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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第4章:夜空に舞う銀箔蝶
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先走る者達

前回のあらすじ

 冒険者達の食料を盗んだのは、ハーフビーストという種族の少年2人だった。

その内の1人が隠密スキルを所持してたため、悪用される事を危惧したアイリによって保護された。

トーマスとジェリーという兄弟(トーマスが兄)をアイリーンで生活させる事にしたアイリは、2人をリヴァイに任せて再び湖へと舞い戻るのだが、そこでは何故かザードとホークが模擬戦を行っていた。

 そしてザードの斬撃により打ち上げられたホークは、そのまま湖に落下するが、その時の影響で湖底から神殿のような建物が姿を現したのだった。

 


 突如として現れた神殿のような建物に、冒険者達は色めき立つ。

冒険者の多くは未知なる場所の探索や、未発見の魔物なりマジックアイテムなりに多大な興味を示す者達だ。

 そんな彼等の目の前に現れたダンジョンは、各々の探求心を刺激するには充分過ぎる程の効果をもたらした。


「こ、こうしちゃいられねぇ。早く探索する準備をするぞ!」

「そ、そうだ、こりゃ大発見だ!」

「ああくそ! 抜け駆けさせてたまるか! 俺らもすぐに支度するぞ!」

「ちょ、待って下さいよアニキィ!」


 最早、銀箔蝶(ぎんぱくちょう)の事は頭からすっかり抜け落ちてしまったらしく、皆(こぞ)って未知の建造物へと足を踏み入れて行く。

その場に残されたのは、見張りと食事番を任された冒険者だけだ。

 しかし、一方で流されずに冷静に見届けてる者達も存在した。


「よかったんですかい姉御? 奴等の認識じゃ早い者勝ちってやつで、見つけた物は全部取られちまいやすぜ? なんなら俺が行って、全員蹴散らして来やすが」


 つくづく物騒な事を言うモフモフね……。


「ありがとう。その気持ちだけで充分だから、冒険者達は放って置いていいわ」


 別にお金に困ってる訳じゃないし、アイテム類は取られても問題ない。

それよりも気にしなきゃならないのは、この神殿モドキがダンジョンだという事よ。

私もこのダンジョンに入るつもりだけど、可能なら出来るだけ多くの情報を仕入れてからにしたい。


「皆さーん!」


 1人で思案してると、湖の様子を(うかが)ってたマンシーさんとマルティネスさんが戻って来た。



「他の冒険者は神殿に入って行きましたが、私達はどうすべきだと思います?」


 一応テントの場所を共同で使ってる事もあってか、マンシーさんが尋ねてきた。

私としては()()動きたくないので、エレムラブの皆さんが行きたいなら行っても構わないんだけども。


「お任せします。私とモフモフは、あの少年達を知り合いに託してから戻って来たばかりなので、暫く休んでますね」


 最もらしい理由をつけて、この場に留まると伝えた。

まぁ、()()動けないけど、どのみち()()()()事になるんだけどね。


「成る程……ではアイリさん、我々も神殿の中に行きたいと思います。もしかしたら銀箔蝶と何らかの関係が有る可能性もありますし」


 ああそっか! 銀箔蝶も絡んでる可能性は充分にあるわね。

マンシーさんに言われて気付いたわ。

 それなら念のためにホークとザードを同行させてあげましょう。

中がどれだけ危険か分からないんだし、折角知り合った人達が死ぬのは嫌だものね。

 そんな訳で、私とモフモフが留守番をする事になり、エレムラブの4人と眷族2人を送り出した。


「しかし姉御、何故姉御が同行しなかったので? さすがに姉御に太刀打ち出来る魔物がそうそう居るたぁ思えねぇんですが……」


「ああそれね。今アイカに頼んで、ダンジョン通信に情報を流してるのよ。何か知ってるダンマスが居るかも知れないしね」


 あ、情報と言えば、画像も添付した方がいいわね。


「モフモフ、あの神殿ダンジョンを写メってくるから、ここに居てちょうだい」


「分かりやしたぜ!」


 極力ダンジョンに近付いて、見映えのいい画像を送っとこう。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 不特定多数のダンジョンマスターとの交流を可能にしたシステム、その名もダンジョン通信。

 今日も今日とて暇潰しに使用してる者、または交流を主目的としてる者達が思い思いの集い(スレッド)に集まっていた。


豪血 共存を望む者達

『平和だなぁ。平和過ぎて体が鈍ってきそうだ……』


マリオン 共存を望む者達

『体くらいコアルームでも動かせるでしょ』


ロムネック 共存を望む者達

『まぁ待て。コアルームではしゃぎ過ぎて、ダンジョンコアを傷物にするのは避けたいという気持ちはよく分かるぞ!』


((経験者だな(ね)))


