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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第4章:夜空に舞う銀箔蝶
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銀箔蝶を求めて

前回のあらすじ

 ダンジョンに帰る前にお土産を買おうと思い立ったアイリは、眷族達とは別に自分の分を選んでほしいとディスパイルに頼んだ。

するとディスパイルが選んだのは銀箔蝶という神秘的で美しく、何より涼しそうな見た目の蝶だった。

真夏にはぴったりだと感じたアイリは、すっかり気に入ってしまい、大事に抱えてダンジョンに帰るのであった。


 ダンジョンに戻ってきたので、さっそく寝室に飾ってみた。

何を飾ったかって? そりゃあ勿論、銀箔蝶以外にないわ。

この銀箔蝶の絵画は、寝苦しい熱帯夜にはさぞ効果を発揮する事になる筈よ。


「コレさえ有れば、暑い夏も大丈夫!」


 ってね。


「お姉様、ダンジョン内の温度は常に適切なものに保たれてますので、銀箔蝶がどうとかは関係ないと思われます」


 さすがはアイカ、分かってない。

もう全然分かってないわ。

 こういうのは気分の問題なのよ。

眷族で例えれば、騒がしいホークと淑女なギン、どちらが涼しそうに見えるかと言えば、断然後者な訳よ。

逆にホークだと、暑苦しく感じるのは避けられないわ。

 因みに、寒いギャグを聞いても涼しくなる事は無いから、諦めが肝心よ。


「つまり、実際の温度と体感温度は別物って事なのよ。それに私はアイカとは違って繊細なの。分かった?」


「はぁ……そういうものですか」


 まぁ食い意地張ってるアイカには分からない事よね。


「というか、然り気無くディスられたような気がするのですが……」


「それは気のせいよ。それよりもアイカ、明日の朝までに銀箔蝶の情報を集めといて」


「銀箔蝶の情報を……ですか?」


「ええ、そうよ」


 何故かと言うと、絵画を見て気に入った物だから、実物も見てみたいと思うのも自然の流れってやつなのよ。

出来る事ならダンジョン内で放し飼いにしたいしね。


「どうせ夜中にドローンで遊んでるんだし、いいでしょ?」


「まぁ暇潰しに成るので構いませんが」


 私や眷族が寝てる間に、アイカったらドローン使ってあちこち探索してるのよ。

アイカの場合は寝る必要がないから、夜中は時間をもて余してるみたい。

だから暇潰しも兼ねて、情報収集を任せる事にしたわ。






「お姉様ーーっ、銀箔蝶の情報を掴みましたよーーっ!!」


 次の日の早朝、私は鶏よりも早いアイカの叫び声で目を覚ました。


「だぁーーーっ! 朝っぱらからうるさい! 今何時だと思ってるの!?」




「…………午前5時ですが?」


 いや、時間を聞いてるんじゃないのよ!

こんな早朝に大声を出すなって言いたいの!


「もぅ……今度から朝早くに大声を出したらデコピンよ! 分かった!?」


「はい、分かりました…………えい」


 バスッ!




「いっっっっっったーーーーーーい!!」


 私と同じステータスのアイカによる痛すぎるデコピンが炸裂した!

思わず悶絶して転げ回る。

 というかアイカったら、私が大声を出したからデコピン食らわしたわね!?


「先に大声を出したのはアイカでしょ! このぉ!」

「アイスバリケード」


 ビシッ!




「いっっっっっったーーーーーーい!!」


 アイカにお返しのデコピンをしてやろうとしたら、空かさず張られたアイスバリケードによって防がれた。

というより痛すぎる! 爪が割れるかと思ったわ!


「やりやがったわね!? そっちがその気なら……」


 このままじゃ収まらないとばかりに、墨汁を召喚し、それをアイカにぶっかけてやる。


 バシャッ!




