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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第4章:夜空に舞う銀箔蝶
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教育的な保護

前回のあらすじ

 銀箔蝶が出現すると言われてる湖にやって来たアイリ達。

そこで出会った【エレムラブ】という冒険者パーティと一緒に銀箔蝶の出現を待った。

 しかし、数日間張り込んでいたところに食料の盗難が相次ぎ発生するのだが、モフモフの活躍により犯人を捕まえる事に成功した。


 トーマスとジェリーを連れてアイリーンに転移した私は、すぐにリヴァイを呼んだ。

そして私の下に来るなり……、


「さすがはアイリ様! もう銀箔蝶を捕獲したので御座いますな!」


 盛大に勘違いをされた……。


「とりあえず落ち着こうリヴァイ。今回は急用で帰って来たのよ」


「急用で御座いますか?」


 それから大草原の湖に到着してからの出来事を簡単に説明し、トーマスとジェリーの面倒を見てあげてほしいとお願いした。


「そういう事で御座いますか。畏まりました。2人の事はこのリヴァイにお任せ下さい」


 用は済んだという事でさっそく湖に戻ろうとしたんだけど、ここにきて今まで黙っていたジェリーから質問が飛んできた。


「な、なぁアンタ、いったい何者なんだ? それに……ここはいったい何処なんだよ?」

「ちょ、ちょっとジェリー、その言い方は失礼だよ?」

「でもさぁ……」


 そういえばこの2人に私の事を説明してなかったわね……。


「トーマス、そんなに畏まらなくてもいいから」


「あ、ありがとう御座います」


「それで私の事なんだけど、ズバリ私はダンジョンマスターって言われる存在よ」


 言い終わった後、2人はその場で固まってしまった。

 そして……、

 



「ダンジョンマスターってさ、滅多にダンジョンから出てこないで、中でゴロゴロしてるニートだって聞いた事あるんだけど……」


「ちょ、ちょっとジェリー、ハッキリ言ったら失礼だよ。もっと表現を和らげて……」


 コラコラコラコラーーーッ!

ジェリーもそうだけど、トーマスもフォローになってないじゃない!

 だいたいこの2人には、私がニートに見えるっていうの!?

そう思ったら何かムカついてきた。


「ねぇ……貴方達ぃ~?」


「「ヒィ!?」」


 あら嫌だ、殺気が抑えられなかったわ。

 私も落ち着こう、冷静に冷静に。


「ダンジョンマスターはニートだって言ったのは誰?」


「死んだ爺ちゃんが言ってた。ダンジョンでこそこそとしとる連中なんぞに遅れをとるものかぁ! とも言ってたよ?」


 なんで対抗意識を燃やされなきゃいけないのよ……。


「ジェリーの祖父って、ダンジョンと因縁でもあるの?」


「んーー、なんだっけなぁ…………あ、そうそう! 確か若い時に好きになった女の人が、ダンジョンマスターの眷族だったらしいよ? 眷族はダンジョンマスターに絶対服従だから、主人を放っておく事は出来ないって言われて振られたんだって。それからダンジョンが嫌いになったみたい」


 まさか他人の痴情の縺れが原因でとばっちりを受ける羽目になるとはね……。

 とにかく、ダンジョンマスター=ニートは全力で否定しとこう。


「いい? ダンジョンマスター全てがニートな訳じゃないの。確かに貴方が言うように、コスプレに情熱を注ぎ過ぎて首が回らなくなった魔法少女や、ドMの水虫持ちのような存在価値が皆無な奴も居るわよ? でもね、それは極一部のイレギュラーなの。それに基本的には何らかの収入が無いと生きていけないんだから、皆何かしら働いてると思うわよ?」


「そうなの?」


「そうよ。今から証拠を見せてあげるから、2人共付いて来なさい」


 兎に角、くだらない事でニート認証はまっぴら御免よ。

この2人にはアイリーンにある立派な城を見せて、間違った認識を正してあげないとね。


 そんな訳でトーマスとジェリーを連れて、我が街アイリーンに有る城を見せてやる事にした。

 何故城を見せるのかと言うと、手っ取り早く私の権力を見せつけてやれば、この2人(特にジェリー)が私を崇めるようになるって訳よ。


「さぁ、よーーーくご覧なさい、この立派な城を! こんな素晴らしい城を持ってる私がニートに見える?」


 城の前に連れてくると、私は2人に向き直って、ドヤ顔で後ろを指した。


「ほぇ~~~~、デカイ城だなぁ!」

「す、凄いや!」


 うんうん、素直で清々しい反応ね。

これで2人も考えを改めるでしょ。






「でもさ、権力者って部下に色々やらせといて、自分は楽してるって、死んだ爺ちゃんが……」


 おのれクソ爺ぃ~~~!

