15. 光明
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これまで戦ってきた魔物やモンスターに比べ、重力に逆らい大きく飛翔するルクスバード。普段の戦闘とは目線が大きく異なるノインやティナにとっては苦戦を強いられるかのように思えた。
否。予想に反し、手傷を負わされているのはかの怪鳥であったのだ。
「思ったより戦えてる!」
「当然ですわ。ボスモンスターと死闘を繰り広げた私たちがこの程度の魔物に遅れをとるはずがありませんわ! (ま、私はほぼ気絶してただけですけど!)」
翡翠の羽を散らし、ルクスバードは急降下攻撃を仕掛ける。以前のノインでは反応すら難しく、爪によって無惨に体を貫かれていただろう。だがその一撃は空を薙ぎ、攻めていたはずのルクスバードが痛みに叫びを漏らしていた。
ノインが既のところで攻撃を回避し、同時に足を切りつけていたのだ。
「中々やるな。でも、ヤツの怖いところはここからだぜ」
時折現れる周囲の魔物の相手をしつつ、戦いを観察していたイグニスは、意味ありげな笑みを浮かべていた。
「ノイン、畳み掛けますわよ!」
「ああ!」
ティナの掛け声と共に、2人は駆け出した。
その刹那。
世界が白に染まった。否、正確にはほんの一瞬、ルクスバードの体が発光しただけである。
だが、ノインやティナの身にはそう錯覚させる程の事象が起こっていた。
「しまった、何も見えない!」
「こういうことでしたのね……!」
「ルクスバードが魔物化する前の元々の鳥は、外敵から襲われた際、自身の体を目眩しとして発光させ、その隙に逃げると言うが……。魔物となり、凶暴化した今、奴はどんな行動をとるだろうな?」
ルクスバードの発光について何かしらの対策を講じていたのであろうタミトは、したり顔でそう言い放った。
その発言を合図とするかのように、ルクスバードは2人を攻撃し、再び飛翔する。
「まだ行けますわよね、ノイン?」
「当然だろ。この程度でへこたれてちゃ、とっくに死んでるさ」
敵と距離が生まれ、視界は徐々に鮮明さを取り戻していく。太陽を背にして羽ばたく翡翠の鳥の姿は神の使者と見紛う程の絢爛さであったが、ノインは臆することなく立ち向かう。
そんな時、彼はふと思い出した。
「もしかしたら元々の持ち主だったモンスターの特徴を引き継いでるかもしれません〜」
黒獅子の剣を受け取る際、鍛冶屋のトリーネが言っていた言葉である。ノインはそれを反芻し、理解する。
「(あいつの特徴か……なら、あれしかない!) ティナ、10秒でいい、あいつの気を引き付けてくれないか?」
「何か考えがあるみたいですわね。いいでしょう、乗ってあげますわ!」
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それは、雄々しき獅子の記憶。その技を初めて見た時、ノインは驚き、焦り、恐怖した。大木すら切り裂けそうな剛爪から放たれる、地面を抉るほどの衝撃波。それこそがノインが最も強く記憶している黒獅子の強さである。
その記憶に呼応するように、ノインの持つ黒獅子の剣は妖しく光る。
「…………いける!」
ノインは、上空のルクスバード目掛け、両手に握った黒獅子の剣を大きく振り上げた。
瞬間、剣の軌跡をなぞるように発生した黒い衝撃波がルクスバードを襲う。その一撃は、空ならば安全だろうと息巻いていた怪鳥に翼を持って産まれた事を後悔させるには十分な威力を発揮した。
全身をズタボロにされ、墜落するルクスバード。
「ティナ、とどめだ!」
「お任せなさい!」
すかさずティナが刺剣をルクスバードの首に一突き。急所を突かれ、怪鳥は静かに息絶えた。
「お疲れさん。ルクスバードの討伐を確認した。お前らはたった今から4級冒険者だ」
「よしっ!」
「まあ、当然のことですわね」
そうは言いつつも、ティナの表情は得意げであった。
「あっ……?」
力が抜けたように倒れ込むノインをティナが慌てて支える。
「〈魔素酔い〉ね。体内の魔素を急激に消費したりすると今みたいに力が抜けきってしまうわ」
「ふむふむですわ。ノイン、スキルが使えるならこの魔物の魔石、仕舞ってくださいまし」
「ああ、それくらいならできるよ」
そして、ルクスバードの魔石を仕舞った瞬間。高速で一行に飛来する何か。
いち早くその存在に気付いたリアンが魔術を使い撃ち落とす。
「何者ですか。姿を見せてください」
「今ので1人減らせれば良かったが……。まあいい、ノインってのは……、その女に支えられてる奴だな。そいつを渡せばお前らは見逃してやるよ」
そう言い、物陰から出てきたのは姿形こそ人であるが、本質的に人ではない存在だった。
青い皮膚に紅い瞳。額からは一対の角が生えている。
「俺はベンゲル=シュトラウス。人間から産まれた、魔族だ」
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