「………………」


 アイスバリケードを避けるように、アイカの真上から垂れ流してやったわ。

その結果、アイカ自身は勿論、アイスバリケードまで真っ黒に染まったようだ。


「ククク、アイカったら随分とどす黒いバリアを張ってるのね?」


「お、お気に入りの服を…………もう許しませんよ! ……えい!」


 アイカから恨みを込めた謎の液体が飛ばされてきた。

この匂いは柑橘系の……と思ってる内に、少しだけ目に入ってしまう。

直後、超列な痛みが染み渡る。


「いだだだだだだ! コレって蜜柑の汁じゃないの!」


「正解です♪」


 こんのぉ……人の顔見て笑うなんて、誰に似たのよ!

 こうなったら思い知らせてやるわ!


「コレでも食らいなさい!」


「ん? コレは…………熱っ! 熱熱っ! な、何なんですかコレはぁ!?」


 今度はロウソクを召喚してやったわ。

勿論熱で溶けかかってる状態でね。

 さぁ存分に味わいなさい!


「熱つつつ……もう怒りましたよ! こうなったら総力戦です!」

「望むところよ!」


 それから、ベッドが凹んだり、テーブルが割れたりと大暴れしてしまったけど、銀箔蝶の絵画だけは死守したわ!


 そして2時間に渡る激闘の結果……、








「……で、何か反論はありますかな?」


「「「いえ、ありません」」」


 3人揃ってリヴァイに説教されてます。

グチャグチャになった私の寝室を背景に、正座を強要された状態でね。

 早朝から私とアイカが、私の寝室で取っ組み合いの喧嘩をしてると、異変を感じ取ったリヴァイが現れ仲裁してくれたって訳。

そして喧嘩両成敗って事で、リヴァイによるペナルティを言い渡されるらしい。


「あのぅ……ルーはそこまで酷い事は……」


「いや、ルーは一番悪質ですぞ」


 気付いたら何故かルーも一緒に正座をさせられてたんだけど、その理由は、私とアイカが争ってる間にどさくさに紛れて、今日の眷族達に用意したおやつを全部食べてしまったからなのよ。

 用意してるのはリヴァイだから気付くのは当然ね。


「よってルーは3日間おやつ無しですな」


「ガーーン……」


 これは自業自得ね。

さすがはアイカ2号なだけあるわ。


「さて、次はアイリ様とアイカですが……」


 いったい何を言われるのか、私とアイカはドキドキしながら言葉を待つ。


「アイカには、今日から数日かけてダンジョン全体の大掃除をしてもらいます」


「いや、いくら暇潰しでもそれ「嫌なら結構です。今後はアイカのおやつは一生無いと思って下」喜んでやらせていただきます!」


 アイカへの罰は決まったみたい。

 って事で、ついに私の番なんだけど……、


「アイリ様には暫くの間、ダンジョンの外で遊んで来ていただきます」


「え?」


 遊んで来るって…………どゆ事?