何処まで私の足を引っ張れば気がすむっていうのよ!


『アイリ様。このリヴァイに1つ妙案が御座います』


『妙案?』


『はい。今現在、アイカはダンジョン内の清掃に全力を注いでおりますので、その様子を見せれば考えも変わるものと思われます』


 これぞ天の助けね!

 リヴァイからの念話で、アイカの様子を2人に見せる事にした。

アイカも私と同じようにダンジョンを管理する側だから、上の存在と言っても差し支えないものね。

それじゃあアイカの居る場所に…………、


 自分のダンジョンなら、誰が何処に居るかはすぐに分かるから便利よね。


 …………あ、居た居た、ちょうど城の玉座に居るわね。

善は急げって事で、2人を玉座まで引っ張って行った。

 さぁ少年達、管理者が自ら清掃に身を投じる姿を刮目しなさい!






「さてさて、うるさいリヴァイが居ない内に、スイーツタイムといきましょう。まったく、こんな暑い盛りに真面目に清掃なんてやってられません。いくらダンジョンが快適な温度に調整されてるとは言え、暑いものは暑いんです。暑さに逆らうは愚か者なり……って事で、本日はかき氷を用意しました。そうです、かき氷のみです。ここから色んな味を付け足していく事で、更なる至福を味わうのです。さっそくシロップを用意しましょう」


 シュバ!


「っと。用意したのは、イチゴ、メロン、バナナ、ブルーハワイ、グレープ、マンゴー、アセロラ、レモン、スイカ、パイナップル、グレープフルーツ、シークワーサー、洋梨、青リンゴ、コーヒー、カルピス、練乳、抹茶、蜂蜜、という豪華な顔ぶれとなっております。それでは最初に試すのは……ブルーハワイ、君に決めた! ではさっそくシロップをかけて……」


 シャクシャクシャク!


「うぅ~~~ん、とってもハワイアンです! 良くやったブルーハワイ、余は満足じゃ! な~んて♪」


 バタン!


 玉座でダラリしながらかき氷を堪能してるアイカを見て、とても2人には見せられないと思い扉を閉めた。


「ねぇ、今の人、昔爺ちゃんが言ってただらしない王様に、人物像が似てたような気がするんだけど……」


「いいえ、中には誰も居なかったわ」


「……え?」


 どうやらしっかり見られてたらしい。

 けど、私は認める訳にはいかない。

この2人に悪影響を及ぼさないようにするのは、保護者の務めなのよ。

だから、悪き例は封殺する!


「誰も居なかったのよ」


「いや、さっき「誰も居なかったのよ」


「………………」


「いい? ジェリー、よく聞いて。君は何も見なかった! ……い・い・わ・ね?」


「は、はひぃぃぃ!」


 また殺気が出ちゃったけど、細かい事だしいいわよね。


「お疲れ様です、アイリ様。後はこのリヴァイにお任せいただき、アイリ様は銀箔蝶の方に専念くださいませ」


 そうだったわ、まだ銀箔蝶を捕まえるというミッションの途中だったのよね。


「そうするわ。……ねぇ2人共。リヴァイの言う事をよく聞くのよ?」


「はい! 何から何までありがとう御座います!」


「ジェリーも。ここでしっかりと生きる(すべ)を身に付けるのよ?」


「勿論だよ。もう盗みなんてしたくないし、頑張ってみるよ」


 これでよし。

この2人なら、アイリーンにすぐにでも馴染めそうな気がするわ。






 トーマスとジェリーをリヴァイに任せると、すぐにモフモフを連れて湖へと舞い戻った。

もしかしたら銀箔蝶が出現してるかもしれない……という淡い期待を抱いた私だったけど、待っていたのはまったく予想だにしなかった光景だ。


「やっぱザードは強いなぁ。クロだったら今のでKOやで?」


「笑止、剣を振れぬクロと某とでは、雲泥の差があるというもの。見くびってもらっては困るで御座る」


 何故かザードとホークが模擬戦を行っていた。

いったい2人は何を考えてるんだろう……という疑問を他所に、尚も2人は模擬戦を続ける。

 そんな2人を囲むようにギャラリーの冒険者が声援を送っており、すっかり見せ物と成り果てていた。

 兎に角、どうして現状のような状況が起こってるのか確認するため、エレムラブの4人を探さないとね。


「あ、アイリさーん、戻って来たのですね?」


 探そうと思ってた矢先、エレムラブのジュリアさんが先に私を発見したようだ。


「今到着したところですよ」


「そうでしたか……あれ? でも一番近い街までは半日かかると筈だと思ったのですが?」


 ギクッ!

