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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第3章:アレクシス王国の暗部
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閑話:静かになるドン

「頼む、見逃してくれ!」


 目の前の豚貴族は必死に命乞いをしてくる。

豚貴族の後ろは部屋の壁。

更に2人の護衛は()()()()()()ままだ。


「それは無理な相談だ。既に依頼を引き受けた以上、完遂するまで実行する事になる」


 今言った通り、既に我々は多額の前金を受け取っており、依頼を達成する事で更に多額の報酬を受け取る事になっている。


「か、金か? そうだろ? そうなんだろ? 金ならあるぞ、有るだけ持ってっていい。だから頼む、儂を助けてくれ!」


 尚も叫ぶ豚にいい加減イライラしてきたので、腹に蹴りを数発入れてやる。


「ブグッ? ゴボッゴボッ! ゲェェェ!」


「ちょっ、ボス、コイツ吐いてる吐いてる!」


 あ~くそ! 汚ねぇな! 只でさえ豚野郎の加齢臭が鼻を刺激しやがるってのに。

というかヤミーとハットは何してやがる!


「すまねぇボス、遅くなった」


 ヤミーとハットが漸く戻って来た。

今回の依頼である内の1つは、豚野郎に連れ去られた商人の子供を救出する事だったので、2人に邸の中を捜索させていたのだが、ヤミーが手を繋いで現れた女児が、どうやら依頼主の娘らしい。


