隣の席の|撞木《しゅもく》君は寝相が悪い
私の名前は馬酔木野万、13歳の中学一年生!
隣の席の撞木君は放課の度に机で居眠りを始めるような男子で、授業が始まるといつも周りの誰かに起こされるちょっとした要注意人物だ。
今日も今日とて居眠りしてる撞木君。
彼は今、鼾をかいている。
普段、彼を起こしてるメンバーもこんな時は誰も彼を起こそうとしない。
撞木君を挟んで反対側にいる呪さんも撞木君の後ろの煮海君も、そして撞木君の前の普通さんも彼を起こそうとしない、三人揃って起こして欲しそうにこちらに視線を送っている。
彼が鼾をかく時、それは彼の寝相が酷い時だ。
そういう時は私が撞木君を起こしてる。
そして三人の事を悪く言わないでほしい、私だって普段は撞木君を起こさないんだ。
だからこれはお互い様、誰も悪くない、悪いとしたら授業が始まる前に起きない撞木君だろうし、撞木君だって何か理由があって放課を睡眠時間に充ててるのかもしれないし。
でもってそれは起こさない理由にはならない。
放っておいて連帯責任で先生に内申下げられたら嫌だしね。
まずは起こす為にも現状確認から。
まず彼は机の上で直立したまま寝ている、それも上下逆さまにだ。
普通の人ならこの時点でドン引きだけど彼の寝相の悪さはこれだけじゃ済まない。
何故か彼の体が机の天板から生えているのだ。
言い換えれば首から先が天板を突き抜けている、それでいて机の中をスマホのライトで照らしてもその中は空っぽだ。
今、鼾をかいてる筈の彼の頭はどこに行ったんだろう?
全くの謎だ、流石に三人もこの状態の彼を揺すったりして起こすのは躊躇したのだろう。
確か昔の映画で似たようなシーンがあったな。
なるほど彼は迷探偵の子孫なんだな!?
僕に任しとけ、事件は迷宮入りだ!ってね。
…彼に事件の解決を任せるのはやめとこう、迷宮入りはダメだからね。
さて、たしか前回私が起こした時は机の上でプカプカ浮かびながら体を丸めてクルクル回りつつミラーボールみたいに光を乱反射させてたっけ。
あの時も酷い寝相だと思ったけど今回に比べたら大人しい方だったんだね!
しかも起こした後にその事を注意したら『何か見間違えたんじゃない?』って可哀想な人を見る目で言われたし…。
思い出すのは止そう、気分が悪くなるだけだしね…。
前回みたいに言われるのは嫌だから三人に目配せと身振り手振りで録画を頼む。
今回は三人にも巻き込まれてもらうわよ〜。
私はヌュブブと暗くくぐもった笑いをあげながら三人がスマホを構えて録画を開始したのを確認。
この録画でどんな吠え面かくのか、今から楽しみでたまらないわ。
さて、準備は整った訳だし起こすとしましょうか。
で、448字〜496字ぐらい前にも言ったように揺さぶったりするのは無しだ、ナニがとは言わないけどホラーやスプラッタ系の作品みたいにポロっといったら嫌だ。
噴水もロケット噴射もノーセンキューだ、カートゥーン系のロケット飛行なら汚れないからアリかな?
となると定番の大声で起こすとしましょうか。
まず一旦息をしっかり吐いてから大きく息を吸い込んで…。
「起きろ!」




