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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第3章:アレクシス王国の暗部
83/255

利用し利用され

前回のあらすじ

 満持紀子の足取りを追わせるため、密かにアイリは傘下に置いた闇ギルドの者達に依頼を出していた。

すると彼等は、僅かな時間で満持の潜伏する邸を突き止め、夜間の襲撃を決行する。

しかし、邸内には兵士やガーディアンが居り、それらの足止めをカズヨ以外のメンバーが行った。

結果カズヨのみが満持紀子と対峙し、見事満持を倒す事が出来たのだが……。


7/19 プラーガ帝国の皇帝の名前が間違ってたので修正しました。

ストーリーに変更はありません。

「教訓その1。敵は1人とは限らない。……もう忘れたのかしら?」


 ローブを脱ぎ捨てるのと同時に、手にした魔道具らしき物により周囲を明るく照らし出す。

 それにより、カズヨを襲撃した人物の素顔が露になる。


「くっ…………サリー!」


 カズヨに不意討ちを行ったのは、プラーガ帝国の工作員、サリーというダークエルフだった。

そのサリーとの面識があるのは、カズヨを含むクラスメイト達がプラーガ帝国によって召喚された直後、教育係として付いていたからだ。

 勿論、教育というのはこの世界の知識やら戦闘訓練やらである。


「でもまさかカズヨの方から現れてくれるなんてね、あたしにとってはラッキーだったわ」


「…………どういう意味?」


 やや気分が高揚ぎみなサリーを見て、時間を稼ぐ目的で会話に乗る。

その間に下着に隠していた丸薬を飲み、止血する事も忘れない。

 この丸薬は中級ポーションを濃縮した物で、部位欠損は治らないが、止血くらいなら可能だ。


「だって、カズヨったらいくら探しても全然見つからなかったんだもの、もしかしたら見つけられずに任務が失敗するんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたわ」


 工作員であるサリーは、カズヨ達生き残りを始末するために、アレクシス王国内で捜し回ってたのだ。

当然の如く、プラーガの現皇帝ムンゾヴァイスの指示である。

任務を失敗した者には重い罰が下される事が多く、転移者の彼等に下されたのは死だ。

 特に裏切り者の満持紀子は、処刑の前に拷問を行う予定であったが、どうやらそれは叶いそうにない。


「そこの死に損ないは簡単に見つける事が出来たのに、カズヨったらかくれんぼが上手いんだものねぇ」


 サリーはカズヨに顔を向けたまま、一瞬だけ満持に視線を向け、すぐにカズヨに戻した。


「………………」


 カズヨはボルチェ達の居る闇ギルドに仲間入りしたために、表舞台からは完全に姿を消した状態だったのだ。

 彼等が外を出歩く際は必ず変装を行うし、名前だって偽名で名乗るのは常識となっており、簡単に尻尾は掴ませない。

仕事の依頼人にだって素顔を見せない徹底ぶりだ。

 さらにここ数日は、拠点をアレクシス王国からサクサロッテ共和国に移しており、その間サリーは完全に無駄な時間を過ごす羽目になった。


「でもノリコには感謝してるわ、こうしてカズヨを引っ張り出す事が出来たんだからね」


 サリーは不適に微笑みながら、それでいて油断無く杖をカズヨに向ける。


「ゴフ…………あ、あんだ……わだじを……りようじて」


 仰向けのまま満持が声を絞り出す。

聴こえてくる声の主に心当たりがあったからだ。

その心当たりとは、今まで散々満持を影でサポートしていた闇ギルドの女。

満持の要請でロードアレクシス城に入り込み、警備が手薄だったロッツローニの部屋に忍び込んで、薬を飲ませた人物でもある。

 しかし、その正体はプラーガ帝国の工作員。

満持とも面識はあるが、普段はローブで全身を覆っていたため、満持本人も気付かなかったようだ。


「あらあら、まだお元気そうで。まぁ貴女にも教えてあげるわ。そのまま死ぬんじゃ可哀想だものね」


 そして語り出す、これまでの出来事。

カズヨ達がアレクシス王国に入り込み、破壊工作を行おうとしたが、満持紀子の密告により失敗する。

 アレクシス王国の抗議により失敗した事を知ったムンゾヴァイス皇帝は、裏切り者の満持と生き残りのメンバーを()()する事に決めた。

 その命を受けたのが、カズヨ達の教育係であるサリーと、サポート要員の樋爪潔(ひづめきよし)だった。


 2人がアレクシス王国に入った直後、幸先よくカズヨと満持以外のもう1人の女生徒を見つけ殺害する事に成功し、次に満持を見つける事にも成功する。

 本来ならば直ぐに捕らえるのだが、何やら満持はアレクシス王国の乗っ取りを画策してる事に気付いた。

そこで満持に協力し、アレクシス王国を内部から破壊してやろうと動いたのだ。


「フフ、まさに滑稽だったわ。貴女も公爵も、自分を過信してるんですもの。まるで自分達の考えが上手くいってるように話すものだから、聞いてるこっちが恥ずかしくなったわよ?」