「アイリ様の場合、ダンジョンに籠りきりなのは逆に良くないのでしょう。何だかんだとアレクシス王国に出向いた時も、アイリ様は生き甲斐を感じてたと思います」


 うん、確かに絶え間無く忙しい毎日だったけど、充実感は有った気がする。


「という訳で、アイリ様には実物の銀箔蝶を探してきてもらう事にしました」


 ……アレ? 結局のところ、私の罰は無いって事なんじゃ……。


「因みに、銀箔蝶を見つけるまで、ダンジョンへの帰還は認めません」


 あのぅ……ここは私のダンジョンなんですがそれは……。


「では朝食の後に、各自実行に移してもらいますので」


 あ、今気付いた。

リヴァイったらかなりご立腹なのね。

普段、部屋の掃除やら街の維持管理を率先して行ってるのはリヴァイだから、部屋をメチャクチャに汚したのを怒ってるようだ。

 今度から気を付けよう。

下手したら、年単位でダンジョンを放り出されかねない。






「ほーーーん。で、ワイらの出番ちゅ~訳やな? ま、護衛なんざ楽勝やで!」


 相変わらずな乗りの軽い奴ね……。

 でもホークを負かす相手なんかそうそう居ないだろうし、大丈夫だと思うわ。


「まぁ……ね」


 朝食の後、さっそく眷族達にお願いして、銀箔蝶を探しに転移してきた。

やってきた場所は、ヨム族の住む大草原の中にあるヨム族の町だ。


「成る程。拙者達は(あるじ)の護衛という役割なので御座るな」


 この暑い夏に鎧兜は暑すぎるんじゃないかと思ったけど、ザード自身は変温可能だから大丈夫らしい……って、そういう問題? まぁいいけれど。


「そういう事。でも戦闘で早々遅れをとるつもりは無いからね」


 本来なら()()も護衛は要らないと思うんだけど、今まで4人パーティだったからという理由で、ホークとザード、そしてモフモフが護衛に選ばれた。

 一応3人とも人化できるから人前に出ても大丈夫なんだけど、この3人を選んだのもリヴァイだったりする。

リヴァイ曰く、普段とは違う顔触れで行動するのも新鮮というものです……って事らしい。


「任せて下せぇ、命に代えてもお守りいたしやす!」


「あ、うん。ありがとうモフモフ」


 正直なところ、モフモフが居れば変な奴に絡まれる事はそうそう起こらないと思う。

何せ今のモフモフの見た目は角刈りにグラサンで、どう見てもヤクザにしか見えない。



「これまたユニークなパーティだのぅ……」


「いや、まぁ、そうですね……」


 そして私達は今、アイカの情報を元にヨム族のエドンノさんに話を聞きに来たのよ。

 アイカが言うにはヨム族の居る大草原の中央に位置する場所に、毎年夏から秋にかけて銀箔を振り撒く蝶々が目撃されるらしい。

そこで地理的にヨム族の人達が詳しいと思って、エドンノさんの下を訪れたという訳。


「ふむ、銀箔蝶だな。そういえばもうそんな時期だのぅ。毎年この時期になるとな、南はアレクシス王国から、西はラーツガルフ魔王国から、更には東のミリオネック商業連合国からと、銀箔蝶を求めて多くの冒険者がやって来るのだよ」 


 どうやら銀箔蝶は大人気らしい。

アイカの情報でも、銀箔蝶の捕獲依頼が冒険者ギルドに持ち込まれるケースも多いらしいからね。

 但し、捕獲に成功した人達は極一部に限られるらしいので、難易度は相当高い。


 アレ? 難易度が高いって事は、今年の捕獲に失敗したら、来年までダンジョンに帰れないって事!?

