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色物ギルドの敏腕メイド  作者: 一期崎 レン
3/6

「流れ者の宴会」

左肩やりました(^▽^)/

 気持ちの良い昼下がり。この分だと洗濯物はすぐに乾きそうだ。

私はギルド「トランプ・バンケット」に勤める「戦闘(バトル)メイド」の「ユイ」。

出自不明、誰の子でどこから来たのかもわからなかった私は気づいたらここのギルドに拾われていた。


魔王とまりおはお昼寝だ。ギルドマスターの勇者「アリス」は学院の定期試験だし、残りの方たちはダンジョンだ。

今日の夕飯はなんにしようか。うちのギルドにちょっかいかけてくる輩は少ないので「戦闘(バトル)メイド」といっても平和な毎日を過ごしている。


食堂の食卓に「魔王様へ 冷蔵庫にぷりんが入っています。おやつにどうぞ。 メイド」とメモを残して買い出しに出る。


ここは王都「ルシオール」。「る」ではじまって「る」で終わるのでしりとりゲームに強いと人気の都市だ。

強いのはしりとりゲームだけではない。王都全周を囲む「防壁」は特殊鉱石で作られたものに盾王「アスラン」が加護をさずけたものでここ800年傷一つついていない。


剣王「ルイ」と盾王「アスラン」は800年前に「魔神」との戦いで共闘したことがあり、それはそれは強かったそうだ。ルイからしてみればいい友人だったそうで時折墓に赴いては涙を流しているらしい。


そんな英雄たちによって守られてきたこの王都は世界随意一の流通都市で、国内の品はもちろん、近くの「ルシオール港」で取引される各国の貿易品が市場を彩っている。


「お!ユイちゃんいらっしゃい!今日はいい魚が入ってるよ!」

「こんにちはおじさん、ん?...見たことのない魚ですね。」

「お!さすがはユイちゃん目の付け所がちがうねえ!そいつはシイラだよ!」

「シイラ?」


安くしてもらったのでシイラの切り身を人数分買った。白身魚らしいので今晩はこれでムニエルでも作るとしよう。


付け合わせの野菜を買いに行こうと市場を歩いていると、「ずしん」という、かすかだが重い揺れを感じた。

...嫌な予感がする。


と、次の瞬間目の前に魔王とまりおが転移魔法で現れる。


「魔王様、まりお様、いかがなさいましたか?」

「きんきゅうじたいじゃ、めいど、ついてこい。」


ーー同刻、ギルド連合会館ーー


「冒険者の皆様に緊急クエストです!”数え切れないほど”の火竜が、ここ、王都めがけて侵攻中とのことです!」


ざわつくギルド連合会館...


「可及的速やかに火竜を討伐してください!」


ーー同刻、「防壁」上部ーー


「王都全天防御魔導兵器『ノア・アーク』展開します!」


城壁の端々から光の盾が王都上空に向かって作られていく。


「火竜一匹王都に入れてしまえば一万人死ぬと思え!『ノア・アーク』がある限り、空からは侵攻できない!城門を絶対死守せよ!」


ーー同刻、王城内作戦指揮室ーー


「火竜の体躯では侵入可能な城門は限られていますが、四方位に付けられた大門がそれにあたります。」


軍師は冷静に続ける。


「火竜たちは北方からやって来ております。なので王国軍の半分を西門。もう半分を東門の防御に当たらせます。」

「そ、それでは一番敵の多い北門はどうなるのですか??」

「ご安心ください、陛下。”彼ら”が必ず守ってくれます。」

「彼...ら?」

「それまでの時間稼ぎはギルド連合に任せましょう。」


ーー同刻、王都北門ーー


北門の周りには、王都中の冒険者が集まっていた。


「な、なんだあの数はああああ!!!???」

「ギルド連合会館の姉ちゃんが”数え切れない”っていってたけどありゃ数えようがねえぞ!?」


遠くの空を覆いつくす黒い影、火竜である。


冒険者たちの表情が絶望に染まる。


「くそっ…」

「来るぞ!魔導士たちは詠唱をはじめろ!!」




ーーーーーー戦闘が始まった。


火竜の翼の膜を破壊することで飛行能力を奪うことができる。


いくら火竜といえど、翼の膜はそれほど硬くない。


空から火炎を浴びせられればたちまち防衛線は崩れてしまうだろう。


冒険者たちは飛ぶ火竜の飛行能力を奪い、それにひるんだ隙に魔剣使いたちが地上でとどめを刺す。


火竜が一匹なら容易くたおせただろう。しかし数が数だ。


冒険者たちは、一人、また一人と傷つき倒れる。一方で、火竜の頭数は減る気配がない。


と、その時、蒼い不死鳥の旗を掲げた一団がやってきた


「王国正規ギルド!「火鳥の軍(ファイアバードアレイ)」だ!」

「やっと来やがったかくそったれギルド!」


冒険者たちの間から歓声が上がる。

火鳥の軍(ファイアバードアレイ)」と呼ばれたその集団は王国軍の精鋭機動部隊。東方に遠征に行っていたらしいのだが防衛のために急遽戻ってきたようだ。


蒼い不死鳥たちを率いるのは銀髪の少女。


その少女の突破力はすさまじく、剣を一振りすれば一匹倒れるといったようすだ。


うわさに聞く「神剣使い」だろう。


押され気味だった戦局は拮抗状態まで持ち直したようだ。


しかしそれでもなお火竜の数が減る気配がない。


「王国精鋭部隊でもダメなのか…!」


戦場のだれもが疲弊してきたその時


「どっっっっかあああああああああああああああああああああああん!!!」


鼓膜が破れるかと思うような大声とともに戦場に舞い降りたその黄金の少女の眩い一撃が、火竜の戦列に大穴を穿つ。


「やっちゃええええええ!」


少女の叫び声と共に飛び出した3つの黒い影が更にその周囲の火竜を蹴散らす。


「もういっちょおおおおお!」


次の瞬間。まるで魔王でもいるんじゃないかと思うようなあまりにも強力すぎる闇魔法がはなたれ、火竜たちの半分が蒸発。

続いて傷ついた冒険者陣営に癒しの聖属性魔法がかけられる。


何者かが狙撃していたのだろうか、空を飛んでいた火竜たちは翼膜に大穴をあけられて全て撃ち落されていた。


「だ、誰だ!!??」


濛々と立ち込める土煙が晴れるとそのめちゃくちゃな集団が姿を現す。


ーーーそのもの達。わずか7人と1匹。


「ト、流れ者の宴会(トランプ・バンケット)!!!」


「もきゅ!」


ーーー王国最強のギルドである。

今回の訓示

「白身魚はムニエルにしとけ」

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