豪血 共存を望む者達

『実際問題、身体を動かすのはいいんだが、面白い話でも聞きながらにしたいもんだな』


ロムネック 共存を望む者達

『面白い話ねぇ……そう簡単に面白い話が出てくるとは……』


千手(せんじゅ) 共存を望む者達

『有るんだなこれが!』


豪血 共存を望む者達

『うお!? お前、いつから居たんだ!?』


千手 共存を望む者達

『たった今だぜ。それよりもお前ら、アレクシス王国とミリオネック商業連合国に挟まってる大草原によ、ダンジョンが発見されたらしいぜ!』


マリオン 共存を望む者達

『大草原って確か……ヨム族が住んでる所よね?』


千手 共存を望む者達

『おう、それそれ。正確にはそこにある湖なんだけどよ、()()()()()が湖底からダンジョンを見つけたんだってよ!』


ロムネック 共存を望む者達

『へぇ……。で、誰のダンジョンなんだ?』


千手 共存を望む者達

『それが誰のダンジョンか分かんねぇのさ。なんせ誰も名乗り出ないし、誰に聞いても分からねぇんだからな。気になるなら未確認ダンジョンの集いを覗いてみ。画像も添付されてるからよ』


豪血 共存を望む者達

『誰も名乗り出ないというのは気になるな。ちょいと見てみるか』


マリオン 共存を望む者達

『そうね。もしかしたらダンマスの誰かが死亡してるのかも知れないし、私も確認してみようかしら』


ロムネック 共存を望む者達

『ところでお前さん、アイリというのは、お前さんの恋人か何かか?』


千手 共存を望む者達

『お、何々そう見える? 見えちゃう? いやぁそっかそっか、照れますなぁ!』


ロムネック 共存を望む者達

『いや、そうじゃなくて、お前さんさっき自分で()()()()()って言ってただろう?』


千手 共存を望む者達

『…………そうだっけ?』


ロムネック 共存を望む者達

『自分で確かめてみろ。ログに残ってるんだしな』


千手 共存を望む者達

『…………やべ、マジだった。本人に見つかったらヤベェじゃん! どうすんだよ!?』


ロムネック 共存を望む者達

『いや、俺は知らんぞ。というかその様子だと、恋人って訳じゃなさそうだな。片想いなのか?』


千手 共存を望む者達

『片想い……いや、きっと俺の強さを見せつければ、両想いになる筈だ。まぁ一目惚れってやつなんだが、あのついつい抱き締めたくなる華奢(きゃしゃ)な体つきは、保護欲をそそるぜ!』


ロムネック 共存を望む者達

『お前さん、もしかしたらわざとやってるのかも知れんが、その発言もログに残るんだぞ?』


千手 共存を望む者達

『…………しまったぁぁぁぁっ! ヤベェじゃん! もうマジヤベェじゃんか!』


ロムネック 共存を望む者達

『騒がしい奴だな……』



 また、別の集いでも未確認ダンジョンが話題に上がっていた。



ヘクサー アレクシス王国

『あの湖にダンジョンか……誰かあの辺に居た奴知らないか?』


ガイ アレクシス王国

『いや、知らないなぁ……。だいたい誰も名乗り出ないって事は、そこのダンジョンマスターが死亡してる可能性大だ』


ロック アレクシス王国

『いや、もしかしたら名乗らずに沈黙してるのかも知れんぞ? 防衛上の点もあるしな』


トミー アレクシス王国

『それはないな』


ロック アレクシス王国

『……何故言い切れる?』


トミー アレクシス王国

『情報提供者であるアイリの話だと、今の時期は銀箔蝶って言う珍しい蝶を捕獲するために、冒険者が大勢居たらしいぜ? その大半が、新たなダンジョンを探索しに潜ってるそうだ。つまり、急遽冒険者の対応を迫られた分、援助を申し出ないとならなくなると見れば、沈黙する理由はないってこった』


ロック アレクシス王国

『成る程な……』


キャメル アレクシス王国

『それだけじゃないわ。そのダンジョンが存在する位置は、西にラーツガルフ、東にミリオネック、南にアレクシスの3つの国に挟まれた場所よ。広大な領土を数の少ないヨム族が管理してるのに、ダンジョン管理をさせるのは不可能となれば……』


ガイ アレクシス王国

『火種になる可能性が有る……か』


ヘクサー アレクシス王国

『幸いなのは、アレクシス王国が後継者争いの後始末が残ってるのと、ミリオネック連合は侵攻してきたプラーガ帝国を迎撃してるから、今ならラーツガルフ魔王国だけが介入するだけで済むかもしれないって事だな』