 これは困った……。

最悪リヴァイに土下座して許してもらわないといけないかもしれない……。


「知ってるかもしれんが、この町から北東に進むと大きな湖があるのだが、その畔での目撃情報が多いようだの。それにその湖は、この大草原の中央にあたるらしいぞぃ」


 目撃情報はアイカから聞いてたけど、その湖が大草原の中央って事は知らなかったわ。


「色々ありがとう御座います。さっそく銀箔蝶の捕獲にチャレンジしてきますね」


「うむ、頑張るのじゃぞ。もし上手くいかなかったら儂が慰めてやろう。だからまた来ておくれ、その時は膝枕をしてやろう」


「いえ、結構です」キッパリ






 ショボーンとした顔のエドンノさんに別れを告げると、大草原の中央に有ると言われる湖を目指す私達。

 余程銀箔蝶を求めてる冒険者が多いのか、湖に近付くにつれて徐々に周囲は冒険者だらけになっていく。


「こらまた大盛況やな。コイツら全員、銀箔蝶狙いに違いないでぇ」


 でしょうね。

 捕獲に挑んだ人達の1割以下しか成功してないんだから、当然報酬も跳ね上がる。

となれば、手っ取り早くお金を手にする可能性にかけるのも分かる気がする。


「お? 見えてきやしたぜ、姉御!」


 モフモフに言われて前方をよく見ると、遠くに湖が有るのが見えてきた。

 そうすると、ついつい気持ちが先走ってしまうもので、気付くと湖に向かって走り出していた。

 とまぁ、ここまでは良かったんだけど……、



「ここは俺達のパーティが先に取った場所だ。悪いが他に移動してくれ」


「あ、すみません……」


 既に湖の周辺は、冒険者達が各々でテントを張ってて、空いてる場所を探すのが困難な程になっていた。

今も空いてる場所を見つけた! と思ったら、既に別の冒険者に取られてたし。

 他にも遠くで冒険者同士が揉めてるのも見える。

多分場所取りでのイザコザね。


「どうしよう……」


 湖から離れればテントを張る事も可能だけど、いざ銀箔蝶が出現した際に遅れをとる可能性が出てくる。


「姉御、適当に喧嘩吹っ掛けて、叩き出してやりやしょうぜ?」


「お願いだから余計なトラブルを呼び込むのは止めてね」


 モフモフはこう言ってるけど、私としてはそんな事をするつもりはない。

売られた喧嘩は買うけども。


「だからどけっつってんだろうがよ!」


 突然の大声にビクッとしたけども、声をした方を見ると、近くでも冒険者同士が揉めていたようだ。


「落ち着いて聞いて下さい。私達が先に取ってたのは、貴殿方もご存じの筈です」


「ぁあ? 知らねぇよ、んなもん。だいたい後から来たのはお前らだろうが!」


「いいえ、最初に来たのは私達です。ここに張って有ったテントを貴殿方が放り投げたのでしょう」


 男女4人パーティ内の1人の女性が指した方には、テントらしきものが無造作に放り出されている。

 その後も注意深く聞いてると、男女4人のパーティに男5人のパーティが難癖をつけてるのが分かった。

 どうやら男女4人の方は、テントを張ってから湖の様子を伺ってたらしい。

そして戻ってきたら場所を取られてたって事ね。

 私達も場所の確保に苦労してるのに、楽してぶんどる連中には腹が立つわ。

 って事で……。


「モフモフ、追い払ってきて」


「了解ですぜ」


 強面のモフモフが冒険者達に近付いて行く。


「おい……」


「あ? なんだテメ……ェは……」

「ヒッ!?」


 双方ビビってるようだ。

 この世界でも強面は避けられる運命なのかもしれない。


「姉御がこの場所をご希望だ。文句があるなら聞くが?」


「い、いや、ねぇよ、ねぇねぇ。おおおおい、行くぞ!」


 男5人組は誰1人として文句を言わずに、その場から離れて行った。

そうよね、まるで和風のターミネ〇ターみたいなモフモフに挑もうとする命知らずは居ないわよね。

 さて、上手く追い払ったから私達も場所を探そう。


「すすす、すみません! す、す、すぐに私達も移動しますので!」


 あっと、勘違いされてしまった。


「待って待って! アイツらを追い払っただけだから!」


「え!?」


「だから貴女達の場所でいいのよ。そのために追い払ったんだから」


「よ、よろしいのですか? ありがとう御座います!」


 さて、誤解も解けた事だし、改めて場所を探して……、


「あの、宜しければこの場所を一緒に使いませんか?」


 思ってもみなかった提案をされた。

 共同で使ってもいいなら使わせてもらおうかな。


「いいの?」


「はい。先程助けていただいたお礼です。皆も宜しいですね?」


「勿論ですぞ」

「これもエレム様のお導きですね」

「ああ、素晴らしき出会いに感謝を!」


 助けたのがキッカケで、ちょっと変わった冒険者パーティと、共同でテントを張る事になった。


モフモフ「チッ、根性無し共が……」

アイリ「モフモフは殺気も出てるから、大抵のゴロツキ共は喧嘩売ったりしないわ」

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