが混じった苦笑いを浮かべながら、ティナが問う。


「もしかして、また戦ったの? なんとかって魔族と」

「ど、どうしてそれを? その話はしていないはずですが……」

「ルクスバードを倒せるほどの冒険者が、ちょっとばかしランクが高いとはいえこのダンジョンのモンスターにそこまで苦戦するかなあって思っただけだけど、まさか本当に会ってたとはねえ」


ハッとなり口を抑えるティナ。


「聞きたいことは色々ありますが、とりあえずここを脱しましょう。このままだとお2人が無様に死ぬのは時間の問題です」


リアンは相変わらずの毒舌で目標の提案を申し出る。かくして、〈深眼の孤狼〉と〈舞う楓〉は一時的に行動を共にすることになった。



◆◆◆◆◆



ダンジョンから抜け出し、帝都(キルドニア)に戻るまでの道中、アンリとリアンは2人への疑問について語った。


「そもそも、よくアイツと戦って2人とも無事でいられたね? ああいや、実力が無いって言ってるわけじゃなくて。すっごく強かったじゃん?」

「それが、僕らにも分からないんだ。ねえ、ティナ? ……ティナ?」

「……へっ? え、えぇ、そうですわね。気がついたら彼はいなくなってましたわ」

「ふーん?」


ティナの締まらない回答に何かを感じ取ったアンリは、しかしその場では言及せずに歩いていた。



その後、数度の魔物の襲撃を退け、4人は無事帝都に戻った。


「それじゃあ、僕は報告に行ってくるから、3人はここで待ってて」


ノインはそう言い残し、クエストギルドのカウンターへ向かって行った。諸々の事務処理を行っている間、ノインには聞こえないようにアンリがティナに声をかけた。


「ねね、さっき口ごもってたけど、本当は何か知ってるんじゃない?」

「な、なんのことかしら? 先程も話した通り、気がついたら例の魔族は撤退していた。それだけのことですわ」

「ノインさんに聞かれたくないのは分かってます。私たちも口外しないと約束するので話して欲しいです」


無表情ながら強い意志を感じさせるリアンに観念し、ティナは口を開いた。


「実は、(わたくし)が魔族にやられて倒れている時に、ノインから角が生えているように見えましたの」

「なん、もご、もごごっ!」

「姉のことは気にせず、詳しく聞かせてください」


驚愕に大きい声を発しそうになるアンリの口を塞ぐリアンは、冷静に続きを話すよう促す。


「朦朧とする意識の中で、ノインは凄まじい力を発揮していましたわ。別人と見紛う程に」

「ノインが魔族になったかもしれないってことねー。あれ? でも今はこうして普通にしてる……。どゆこと?」

「私たちはまだ魔族に関する知識は浅いです。今後は情報を集めていく必要がありそうです」

「(ふむふむ、なるほどね〜)」

「? なにか?」

「いや、なんでも〜」


ノインの魔族化。その不鮮明ながら確たる記憶の共有をしていると、渦中の人物は報酬を受け取り、ほくほく顔で戻って来る。


「ノインに悟られることがないよう、これからも変わらず接してくれると助かりますわ。それと、くれぐれもこの事はご内密に」

「もっちろん」

「はいです」

「いやー、鉱脈から採れたミルモタイトが思ったより多くて、その分報酬上乗せされちゃったよー」

「それは結構なことですわね。これで少しは(わたくし)の懐もあったかくなれば良いですけれど」


ノインは自分の取り分を袋から出し、残りが入った袋をティナへ渡すと、〈舞う楓〉の2人に向き直った。


「アンリさんリアンさん、2人ともありがとう! 助けが無かったら無事に帰って来れなかったかもしれない」


それは、今日の助太刀に対しての礼だった。すかさずティナはアイコンタクトをアンリに送る。


「(言いそびれていましたが、(わたくし)からもお礼を言わせてくださいまし。それに……わかっていますわね?)」

「(まっかせといてよ!)」


おそらく雰囲気でのやり取りであろうが、意図は伝わったらしく、アンリもキメ顔でアイコンタクトを返した。


「き、きききにしないでー! たまたまたまたまたま通りがかっただけだから!」

「「いや下手かい!!」」


直前とは全く違ったふにゃふにゃの表情で返事をしたアンリは、2人から総ツッコミを入れられたのだった。



◆◆◆◆◆

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