女湯潜入作戦
「で、あの子達はつれてかねえのか?」
妖精の隠れ家出る際に見送りに来た何人もの子供たち。彼ら彼女らを連れて共同浴場に行くのではと思っていたマースルにとっては、あっさりと手を振り別れたユーリの行動は意外であった。そう、風呂場であれば堂々と覗くことが出来るのだから。
「必要な援助はするけど過分な施しはしないわよ。井戸で水を汲んで身体を拭いて清潔にする……孤児院を出ればそれが当たり前だからね」
「考えては居るんだな」
「えぇ。それにそれ用の井戸は三階から……んんっ、何でも無いわ」
感心しようとした所でオチをつけるユーリから目を逸らし、先から大人しいと肩に担ぐエルへと視線を送れば、ふんふんっと鼻を鳴らしながら露店の料理をチェックしているのに気づく。食い気は良いがそんなに食えないだろうと思いつつも、一口食っては自分へと残りを渡すような行動に出るような気がして、思わず苦笑する。
「途中で残したりしたら買ってやらねえぞ」
「っ!?」
びくんっと反応したきり見るからに動きの鈍るエルを担ぎながら、マースルは静かに笑っていた。
□■□
公衆浴場。
多量の水、そしてそれを沸かすための火。そして汚水の処理。インフラの発達していない世界では維持に多大なコストのかかるものであるが、この世界では違う。魔物を狩って集まる魔石、そこから加工された火石は、使い捨てとはいえ集めればゴブリン程度のものでも大量の水を沸騰させるだけのエネルギーを生む。それを持ち湯を沸かし、残り湯は水石で浄化して循環させる。当然、無料とは言えないが、一般家庭の家族がたまに贅沢で通える程度のコストまでには費用を下げることが出来ていたのである。
「ふぅ、風呂も久しぶりだな」
そして妖精の隠れ家からほど近い公衆浴場。そこは職人や冒険者などの利用の多い武骨な建物の浴場ではあったが、お上品な風呂などに興味のないマースルは煙突から湯気を上げる建物を満足そうに見上げ頷いている。
「ふろー」
「って、そっちは男湯だ馬鹿っ」
と、気の緩んだマースルから簀巻きのまま飛び降り、とててっと器用に男湯の入り口へと走り始めたエルの首根っこをマースルは慌て捕まえる。
「お前はあっちの女湯だ」
「んー……おぉっ!!あの文字?が男って読むのか」
「そうよ。ペド野郎と一緒は危ないから、エルちゃんは私と行きましょうねー」
マースルからユーリへと子猫でも運ぶように渡されたエルは、しばし難しい顔で扉の文字を眺めていたが、微妙に理解を放棄した笑みを浮かべてユーリに運ばれるがままに女湯の扉を潜る。
「おーおぉ?」
たどり着く先は女の園……ではあるが、エルの期待するそれとは趣が違っていた。
利用者は少なく、服を脱いでいるもの、風呂上りか裸でくつろいでいるもの、何人かの女性が見えるが、彼女らは総じて『太かった』。筋肉か脂肪か、どちらかをたっぷりとその身に乗せ、そして筋肉質ながらスタイルの良い女性も、身体中に傷痕を浮かべているとなれば、男子学生で『あった』エルが期待する光景とは色々と違っていた。
「さ、こっちよ」
そもそもがエルフ幼女の身体となってから性欲は消え失せている。それでもロマンを求めて動いていたつもりだが、まあ色々とどうでもよくなったと嘆息しかけたところで、『ぶるんっ』と目の前で白いものが揺れた。
「おおおおおおおおおおおおっ」
「はい、脱ぎましょうねー」
目の前で震える美しいそれを見ている間に、するりとマントを剥かれてしまう。その神秘に目を奪われるエルは、その持ち主がどんな顔をしているかと見ることは無く、抱きかかえられて洗い場へと運ばれてしまう。そしてそのまま頭と身体を洗われ綺麗になるまでエルは混乱したままで、排水に混じり赤い水が流れていくことにも、全く気にすることは無かったのである。
汚れくすんでいたその肌を、隅から隅までぴかぴかに磨き上げられるまで……




