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没落お嬢様の荷物持ちやってたら世界救ってました。  作者: 肋骨亭
第2章〜力不足を嘆いていたら人外になってました〜
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24. 予兆

◆◆◆◆◆



「あははは! なんだ、お前そんな動き出来たのかよ!」

五月蝿(うるさ)い……!」


ベンゲルとの戦いの中で、相棒(ティナ)を失ったノインは、怒りのままに剣を振るう。その凄まじい連撃すら、魔族となって硬質化した腕で的確に捌かれてしまう。


「おいおい、距離を開けたら魔術が飛んできちまうぜェ?」

「そんなの、こっちだって同じだ!」


数発の火球が投げ込まれたが、ノインの衝撃波はそれらを消し去り、ベンゲルを飲み込まんと飛来する。しかし避けることも、防御することもなく堂々とした歩みで受け、高笑いをあげるベンゲル。


「どうした、こんなもんか!? 俺を殺したいんだろ、もっと来いよ!」

「ぁぁぁぁああああ!」


衝動に突き動かされ、黒剣の魔術を連発するノイン。魔術の発動の際に必要な魔素を大量に消費しているはずだが、それでも彼は剣を振り続けた。


「やればできんじゃねえか! ……でもお前、もういいや。()()()()には期待はずれだったと伝えておくか。……さて、お嬢様と一緒にここでくたばっとけ」


まともに喰らえばズタズタに切り裂かれるはずの攻撃を全て受け切ったベンゲルは、唐突にノインへの興味を失ったのか、目的を連行から殺害に変えたようだ。そして、タイミング悪くノインは魔素の大量消費による〈魔素酔い〉が起き、立つのがやっとという状態であった。


「このタイミングで……っ」

「終わりだ」


凶爪がノインの胸元に突き立てられ、視界が暗転した。



◆◆◆◆◆



「何ィ……?」


肉体を貫通しているはずのベンゲルの腕は、ノインの手前で停止していた。なんと、ノインが彼の腕を片手で掴んでいたのである。


「(様子がおかしい……一旦距離をとるか──ッ!?)」

「あぁー……」


異変を感じ取り、バックステップでノインから離れようとするも、同じ速度ですぐさま肉薄し追撃を加えられる。


「テメェ、一体どんな仕掛けを……ん?」


ベンゲルの、鎧のような硬さを誇る魔族の肉体がノインの攻撃を受けきれずにダメージを負い始めた。同時に、ベンゲルはあることに気が付いた。


「そうか、アイツが言ってたのはこういうことだったのか……! そりゃ仲間に引き込みたくもなる!」


ベンゲルの目線にはノインの額。そしてそこにはなんと、魔族の象徴とも言うべき黒く禍々しい角が1本、天を貫くように生えていた。


「お前を殺すのは辞めだ。まあ、血を流しすぎたってのもあるが」

「あ゛ぁー……」


ノインはもはや意思の疎通すら出来ない状態だった。1匹の獣のように、動く対象を斬り続ける。


「聞こえちゃいないだろうが忠告しといてやる! 次会う時までにその力、制御できるようにしとけよ。折角俺たちと()()になったんだ、おしゃべりも出来ないんじゃつまらないからな!」


ノインを蹴り飛ばし、火球を数個投げた後ベンゲルは洞窟の闇の中に吸い込まれていった。ノインはそれを追おうとしたものの、凄まじい力の代償か、その場に力なく倒れた。


「てぃ……ナ…………」



◆◆◆◆◆



それからどれ程の時間が経ったのかはわからない。数分、数時間か、あるいは数日か。少なくともノインにとって、時間の感覚が狂うほど深く気を失っていたということである。


「……はっ、ベンゲルは!?」


目を覚ましたノインが周囲を見やると、そこには首元に包帯を巻いたティナの姿が。


(わたくし)の目が覚めた頃にはいなくなってましたわ。幸い、2人とも怪我が深くないようでしたので軽く手当もしておきましたわ……って、ええっ?」


ノインの隣に座り、状況の説明をしているティナの話は、唐突な行動により遮られた。

抱擁である。魔族の操る炎に灼かれ、亡きものとなったはずのティナが生きていることへの安堵からか、その行為は半ば衝動的だった。


「どどどどどどうされましたの? 夢でも見ているのではなくて??」

「良かった……本当に……っ!」


初心なお嬢様は意識外のアクシデントに動揺を隠せずにいたが、ノインから発せられた言葉や、自分を抱きしめる手から不安や後悔、そして安堵の気配を認めると、慈愛に満ちた表情で抱擁を返した。


「……大丈夫。大丈夫ですわ。2人とも、生きてます。ふふっ、なんだか初めて会った時を思い出しますわね」

「そういえば、あの時も僕は気を失ってたっけ……っつぅ」


不意に頭に走る痛み。


「頭でも打ったのかしら? 外傷は無かったですけれど」

「実は落ちる前のこともあまり覚えてなくて。まあ、2人とも生きてる。今はそれだけで十分だよ」


柔和な雰囲気が流れるが、そうも言っていられない状況である。ノインが失神している間は運良く何も起こらなかったものの、いつモンスターの襲撃があるか分からないのだから。


「手当てありがとう、ティナ。準備が出来たら早速ここから出ないと」

「ええ、そうですわね」



そうしている間も、ノインの内に根付いた〈何か〉は誰にも知られることなく密かに、だが確実に胎動していた。



◆◆◆◆◆

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