しかし、偽物は本物になれない。
そうして華々しいパーティーは終わった。
パーティーなんて最初は参加したくなかったよ?
「参加じゃない?俺が主役?あー、俺の誕生日か、忘れてた」
成人の誕生日パーティーは貴族の義務なんだとさ。
そりゃあ、最初は緊張しっぱなしだったしどうして良いか分からなかったよ。でも、いつの間にか……
慣れました!
美女たちとおしゃべり、ダンスは楽しかったです。毎週でも誕生日パーティーやろっかな〜?
めっちゃくちゃはしゃぎました。
日も暮れて薄暗い誰も居ない裏庭、余韻に浸りながら散歩する。
そんな俺は浮かれていた、気が抜けすぎていたのかもしれない。
ーードンッ
不意に衝撃が背中から体を突き抜ける、唐突に足の力が抜け地面に両膝を着いてしまった。
背から胸にかけてヒヤリとした感覚があって、目線をゆっくりと下へと向ける。
すると、俺の胸元にその違和感の元凶があった。
鋭利な金属の先が、俺の胸から突き出ていたのだ!
頭の中が真っ白になる。突然過ぎて何が起きたか理解できなかった。
「えっ?」
俺の胸にナイフが突き刺さっていた。そして、そのナイフの先が自分の意識とは関係なく勢いよく引き抜かれ、胸に大きな傷穴が空く。
心臓が脈打つたびにその傷口からドクンドクンと血が流れ出し、服はどんどん赤く染まっていく。両手を胸に当て、血が流れ出すのを止めようと試みるが止まらない。
「…なんでこんな……」
全身の力が抜けてそのまま勢いよく前方へ倒れてしまった。
何故こうなったのか訳がわからなかった。
事実を確認しようと、力を振り絞り体を捻って後ろを見た。
するとそこにいたのは俺のよく知った顔だった。
俺の偽物、否、影武者だった。
俺と見た目が瓜二つの双子の弟。こいつはここにいるはずが無い。
酔いなど覚める驚きとショックからか、傷みはほとんど感じていなかった。
「お前は生きていてはいけないんだ、今日から俺がお前になる」
貴族の世界では長男が全て、次男以降はゴミ扱いされることも珍しく無かった。
責任、重圧、苦痛、俺は嫌なことから逃げた。
見かけは同じだから、全てをこいつに押し付け、良いことだけは全て俺が頂いていた。
「そうか…さすがに、命を狙うとは…思ってなかった…な…」
今日、偽物は本物に生まれ代わる。
今日は双子の弟も誕生日だった。
本物ってなんだろう
偽物だったら本物になりたいよね
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