後輩は不機嫌かもしれない
放課後。僕は漫画研究会の部室に行った。
いたのは鈴絵。というか鈴絵以外の人がいたら部員でない人がいることになるからそれはびびる。
「あ、先輩こんにちはー」
「こんにちは」
顔を上げずに漫画を描いている鈴絵。
今日も今日とて少女漫画みたいな雰囲気の絵柄でめちゃくちゃ上手い。
基本人が描けないので動物ばかり描いている僕にとっては、どうしてそんないろんな人が描けるのか謎である。犬とか猫は描き分けは結構しやすいんだけど、人は無理でしょ。髪型くらいしか。目とかのレパートリーつくるのとかすごすぎるよなほんと。
「……先輩、そういえば、もしかしてスタンプ販売してたりします?」
「え?」
「あ、いや私が最近入れてみたんですけどそのスタンプを。絵柄が先輩の描く漫画にそっくりじゃないですか。だからそうかもなーと」
「おお、すごいな、あたりだけど」
「やはりそうでしたか。それにしても結構な人気で、すごいです」
「ね、どうやら人気らしくて。でも実際人気か全然わかんないから、今日隣の席の人にも訊いたら流行ってるらしくてね」
「……隣の席の人にきいたんですか?」
「うんうん」
「私に訊いてくれても……よかったのに」
「あー、でも、使ってるって思わなかったし。入れてくれたのが意外なくらい」
「たしかに私みたいな地味目な人は、こんなスタンプ使わないかもですね」
「いやそんなことはないよ」
「……」
あれ、怒ってるのかな……たしかに、スタンプ作ってるのも言わなかったし、なんか唯一の部員なのに、ちょっとよくなかったかな。
僕は少し反省して、それから、お菓子を出した。
「休憩するときに、どうぞ」
「じゃあ、今休憩します」
鈴絵は、作業をやめて、僕の隣に座った。
「……」
「……」
ちょっと無言めにお菓子を食べる鈴絵と僕。
「……漫画はどう?」
「……まあまあいいです」
「よかった。でもちょっと、悩んでそうな気もしたから」
「ああ……大丈夫です」
「そうか」
お菓子を食べるペースがいつもより遅くて時々僕を見てくるから、なんかいつもとちょっと違うんだけど、でも漫画のことで悩んでいることは認めてくれなかった。
漫画にかなりを費やしている人だから、きっと漫画のことだと思うのに。
僕は……どうしたら鈴絵の悩んでることに協力できるかな。