「ねぇ、本当にパパの所に帰れるの?」


「ああ。帰してやるとも。だが我々にも他にやる事があるのでな、すまないが部屋の外で待っててくれ」


 ヤミーに顎で示して、部屋の外へと連れ出してもらい、もう1つの依頼を達成すべく懐からダガーを取り出した。


「依頼主にはお前の首を証拠として持ち帰るように言われてるのでな、恨みはないが永遠にさよならってやつだ」


「そ、そんな! 頼む! たのグエェガ……」


 そして命乞いの途中で首を掻っ切り、豚貴族は絶命する。

 直後、首から下が噴水のようなオブジェと化し、部屋を真っ赤に染め上げていく。


「あ~グロいグロい。ボス、早いとこずらかろうぜ」


 急かすオリベルを無視して切り落とした首を袋に詰める。

そして部屋の外へと出ようとしたその時、物陰に隠れていた少女が姿を現した。


「………………」


 それを見た俺とオリベルは、言葉をつまらせる。

何故姿を現したのか理解出来なかったからだ。

 勿論その少女が隠れていたのは知っていた。

殺気が感じられず、隠れている姿も素人同然なのを見て、脅威は無いと判断し、あえて放置していたのだ。

なので俺達はその少女を見なかった事にし、邸を出るつもりでいた。

 しかし、俺もオリベルも完全に意表を突かれた状態に陥る。

そんな俺達に目の前の少女は、更に信じられない事を言い出した。


「私も……連れてってほしい……」


 恐る恐るといった具合に話し出すが、不思議と芯の強さを感じさせる雰囲気だった。


「お前は……自分で何を言ってるのか分かってるのか?」


「うん……分かってる。貴方達がどういう存在なのかもなんとなく分かる」


 だったら何故!? という言葉が本来ならば出ているところだ。

だが少女から出た言葉を聞いて納得した。


「復讐したい……相手がいるの……」


 思わずゾクリとした。

 この少女は本気だ、本気で殺したい奴が居るんだと、目が訴えていた。

 そしてその目は……俺と同じだと気付いた。






「はぁ……で、結局連れて来ちまった、と」


 依頼達成後、誘拐されていた女児と血生臭い()()を依頼主に届けて、無事報酬を受け取った。

そして今、アジトに戻ったところで、先程の少女の件を話し合っているのだが、当然他の面子からは大不評だ。

 ……いや、2人だけ好評だったな。

少なくとも、ヤミーとデールには歓迎されてるようだ。

理由は分からないが……。

 だが俺は、1度決めた事を曲げたりしない。

あの少女……カズヨという名前らしいが、カズヨが俺達を見た恐怖よりも、復讐を選んだのは確かな事だ。

そして目の前でため息をつくノアーミーを見て俺は反論する。


「あの目は覚悟を決めた目だ。少なくとも裏切る事はない」


 当たり前の話だが、俺達の中で裏切り者が出た場合、当然裏切った事を後悔してもらう事になる。

 しかし元々俺達は、世間の爪弾き者が集まった組織だ。

居場所を失い、人としての権利も失い、ただその日を生きるだけの存在に成り果てた者達。

 だからこそ作ったんだ、俺達が生きる事の出来る場所をな。

俺に有る物って言ぁ、己の腕だけだ。

こいつで降りかかる火の粉を払い、金の有るところから奪っていただけの組織は徐々に仲間が増え、いつしか闇ギルドとして機能するようになった。


 だが強いだけの奴はダメだ。

そういう奴は大抵物事を深く考えようとはしない。

故に裏切った後の事なんざ、一切考えたりはしないのだ。

そんな奴を面子に入れるくらいなら、カズヨを迎え入れて戦闘訓練を施した方がマシだ。


「成る程、それでカズヨを入れる事にしたって事だね。俺は賛成するよ、なんだか妹が出来たみたいで楽しそうじゃないか」


 お調子者のデールは賛成してくれたが、あまり深く考えて無さそうなのは、気のせいだと思いたい……。


「つってもよ、ボスはもう決めたんだろ? だったら今更反対したって遅いし、いいんじゃねぇの?」


 最初は文句を言ってたハットは、どちらでもいいという感じに落ち着いたようだ。


「まぁハットの言う通りなんだが、一応納得してもらう必要があったからな」


 初代設立者である俺がボスなんてのをやっているが、最早俺だけの組織ではないからな。

あまりに好き勝手をすると、組織の崩壊に繋がってしまう。


「なら歓迎しようぜ、こんな男臭いところじゃ華があった方がいイデデデデデ!」

「ちょっとオリベル、アンタ私が男臭いとでも言いたいのかい!?」

「ちょ、止め、マジで足に穴が開く!」


「………………」


 この様子なら問題無さそうだな。

カンマは相変わらず無口で、イマイチよく分からんが……。

 そんなことをやってる内に、ヤミーがカズヨを連れて戻って来た。

ヤミーにはアジトを案内してもらってた為あの話し合いの場には居なかったが、仲良さそうに手を繋いでるところを見ると、こっちも問題なさそうだ。


「じゃあノアーミーとヤミー、頼む」


「あいよ、任せな」

「任せといて」


 2人はカズヨに近付くと、カズヨはビクッとしたのが分かる。

いや、正確にはノアーミーか。

確かにノアーミーは、身長が高くやや色黒のため、多少の威圧感を感じるのかもしれんが。


「……失礼ねアンタ。危害を加えたりしないから、大人しくしてなさい」


「はい……」


 今2人が行ってるのは、カズヨの首に付いている奴隷の首輪の破壊だ。

普通なら壊す事は不可能のはずなのだが、カズヨの持ち主だった貴族は既にいないので、恐らく上手くいくだろう。

 破壊の仕方はとってもシンプルで、対となる属性の魔力を注ぎ続けるだけだ。

この奴隷の首輪は光属性のため、闇属性の魔力を注ぎ続ければ……


 パキンッ!


 首輪の破壊は1分もかからず終了した。

 これでもう、カズヨは奴隷では無くなった。

ただし、アレクシス王国の中では奴隷としての記録が残ってる筈だから、外に出る際はボロが出ないように要注意だ。






 あれから1年近く経過した。

今季節は初夏を迎えようとしてる頃合いだ。

俺みたいな半獣人(ハーフビースト)にとっては、冬よりも夏の方が動きやすいので有り難い。

そんな俺は今、アジトの地下でカズヨと組み手を行っている。


「たぁ!」


 カズヨが威勢よく殴り掛かってくるのを避けるが、直後に回し蹴りが迫ってきた。


「おっと……カズヨ、仕掛けるコンビネーションが上手くなったな。だが隙を作ってまで攻勢に転じてはダメだ」


 回し蹴りをギリギリ避けると、がら空きになったカズヨの背中を押しバランスを崩させる。

そしてカズヨの首にダガーをあててチェックメイトだ。


「でもそれはボルチェだから。他の人……例えばハットとかなら、バランスを崩すか蹴りが当たる筈」


 コイツもだいぶ相手の実力を見れるようになってきたな。

転移者の特権なのか知らないが、カズヨの上達速度は凄まじいものがある。

 だがカズヨの話だと、プラーガ帝国に召喚された時に鑑定スキルを掛けられたが、特別なスキルは無かったと落胆されたそうだ。

 いや、1つだけ有ったな。

相互言語という異世界の相手と会話が出来るという、絶対に必要なスキルだが。

 そう考えれば転移者の特権ではなく、カズヨの信念が実力を底上げしてるのかも知れない。


 その後、組み手を続行するが、やはりまだまだ俺には及ばない。

 逆に1年やそこらで追い付かれたら、俺の心が折れるかもしれん。


「やっぱりボルチェは強い。化け物」


「化け物は言い過ぎだ。精々Cランクの魔物とタメを張るorタイマンを張れるくらいだろう」


 まぁ化け物じみた強さって事を認められたって事なら悪い気はしないが。




 更に数日後、俺達は拠点にしてるリムシールの領主、ダルタネーロの依頼を受け、ダンジョン攻略の手助けをする事になった。

 そのダンジョンは最近になって出現したものらしいく、階層も浅いのだが、ボス部屋のボスが異常に強いらしい。


「だが国の法律では、ダンジョンは発見しだい速やかに報告する事になっていたと記憶しているが?」


「それはそれ、これはこれで御座います。そもそも法に触れるのですから、()()()()()()()貴殿らの協力が必要なのです」


 クライアント(ダルタネーロ)の側近を勤めてるという男がそう説明するが、要するにその攻略目標であるダンジョンを、こっそりと攻略してしまいたい()()()()()という事だ。

 とはいえ、その理由は我々には関係ない事であるため、ダンジョン攻略を引き受ける事に決めた。

急な依頼だったため、買い出しに出てるカズヨとデールのために書き置きを残し、他のメンバーを引き連れてダンジョンへと向かった。

 ……そう、まさかダンジョンに、あのような化け物が居るとは思いもせずに……。






「デ、デ、デルタファング! それに……それにこっちはオリハルコンゴーレムよ! 人化してるけど中身はオリハルコンゴーレムだわ!」


「「「「な!?」」」」


 ヤミーの鑑定結果に全員が驚く。

とんでもない化け物だ。

 普通なら逃げるしかないところだが、生憎と逃がすつもりはないらしい。

それならばと、せめて一太刀当ててやるつもりで挑むのだが……、




「グアァァァッ!!」


「ボス!」「頭ぁ!」


 デルタファングのスピードには付いていけず、両足を噛み千切られた。

 激痛の中、なんとか意識を保ち周りを見ると、他の面子も同じく両足をやられたようだ。

 ヤミーとノアーミーは無事みたいだが。


「モフモフ、ルー、お待たせ。ここからは私に話をさせてちょうだい」


 そんな中現れたのは、魔物達の主人と思われる1人の少女。

 この人物との出会いにより、俺達の組織は新たな門出を迎える事となった。


デール「そんなに恐かったのか?」

ハット「マジでチビるわ!」

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