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カイリ、世界の厳しさに直面する

 甘々異世界?

 そんなばぁかな!


 村を出れば何かが変わる。

 自由記述に平穏な村は望んだが、外はその限りではない。

 そう信じていました。

 訓練は家の周りか、森の中。

 魔物は見かけるものの、とても弱く子供にも脅えて逃げるレベル。

 たまに村に来るのは、頭が弱いと有名なゴブリンのみ。

 村を出たところで変化はなく、がっかりしていたのは森まで。

 現実は辛く厳しいものなのです。


 行商人さんと中継地点の村で1泊。

 村には貨幣があまりなく、持たされたのは銀貨5枚と入学のための金額10枚。

 あくまで行商人から聞いた情報であり、正しいとは限らない。

 これも行商人の醸し出す雰囲気が悪い。

 森を過ぎた途端、一切私に目を向けない。

 御者台から動くことを許されず、荷物には目線を向けるだけで舌打ちをする。

 これは明らかに様子がおかしい。

 スフォリア様は森の中では悪性を捨てるように世界を作り変えてしまったのだろうか。

 そう仮定すると、悪性が強い者程森を出てからのイメージの乖離が酷くなり、この行商人こそ見本というわけだ。

 願わくば村人が森から出ないことを祈ろう。

 良い思い出はそのままにしておきたい。

 とりあえず家族の心配はこの辺にして、今は自分の身を案じるところか。

 宿代は70クル、銅貨にして70枚。

 1クルが銅貨1枚ということだ。

 銅貨がそもそもどのような価値か分からないが、数字だけ見れば安く思える。

 が、銅貨は100枚で銀貨1枚になる。

 私が今自由にできるのは銅貨にして500枚。

 この宿が宿屋の平均とした時、6泊すると銅貨420枚。

 この宿が割安だとすると、王都に着く前に手持ちがなくなってしまう。

 行商人は私に何も告げずさっさと宿に入ってしまい、全て自分でなんとかしろと暗に言っている。

 この分では明日も乗せてくれるとは限らないだろう。

 1つ目の村から一人で行動する必要が出てきたわけだ。

 外は夕方、まだ進むべきだろう。

 私はたまたま通りがかった人に馬車の有無を尋ね、ついでに運賃の相場を聞いた。

 その相場から鑑みて、1日足らずの運賃なら銅貨50枚でいいだろうと当たりをつけ、布にくるんで馬の首にぶら下げておいた。

 明日の朝には気付くだろう。

 

 正直なところ、チートなスキルを借りているおかげで、ぶっつけ本番でなんでもできると言える程には物覚えがいい。

 飛行ないし空を歩くくらいは、少し練習すればできるようになるだろう。

 高速戦闘を想定して、空を歩く方を目指して練習を始めた。

 空を歩くという行為は、厳密には間違っている。

 様々なパターンがあるが、現実的なのは空中に魔力で足場を作る、結界を足場にするの2パターンだろう。

 結界を足場にするのもロマンがあるが、効率を考えれば魔力を直接足場にした方が早い。

 【魔力操作】によって足から魔力を出して固定など造作もない。

 まずは足に纏わせたまま地を蹴る。

 すると普通に歩くよりも感覚が薄くなっている。

 しかし速度に変化はなく、距離も変わらない。

 これは足に魔力を纏うだけで、外的要素は生まれていないとわかった。

 ならば足から出した魔力を、【魔力操作】によって踏み出す先に固定する方法だ。

 足に纏えばブーツのような、鎧のような感じになった。

 つまりは半物質化ということだ。

 それなら空中に固定さえできれば足場として成立する。

 これは固定先のイメージをしっかりさせれば特に問題はなく、スキルなしの魔力操作でも安定するまで1時間とかからなかった。

 これを用いて空に立ち、【身体強化】をスキル無しで発動させると、思い切り走り始めた。

 どちらも技術として発動させることで、訓練としているわけだ。

 魔力を使うことで上限も増えるし、やらない手はない。

 ちなみに使うだけで上限は増える。

 使い切れば上がり幅が大きいが、回復に時間がかかる。

 そのため持続的に魔力を使うようにしている。

 今では【知性】を大幅に上回る値を出している。

 まだまだ物足りないので継続していくつもりだ。

 

 走り出して3時間くらいか。

 日は沈み、夜空を舞う魔物はいない。

 運良く鳥型の魔物やドラゴンなどはいないらしい。

 この時間だ、どこかの村に入るのも難しそうだ。

 ここは洞窟を見つけて秘密基地でも作った方がいいかもしれない。

 サバイバルも異世界なら必要だろうと、手頃な場所を探すため、【暗視】を技術として発動させる。

 これは魔力を使って採光する方法である。

 魔力は言ってしまえば万能素材である。

 うまく性質を変えることができれば、このようなことも容易であり、それをさらに容易にさせたのがスキルとなる。

 これは夜中に訓練するために村で覚えたものである。

 とっくに訓練も終わり、技術として昇華させてある。

 もはやスキルよりも効率がいい。

 これにより昼間に近い明るさで周りが見え、すぐに天然の洞窟が残る岩山を見つけ、簡易拠点に改良した。

 土の魔法で洞窟の凸凹した内部を平らに作り替え、壁紙の代わりにちょっとした彫刻をしておいた。

 この魔法は土の初級魔法、【クリエイトストーン】の応用である。

 やっている規模が大きく、作業が細かいだけで、特に難しい技術ではない。

 初級であって魔力消費も少なく、いくらでも使える。

 洞窟はそこまで深くなく、簡易的なリフォームを終えたら、周りの木を少し伐採させてもらい、必要な家具を自作した。

 その過程で特殊属性として木魔法を入手してしまった。

 便利になっていく自分に思わず笑みがこぼれる。

 さすがに布団は作れず、【空間魔法】で作っていた亜空間庫から布団を取り出す。

 やはり王道であるアイテムボックは早々に自作してある。

 が、さすがにゲームのように一覧が出たりすることは無い。

 しかしゲームと違い、中に入って確認することができる。

 時の魔法で時間を停めれば、こちらの方が便利だろう。

 ここにはできる限りの物を詰め込んである。

 と言っても村で作れた物に限られるため、まだまだ大したことは無い。

 今回は布団が役に立った、それだけだ。

 

 今日の宿を整えると、私はすぐに眠りに落ちた。

 目指せオールラウンダー。

 器用貧乏を突破して、万能へ。

 まだまだ先の話。

 今は器用貧乏なカイリ君である。

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