「……おばえ……の、ぜいで……わだじが」


「あら、あたしのせいで貴女がそうなってるとでも言いたいの? それは言い掛かりというものよ。貴女が死にそうになってるのは貴女のせい、あたしは関係ないわ。それに貴女の計画には協力したじゃないの。だから安心して逝きなさいな」


「ぐ…………ぞぉ………………」


 そこで満持は事切れたようだ。

 だがそんな満持には大した興味は無いらしく、サリーはそのまま話を続ける。


「さぁてと、もうすぐ城が大騒ぎになるだろうし、こっちも終わらせちゃおうかなぁ」


「……城が?」



「あ、やっぱ興味ある? ……ま、いっか、教えても。ノリコの計画だとね、ロッツローニ第一王子が他の王族を殺すように仕向けるってものだったんだけど、それだけだとつまんないから墓地に埋ってる死体にも協力してもらう事にしたのよ。つまり城は今頃、アンデッドとロッツローニと公爵の私兵でもうグチャグチャって訳。フフ、どう? 楽しそうでしょ?」


 ニヤニヤが止まらないといった感じに嬉しそうに語る。

 だがそんなサリーにカズヨは水を差した。


「そんな上手くはいかない。多分、ボス(アイリ)はそんな事を許さないだろうし」


「へぇ……ボスね……」


 カズヨの台詞に顔を歪めると先程までの笑みは消え、目付きが鋭さを増した。


「じゃあそろそろ本題に入りましょう。貴女の背後に居るのは誰かしら?」


 カズヨの頭に浮かんだのは、自分よりも年下の女の子。

それも桁違いに強い眷族(けんぞく)を従わせたダンジョンマスターだ。

自分より強いボルチェが絶対に勝てない相手だと力説してたので、間違いないのだろう。

 

「…………何の事?」


 だがカズヨは答えない。

教える義理もなければ、アイリの存在をバラすつもりもない。


「ふーーん、この期に及んで惚けるのね? でももう少し利口になった方がいいわよ?」


「ええ。私もそう思う……!」


 サリーに同調したように見せて、すぐ近くに置かれた黒装束を引っ掴み、そのまま距離をとる。

そして黒装束に携えたナイフを数本取ると、サリーに向かって……、


「くっ!?」


 投げようとしたところで、バランスを崩し、前のめりに倒れる。

 見ると樹木の蔓のようなものが、足に絡まっている事に気付いた。


「教訓その2。相手に隙が無い時に、動くべきではないわ」


 当然その蔓を絡ませたのも、サリーの魔法によるものだ。

カズヨが動き出した直後に詠唱して、ナイフを投擲する前に発動させたのである。


「どうやら自分の立場を理解してないようだから、特別に教えてあげるわ」


 言い終わると直ぐに詠唱に入る。

カズヨはなんとか立ちがろうとするも、片腕が無いのと足を取られてる影響で立ち上がれない。

 その間に詠唱を完成させたサリーは、再び先程と同じ魔法を発動させる。

すると、足下を縫い付けている蔓がカズヨの身体を這うように広がり、全身を締め付けた。


「う……く……ああっ!」


 最早まともに動く事も出来ない。

出来る事は、苦痛に顔を歪めるだけだ。


「これで少しは理解出来たでしょう? あたしも忙しいんだから、手間を掛けさせないでちょうだい」


 サリーは呆れたよう首を振ると、静かにカズヨを見下ろした。


「全く……ヒヅメの奴がドジ踏んで捕まったみたいだから、これから回収しに「知ってる」……何?」 


「ヒヅメキヨシなら……知ってる」


 更に時間を稼ごうとしたカズヨが樋爪潔の名前を出すと、以外にもサリーは食い付きを見せる。


「へぇ……樋爪潔をねぇ……。それも貴女の背後に居る者から聞いたって事?」


「………………」


 カズヨは黙り込むが、確かに樋爪の事はアイリから聞いた事だった。

アレクシス王国に転移させてもらった時に、プラーガ帝国の工作員が国内に紛れ込んでたという話を聞かされていた。

 その際に、他にも工作員が潜んでる可能性を示唆されていたのだが、その工作員が今目の前に居るのだ。


「教訓その3、不用意に敵に情報を与えるな。カズヨ、何も語らないというのは、すべてを語ってるのと同義よ? 貴女の背後に居る者がどれだけ強い存在か知らないけれど、樋爪の事もソイツから聞いたって事ね。そして恐らくだけど、樋爪を捕らえたのもソイツ……どう?」


