21. 包囲
新章開幕でございます。ノインとティナの成長、その先にあるものを見届けていただければ幸いです。
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「……ふっ!」
闇と光が交差する洞窟の中を剣を薙ぐ音が通り抜ける。剣の軌跡には、ダンジョンが生み出したモンスターと呼ばれる異形の怪物の肉体があった。
ノインの持つ黒い剣により体を真っ二つにされ、それは次第に動きを停止していく。
「こちらは片付きましたわ」
「僕の方も丁度今終わったよ」
愛用の刺剣を収めながら、探索には不向きと思われるドレスをはためかせながらティナが駆け寄ってくる。ノインは先程まで握っていた剣を剥ぎ取りのためのナイフに瞬時に持ち替え、モンスターの魔石の回収作業に入った。
「それにしても、依頼にあった石……ミルモタイト、だっけ? なかなか見つからないもんだね」
「情報が正しければ、もうすぐその石の鉱脈があるらしいですけれど……」
2人は現在、クエストギルドからの依頼で洞窟型のダンジョンを探索している。暗い道を進むため、腰には小型のランタンがぶら下げられており、2人の周囲を照らしている。依頼書を眺めながら、ノインからナイフを受け取ったティナも魔石の回収をし始める。
「私に蓄えがあれば、わざわざこんな回収などしなくても済みますのに……!」
「ティナの金欠は今に始まったことじゃないし、はいっ手を動かすっ」
「そういうノインは随分とモンスターの身を剥ぐのに慣れたみたいですわね。最初はあんなにゲーゲー言っていたのに」
「そりゃ数ヶ月も繰り返してちゃ慣れるって。それじゃ、魔石ちょうだい」
ノインがティナから魔石を受け取ると、ノインの手のひらに乗っていた魔石は光の粒子を放ちながら消えていく。これはノインのスキルによるものである。スキルとは人が生まれながらにして持ちうる異能の名称で、その種類や性質は多岐にわたる。数ヶ月前、路頭に迷っていたノインのスキルを見、ティナは彼を荷物持ち──便宜上は冒険者だが──として拾ったのである。
「本当、便利なスキルですわね、それ。しかも、最近容量が増えたんではなくて?」
「ああ、かもね。今なら馬の1頭ぐらいなら入る気がする。身体を鍛えてることと関係してるのかな。」
「さあ? ま、スキルは神からの賜り物とか特異体質とか色々言われてますけど、結局は鑑定士とやらに見てもらえばいいのでしょう。その資金も必要ですし、とっとと石ころ集めますわよ」
討伐した全てのモンスターの魔石を回収し終え、2人は再び洞窟の闇の中へと歩を進めていく。
「ミルモタイトね……ん? てか資金ってどういうこと?」
「貴方のスキルは物を別の空間に保管、取り出しが出来るということ以外分からないことが多いんですのよ? その正体が判明すれば私達〈深眼の孤狼〉はもっと高みへ行けるはずですわ」
鑑定士とはすなわち、スキルを鑑定するスキルを持った者のことである。スキルに刻まれた名前や詳細な能力が判明するが、その分費用がかかる。そういったことを考慮した上で、ティナはノインのスキルを鑑定することに価値を見出しているのだ。
そんな意思を感じたのか、ノインは照れ臭そうに頭をポリポリ掻いた。
「いやあ、期待してくれるのは嬉しいもんだね。これは、僕も頑張らなくちゃな────っと」
ノインの眼前に広がったのは、暗闇の中でも堂々とした白だった。ミルモタイトと呼ばれる石の鉱脈である。
「ティナ、これじゃないか!?」
「ふむ……、どうやらそうみたいですわね。それじゃ、早速持ち帰りましょう」
「そうしたいところだけど……そんな簡単にはいかないみたいだよ」
岩の陰からぞろぞろと異形の怪物が現れる。それは鎌のような腕を持っているものや、多翼の蝙蝠ような者まで、様々な姿をしている。その数、5。
それらは人による試合とは違い行儀よく開戦の合図などしない。不規則なタイミングで襲い来るモンスター。
「一体ずつならなんとかなるけど、ここは狭いし、数も多いしで厄介だな……」
「あら、こんな時こそ練習してたあれの出番ではなくて?」
不敵な笑みを浮かべるティナに対してノインもまた口角を上げ応える。2人は食らいつくモンスターを引き剥がし距離をとる。
「ああ、やろう! 準備はいい?」
「いつでも!」
ティナの一言を合図に、ノインは眼前に右腕を突き出した。
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