12. 報酬
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「どこと言われてもなあ……。想像もつかないや。クィンさん、おすすめの部位ってないですか?」
「そうだな……、眼球とかはどうだ?モノにもよるが、焼いて食えばかなりの美味だと思うぞ」
「んなっ!? 食べるのはちょっと、遠慮しときます……」
身近に魔物を食う人物がいた事実に驚愕したノイン。丁重に断りを入れ、ティナの言っていたことを思い出す。
「確か、モンスターの素材って武器にも出来るんだっけ?」
「モノによっては、ですが。魔物やモンスターの素材を用いた武具はいずれも強力なものが多いそうですわ」
「魔物やモンスターの爪や鱗など、体の一部を変質させ、身に付ける武具とするにはそれなりの加工技術が必要ではあるがな。もっとも、ノインにはその心配はなさそうだが」
「ん、どういう意味です?」
「ノインの剣を見れば分かる。あのレベルの剣を打てるならば、きっとあの獅子の素材さえもモノにできるだろうさ」
愛用の剣を褒められ、口もとが緩むノイン。会話の中でも思案を続けていた彼は、モンスターの屍を一通り見て、触った末に結論を出した。
「……決めた! 僕らのパーティが受け取るのはここにしよう!」
そう言い、指差したのはあの大きく発達した右腕だった。
「それはやっぱり、武器にするためっスか?」
「うん。あの人ならきっといい武器を作ってくれる気がするんだ」
「うんうん、なんかそういうのいいっスね!」
「こほん。盛り上がっているところ恐縮なんですけれど、腕丸々1本とか余裕で重量オーバーですわよ?武器にするにしてもそれだと持て余しますし、もう少しコンパクトにしてくださいませ」
やれやれとティナが諭し、ノインはベイトと揃ってわかりやすく項垂れた。
「だとしたら……、右腕の爪ぐらいは大丈夫だよね……?」
「それぐらいなら問題ないはずですわ」
不安気に訪ねたノインだったが、ティナの答えを聞き、胸をなで下ろしていた。
「そうだな、確かに問題は無いが……。その爪、1つだけでいい、我々に譲ってもらえないだろうか?」
そう割って入ったのはクィン。しかし、件のモンスターをいとも容易く仕留めてみせた彼女が、まさか武具を作るために素材を欲しているとは考えにくい。そんなノインの思考を読んだのか、クィンは話を続けた。
「無論、私的に使うわけではない。このモンスターの右腕の爪だが、左腕のソレとは大きく異なる性質みたいでな。研究のために置いておきたいそうだ」
「確かに、あの衝撃波みたいな魔術とか、そもそも巨大化した原因にも関係してそうっスもんね。出来ることなら自分も調査に参加したいところっス」
凛としたクィンに対して、にこやかに見解を述べるベイト。そして、ノインは特に拒否することもなくその申し出を受け入れた。
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「そういえば、ティナの名字って知らないな。どんなのなんだ?」
それは、特別報酬を受け取る際に必要になる書類を記入している最中の出来事だった。
パーティメンバーとしてノインとティナ、2人の名前を書かなければならないのだが、その際、ノインは以前から気になっていた事を口にしたというわけだ。
「私は没落した貴族でしてよ。名字など無いに等しいですわ。そうですわね……、貴方が荷物持ちとして私に仕え続けていれば、いずれ話して差しあげてもよろしくてよ」
そんなノインの質問に、素っ気なく返事をするティナ。ただならぬ雰囲気を感じ、それ以上の追求はしないことにした。
「帝都には色んな事情の者が流れ着いてくる。素性を明かせぬ者や、家を出た者などな。それゆえ、こういった書類も名前の他に拠点の場所を記すことで名字まで書く必要はないとしている。特にこだわりがなければ書いてくれるに越したことはないがな」
ノインが書いた書類を受け取りながら解説をするクィン。騎士団長を務めているということもあり、都の事情には詳しいのだろう。
彼女は書類を部下へ預け、別の部下から形の揃った鉱物のようなものを受け取る。
「さて、これで書類上の処理は終わった。よっ、と……。ノイン、こっちに来い」
両手で抱えられたそれは、月の光に照らされ、漆黒に輝いていた。綺麗に重ねられるほど整った形をしていても、こちらへの殺意を感じさせる。
「これが、あのモンスターの爪……!」
「さっきも言った通り、1つはこちらで。残り4つをノインとティナへの特別報酬とする。さあ、受け取れ」
ノインは恐る恐るそれらを受け取る。爪というのもあるだろうが、大きさに反してそれは軽かった。だが、両手が塞がるため、ノインはそれをスキルで仕舞うことにした。黒獅子の爪は虚空の1点を境界とするように光の粒子を散らしながら虚空へと消えていく。
「ふむ、やはり……、……か……」
その様子を見ていたクィンがぼそっと呟いたが、ノインにはうまく聞き取ることが出来なかった。
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