「………………」


 これにも黙秘するが、サリーによってあっさり看破された事が悔しくて、つい表情に出てしまっていた。

そして樋爪を捕らえたのがアイリだという事も、当然カズヨは知っていた。


「……やっぱりそうなのね。なら益々放って置く事は出来ないわ。樋爪は簡単にやられる程弱くはなかった。ソイツは余程の強者と見たわ」


 不用意に樋爪潔の事に触れたために、次々に情報を引き出されると、カズヨは顔を伏せてしまった。

それも当然悔しさから来るものであった。


「ひぐっ、……ぅああ!」


 顔を伏せたカズヨの身体に、蔓が深く食い込み出した。

いつの間にかサリーが詠唱を完了してたらしく、先程よりも痛みが増す。


「教訓その4、敵から目を離すな。まぁこの場合、意味合いが少し違うけどね」


 完全にカズヨの動きを止めた上で、サリーは初めてカズヨから目を離した。

 そして暗闇に向かって問いかける。


「そこにいるんでしょ? カズヨのお仲間さん。出て来ないとこのままカズヨの首が絞まっちゃうんだけど……どうする?」


「ヤレヤレ、バレてたか……」


 暗闇から姿を現したのは、下の階でグロースガーディアンと闘っていたボルチェだ。

グロースガーディアンは満持紀子を守るのが役目であったため、その()()()()()()()()()()()のと同時に消滅したのだった。

 それを見たボルチェは、恐らく満持が死んだのだと思い、カズヨの下へ駆け付けようとしたのだが、そこでカズヨと対峙する謎の女を見て、暗闇から様子を伺っていたのだ。


「こうして姿を現したんだ、カズヨの拘束を解いてもらえると有り難いんだがな」


「ハッ、冗談。解いてあたしが得るものなんて何も無いじゃない。それにこうしてる今も、カズヨの首が絞まりつつあるのよ? そこを理解した方がいいと思うわ」


「なら知りたい事を教えてやる。カズヨの首が絞まるのを止めてもらいたい」


 あっさりと情報を与えると言ったボルチェにサリーは一瞬驚くが、仲間内の結束が強いのだろうと結論付けた。


「……ま、いいわ。コレの動きは止めてあげる」


 すると掛けた魔法が解除され、蔓の動きが静止した。


「さ、これでいいでしょ? じゃあさっさと話してちょうだい。貴方達の背後に居る者の存在をね」


 ボルチェは一瞬だけ考える素振りを見せ、サリーを見て身構える。


「そうだな……まぁ、一言で言ぁ……とんでもない化け物じみた存在だな……」


「化け物ねぇ……それは今、貴方が()()()()()をとってるのと関係があるのかしら?」


 その時、サリーから見たボルチェは、とても()()()()()をしていたが、それが何なのかは知らなかった。

だが、それこそがサリーの運命を決定付けてしまう要因となった。


「ああ。大有りだよ」






 パァーーーーーーン!






「ガフッ!?」


 王都の夜空に響く一発の銃声。

 その銃声と共にサリーは倒れた。

それを見てボルチェが素早く駆け寄ると、サリーの杖を遠くへ蹴り飛ばす。

 更にカズヨのに絡まっている蔓をダガーで切り裂き、カズヨを救出した。


「教訓その5。強敵は仲間と協力して挑め……だったよね?」


「フフ、そうだった…………わね……」


 ボルチェが自分に向かってくるような事があれば、直ぐにでも攻勢に転じれるように詠唱を終わらせていたのだが、魔法を発動する余裕すら無かった。

 結局サリーも満持の後を追うように事切れたのだった。




「カズヨ、随分無茶をしたな? 利き腕は……その女にやられたのか?」


「うん。でも、大丈夫。ボルチェこそありがとう。あのままだと多分殺されてた……」


 これはカズヨの考えが正しい。

 サリーはカズヨから情報を引き出すために、あえて直ぐに殺す事はしなかったのだ。

サリーがその気なら、最初のウィンドカッターでカズヨの首を切り落とす事も出来た筈だ。


「まぁ無事で良かった。それにしても、ボス(アイリ)には助けられたな」


 ボルチェは改めて手にしてる一挺のライフルを眺めた。

このライフルはアイリからの支給品で、誰でも簡単に狙撃出来るようにエンチャントされた物だ。

 それだけに市場に流れるのは危険なため、紛失の際はアイリへの報告が厳命されている。


『こちらオリベル。プロトガーディアンは全部破壊した。ハットがドジ踏んで負傷した以外は問題ない。そっちはどうだ?』


 下に居る仲間からの連絡だ。

 どうやら向こうも無事らしい。


「こちらボルチェ。ターゲットは始末した。これからそっちに合流した後に、離脱地点まで移動する」


『了解』


 連絡を終えると、ちょうどカズヨも黒装束を身に付けたところだったようだ。


「準備はいいな。報告ついでに迎えに来てもらうか」


 ボルチェは懐からスマホを取り出した。

これも当然アイリからの支給品である。


「こちらボルチェ。ターゲット、オールクリアだ」


 この日、アレクシス王国を掻き乱した騒乱は終結したのであった。


ユーリ「サ〇ー♪ サ〇ー♪ 魔法使い……」

アイリ「それ以上は危険だから止めてね」

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