表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

隠されたものたち、スピンアウト版(つつかれた右肩)

作者: 千代三郎丸

僕は、何想うこと無く、一人で歩いている。


頭が、ボーっとして、目的がはっきりとしない。ただのジョギング中なのだろうか。道幅は3,4メートル程、左右をブロック壁に挟まれ、真っ直ぐな路地だ。


灯りが途中で途絶え、暗闇へと向かっていることに気が付いた。そこに引き込まれそうだ。


次第に遠近感も消え失せ、ついに何も見えなくなった。自分の足下、腕さえもわからない。急に道に迷ったかなと考えた。怖くて、もと来た道を戻りたいとも思った。


そんな時、


〈つんつん〉


ふと、後ろから右の肩をつつかれる感じを受けた。一本の指先で押されては引かれる感触だ。それが、2,3度続いた。


「誰だよ!」


と、声を出して振り返ると、ベッドの上で目を覚ました。


(あぁ、夢だった)


そこから見えるリビングの床は、ダウンライトの明かりで、オレンジ色に照らされていた。壁掛け時計が垣間見えた。朝の4時。


しばらく、寝れなかった。


7時を過ぎ、朝食中の娘、理沙(りさ)()いても、


『知らない』、『「もう朝!」って起こす時間じゃないわ』と、素っ気ない返事だ。


確かに、もう1,2時間は寝れる時間帯だった。


________________


その夜、おばの麗子さんが亡くなった。母のお姉さんだ。


携帯電話番号のSNSメールで、従妹(いとこ)から連絡があった。体の調子が悪いと聞いていたが、こんな急とは。


息を引き取ったのは午後の5時頃、夕方だと。


(自分の最後、『あの世に向かう直前に、尋ねたら何でも答えてやる!』と、豪語していたのに)


と、幼児みたいに、ぐずった矢先、身震いが起きた。


ハッ。


(あの夢。もしや、虫の知らせ?)


だが、夢は早朝だ。夕方5時との間は、短針が一回りの12時間以上も。


時間差がありすぎる。


(もしかして、危篤(きとく)であることを、僕に知らせようと)


実のところ、娘の悪戯(いたずら)だったのかもしれない。僕は、確か左肩を下に、右を上にして横になっていた。後ろから指先で突こうとしたら、簡単にできる格好だ。


いや、違う。おばが、この状態に気が付いてくれと、つついてきたのかもしれない。


麗子おばさん、他界した母以上に、僕を褒めたり怒ったりする時も。


『あんたは、私が腹を痛めて産んだ子だよ!』


そう伝えたかったのだろうか。


そんな風に考えると、涙がこぼれ落ちそうに。


了。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