トミー アレクシス王国

『だがそれは、ダンジョンが()()()()()の話だ。もしダンマスが死んでたなら、どこも介入しないだろう』


キャメル アレクシス王国

『いずれにしろ、第一発見者のアイリにキッチリと調査してもらいましょう。まったく、次から次へと厄介事を持ってくるんだから……』


ロック アレクシス王国

『その言い方だと、トラブルメーカーのように聴こえるが?』


キャメル アレクシス王国

『トラブルメーカーのようにじゃなくて、トラブルメーカーなのよ実際に! アイリのせいで休み返上で仕事する羽目になったんだから!』


ガイ アレクシス王国

『そいつはまぁ……御愁傷様だな……』


キャメル アレクシス王国

『だいたいアイツは計画性も無しに……』


ヘクサー アレクシス王国

『……おい、なんか愚痴りだしたぞ?』


ロック アレクシス王国

『そっとしといてやれ。色々と思うところが有るんだろうさ』


トミー アレクシス王国

『こうなると長いんだよなぁコイツ……』



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



『という訳でして、大した情報は得られませんでした……』


 うーーん、少しは知ってるダンマスが居てもよさそうなのにねぇ……。

でもお陰で知ってるダンマスがほぼ居ないって事が分かったわ。

つまりこれは……、


『ありがと、アイカ。ここのダンマスは、外部との接触を意図的に遮断してたようね。湖底に沈んでたのは、外からの侵入を防いでたという事。そしてダンジョン通信を使用した情報のやり取りを行わずに沈黙する事で、他のダンマスにも知られる事がないようにした……』


『しかしお姉様、そのような事を行うメリットが、まったく見当たらないのですが……』


 確かにアイカの言う通りね。

ここのダンマスの考えが理解出来ないわ。

けれど、黙ってても分かんないし、危険を承知の上で入るしかない。


『あ、因みにですが、キャメル様から伝言が届いてますよ』


『キャメルさんから?』


 何だろ? ダンジョンの事で知ってる事があるなら、すぐに教えてもらいたいんだけど。


『また厄介事を掘り起こして……。責任もって調べて来なさい! ……との事です』


 よく分かんないけど、ご立腹のようで……。


『何だかんだとキャメル様に事後処理を押し付けちゃいましたからね、あの後は大変だったそうです』


 ……ああ、アレクシス王国の騒乱の事ね。

 でもあれは私のせいじゃないし、寧ろ貢献者だと思うんだけど……。


『それから関係ない事かもしれませんが、お姉様がキャメル様の隠し子だと言う噂が、キャメル様の周辺で流れてるらしいです』


「ブッフーーーーーッ!」


 思わず飲んでた水を吹き出しちゃったじゃないの!

誰よ、そんな噂を流してる奴は!

 そりゃキャメルさんも怒るわ……。

というか、その隠し子説が、キャメルさんを一番刺激してるんじゃないだろうか……。


 よし、決めた! 暫くはキャメルさんに近寄らないようにしよう。

でもって、忘れた頃にでもひょっこり顔を出すようにすればOKね。


「ねぇ、モフモフなら他人から聞かされた話は、どのくらい経ったら忘れる?」


「へい姉御。自分なら明日にでも忘れる事は出来ますんであまり参考にはならねぇでしょうが、クロの奴が言うには、人の噂も49日って言うらしいですぜ? 1ヶ月半も有れば大丈夫じゃないですかい?」


 49日……あれ? そうだっけ? 何か違うような気もするんだけど……まぁいいや。

少し前から噂が流れてる事を加味して、1ヶ月も経てば大丈夫そうね。

 そうと決まれば、さっそく私もダンジョンに潜ろうかな。

悪いけど、モフモフは留守番ね。


『おーーい、アイリはーーん。今宜しいでっか?』


 考えが纏まったところで、ホークからの念話が届いた。

ダンジョンで何か発見したのかも。


『大丈夫よ。それより何か見つけたの?』


『見つけたっちゅうか、見つけてしまったっちゅうか……まぁ難しいとこやなぁ』


 ……どうにもハッキリしないわね。

 それなら直接現場に向かって、確めた方が早いかもしれない。


『今どの辺りに居るの?』


『お、アイリはんが来るんやな? ほなワイが入口まで戻るさかい、そこで合流しようや』


 いよいよ湖底ダンジョン(私が命名)に入るけど、何が待ち構えてるのかしらね。


アイリ「モフモフ、留守番お願いね」

モフモフ「へい。無断でテントに入り込んで来た輩は、生かして帰しやせんぜ!」

アイリ「いやいや、殺さなくていいから!」

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