 すっかり失念してたわ。

僅か2時間で戻ってきたから、単純な物理法則では辻褄が合わない。


「いえ、戻る途中で知り合いのパーティに会ったんですよ。彼等に任せました」


 まぁご都合主義な展開だけどね。

 けれどジュリアさんは何の疑いもなく信じてくれた。

 これはこれでジュリアさんが心配になってくるレベルだけど……。


 って、そんな事よりザードとホークよ。

この2人に何が起こったのかが知りたい。


「はい、ザードさんとホークさんですね。私にも詳しくは分からないのですが、確か退屈しのぎに……と、仰ってたと思います」


 まったく人騒がせな。

何事かと思ったじゃない……。


「それに中々好評のようですよ? どちらが勝つか、賭けを行ってる人達も居るみたいですし」


 いや、冒険者達に好評でも、何にも意味はないからね……。



「まぁ、冒険者同士のいざこざが起こるよりマシであろう」


「あ、ミゲールさん」


 ミゲールさんがヒョコっとテントから顔を覗かせる。

 暑いから、テントの中で休んでたのね。


「人は娯楽に飢えてる……と言うしの。娯楽が生きる楽しみの1つである者は、少なくはないのではないか?」


 そう言われると、この2人の模擬戦は、深い意味合いが有るように思えてくる。

 ……多分、意味なんてないだろうけどね。



「そろそろ決着つけようやないか!」


「望むところ!」


 どうやら2人の戦いも、クライマックスを迎えそうだ。

上空へと舞い上がったホークに、ザードが十文字の斬撃を飛ばす。

 それに合わせるようにホークは全身に風を纏うと、斬撃に向かって突っ込んでいく。

 そして…………、




「何でやねーーーーん!!」


 斬撃の威力を相殺しきれずに、斬撃と一緒に上空へと打ち上げられたホークは、纏った魔法が消え、竜巻を纏った状態で湖に落下していく。

そのまま湖の底をドリルのように抉った巨大な穴を作ると、中からホークが勢いよく飛び出して、アイリ達の前に着地した。


「まったく、どエライ目にあったで」


 あんな目にあったというのに、ホークったらピンピンしてるじゃない。

私としては、湖に大穴が開いた事の方が心配になってくるんだけど……。


「お、おい、アレ見ろよ!」

「ん? な!?」

「何だよアレ!」


 妙に周りが騒ぎだしたと思ったら、皆で湖の方を指して驚いてる。

 湖を見ると、ホークに開けられた大穴に水が吸い込まれたため水位が大幅に下がったんだけど、なんとビックリ! 水中から神殿のような神々しい建物が現れたのよ。


「あれは……神殿なの?」


 一見神殿に見えなくもないけど、私は違うように見える。

表面だけは綺麗に見えるけど、中はどうなってるか分からない。

それに何となくだけど、地上から地下に誘うような…………あ!


「どうしたのですか? アイリさん……」


 考え込んでた私の顔を、ジュリアさんが心配そうに覗いて来た。


「ごめんごめん、大丈夫よ。それより聞いて、あれは間違いなくダンジョンよ!」


「ダ、ダンジョン……ですか?」


 そうよ、ようやく気付いたわ。

何となく自分のダンジョンに似たような雰囲気を感じたのよ。

そもそも、普通の建物が長い間湖に沈んでたら、劣化は避けられない筈。

なのに神殿らしき建物は……、


「傷1つ有らへんな。少なくとも、ワイの鷹の目にゃあ傷らしきものは見当たらんで」


 やっぱりね……。

 いや、もしかしたら神の力が宿ってて……とかなら話は別だけど、ヨム族のエドンノ族長の話には、神に関する話は一切無かった。

そしてダンジョンの特性上、外的要因による破損は有り得ない。

ならアレはダンジョンで決まりよ。


『アイカ。悪いけど、今すぐダンジョン通信で情報を流してほしいの』


『どうしたのですか急に? それにわたくしは清掃で忙しいのですが』


 堂々とサボってたくせによく言う……。


『いいから早くして! ヨム族の大草原の中心に有る湖の中にダンジョンが有ったのよ!』


『ダンジョンですか? まぁ仕方ないですね……よっこいしょ……と』


 よっこいしょ……じゃないわよ!

明らかに今まで寛いでた台詞でしょ!


『兎に角、急いでちょうだい。早くしないと、かき氷を頬張ってた事をバラすからね!』


『何故それを!? 分かりました。すぐに取り掛かりますので、リヴァイにはバラさないで下さいね!? 絶対ですよ!』


『いいわよ。()()()()言わないから安心してちょうだい』


 さてと、他のダンマスからダンジョンの情報が得られればいいんだけどね……。


アイリ「結局どっちが勝ったの?」

ザード「勿論某に御座る」

ホーク「待ちぃや、まだ決着は着いとらんでぇ!」

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