14. 格上
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「私、そろそろだと思いますの」
「そろそろって、何が?」
「アレですわ、モンスターシバいてランク上げるやつ」
「昇格試験ね!?」
大地にこだまするツッコミを入れたのは、ノイン。理不尽な解雇により危険な職である冒険者となることを余儀なくされた青年である。そして、ツッコミを入れられた側のティナ。彼女もまた冒険者であり、解雇された直後のノインを荷物持ちとして共に戦う自称元貴族である。
「そうそう、それですわ! 5級程度のモンスターなど、今の私たちにとっては敵ではありませんわ〜!」
手の甲を頬に当て、わかりやすい高笑いをするティナ。呆れた表情でノインが諌める。
「それはそうかもしれないけど、慣れ始めた頃が1番危ないってよく聞くからね? 油断は禁物だよ」
とは言いつつも、ノイン自身、冒険者として最下級である5級で燻っている場合ではないと感じていた。
以前の黒獅子討伐。実際にとどめを刺したのはノインではなかったが、その撃破に大きく貢献したのは間違いない。その経験がノインの自信に繋がっていた。
「当然、わかっておりますわ。それで、試験を受けることに対してどう考えておりますの?」
「もちろん賛成。この仕事が終わったら早速手続きに行こう」
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2週間後。事前に伝えられた集合場所には、既に監督と思われるパーティが到着していた。
「おっ、お前らが今回の受験者だな。いかにもお嬢様って感じの奴がティナで、なよっとしてるのがノイン、で合ってるか?」
「えぇ、そうですわ。以後お見知りおきを」
「よ、よろしくおねがいしますっ」
大剣を背負った長身の男は陽気に笑った。
「俺は〈紅き狩人〉リーダーのイグニス。よろしくな」
「同じく、タミトだ」
「ケルリアよ。よろしくね」
「〈舞う楓〉のアンリっ。よろしくっ!」
「妹のリアンです」
イグニスと名乗る長身の男に他の面々も続く。
「その〈紅き狩人〉とか、〈舞う楓〉というのはなんですの?」
「パーティネームさ。言ってしまえばパーティの看板みたいなもので、パーティとして名前が売れればそれだけ依頼も舞い込んでくる」
「ま、1番は区別しやすいからだねー。誰々と誰々のパーティ、とか呼びずらいじゃん?」
タミトの解説にアンリが割って入る。
「4級に上がると決めなきゃいけないから、今のうちに考えておいてもいいかもね」
「ははあ、なるほど」
そう言いながら、ケルリアは長い髪を揺らした。
「よっしゃ、それじゃ今回の討伐対象の生息地点まで移動するぞ」
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「あの、討伐対象ってどの魔物なんですか?」
「なんだ、聞かされてないのか? 今回の目標は、ルクスバードだ」
「鳥型の魔物か……。初めて戦うことになるな」
「どんなのが来ようと、私たちの敵ではありませんわ!」
「大した自信ですね。しかし、4級の魔物の戦闘能力は5級の魔物のそれとは桁違いです。精々お腹を裂かれないように気を付けてくださいね」
他の面々より背丈が2回りほど小さいためか、リアンは冒険者としては後輩にあたるノインやティナに対して態度を大きくしているようだった。
「裂かっ……!?」
「あー、ごめんね〜。リアンは照れ屋で口下手なんだよね」
「ま、心配するこたあねえよ。道中の魔物は俺達が引き受けるから、お前らはでけえ鳥に集中してればいい。ま、ヤバそうなら中止するけどな」
イグニスは力強く胸を叩く。その様にノインは頼もしさを覚え、試験に対する不安がやわらいだのを感じた。
幾度かの魔物の襲撃を退け、一行は開けた場所で休憩をとることにした。
「っし、この先をもう少し行けばルクスバードの生息域だ。少ししたら出発するからな、得物の確認をしておけよ」
「そういえばノインってば、丸腰だけどどうやって戦うの? もしかして、魔物と殴り合ったり!?」
目を輝かせながらアンリがファイティングポーズをとるが、ノインは申し訳なさそうに苦笑する。
「そんなことしないよ。その代わり、僕にはこれがある」
スキルを使い、虚空から剣を引き抜いた。すると、水分補給をしていたタミトが興味深そうに近寄ってきた。
「ほお、驚いたな。それはスキルか? 空気中の物質を変換、いやこの剣の色、元々別の場所に存在していた物を移動させるスキルと考えるのが妥当か……」
「え、ええっと?」
「ごめんなさいね。タミトは珍しいものを見るといつもこうなるのよ。まあ、彼じゃなくても興味をそそられるものではあるわね。それ、どういうスキルなの?」
自身の弓の調整をしながらノインへ問いかけるケルリア。
「剣とか魔石とか、持ってる物を自由に出し入れできるってぐらいですよ。そんな大したことじゃないと思いますけど……」
「ノインはこの私が見つけた優秀な従者でしてよ。探索で見つけた物を余すことなく持ち帰れるのは大きいですわ」
「なんにせよ、パーティメンバーを信頼しているのは良い事だ。それに、鑑定さえすりゃどんなスキルだって化けるかもしれないからな。希望は捨てたもんじゃないぜ?」
「「鑑定?」」
2人の声が重なる。そこに、ここぞと言わんばかりにリアンが割り込んできた。
「教えてあげましょう。鑑定とはスキルの正体を知ることができるスキルのことです。スキルに刻まれている名前や能力の詳細が1発でわかっちゃうのですよ」
「その代わり、1回の鑑定にかかる費用はとんでもないけどな。なんでも貴重なスキルで、鑑定スキルを持ってるヤツは一生食いっぱぐれないって聞くぜ。ま、資金に余裕があったら1回やってみるといい。とんでもねースキルかもしれないからな」
そんな鑑定に関する話を終えて、彼らは再び歩を進める。
その行く手には、まるでノインたちが来ることを分かっていたかのように、翡翠色の羽を持つ巨大な鳥が待ち構えていた。
「ようやくお出ましだな。あれが今回のお前らの相手だ」
「これが、ルクスバード……!」
「周りの魔物は気にしないで、思いっきりやっちゃってー!」
「私を見下ろすとはいい度胸ですわね。どちらが下か、思い知らせてやりますわ!」
剣を引き抜き、2人は怪鳥へ対峙した。
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