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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第3章:アレクシス王国の暗部
82/255

カズヨVS満持紀子

前回のあらすじ

 ホークが城の奥地にたどり着くと、そこは集団墓地となっており、地面から這い出るアンデッドが大量に蔓延っていた。

 アンデッドを迎え撃つ王国魔術団に加勢する事にしたホークは、更に奥にいた統率者である死霊騎士を撃破し、アンデッドの進行を防いだのであった。


修正報告

7/14 カズヨの暗闇を照らすトーチに関する加筆と、満持の幻影が消えるタイミングを修正しました。

ストーリーに影響は有りません。

 日が沈み夜になると、街中と言えど人の行き来は疎らになる。

街灯が灯されてる辺りは明るいが、そこから離れると簡単に姿を消す事も可能だ。

主に闇に潜む者達にとっては活動しやすい時間帯と言えるだろう。


 その時間帯を利用し、物影に潜み、辺りを気にしながら移動する黒い影が複数。

平民のみならず、貴族も恐れるという彼等の正体は闇ギルドの構成員。

 そんな彼等のターゲットとなったのは……、


(もうすぐ……もうすぐだからね。江崎君、小宮山君、菅野君。待ってて3人共、必ず……必ず満持紀子を……)








「殺してやる!」


「おいおいカズヨ、あまり大きな声を出すなよ? 今度の邸は警備が厳重なんだからな」


「ご、ごめんオリベル」


 気が昂って声が出てしまったカズヨを、目の前にある邸を見上げながらオリベルが宥める。


 彼等は元々リムシールの街の闇ギルドの構成員だったのだが、ダルタネーロの依頼を受けレミエマのダンジョンを攻略に現れたところをアイリ達の返り討ちに合い、捕まってしまった者達だ。

その際にアイリに対して忠誠を誓わされ、サクサロッテ共和国のソルギムの街で治安維持をしていた。

 そんな彼等の元に再び現れたアイリの指示によって、今日の朝から満持紀子の所在を突き止めるべく動いた。

そして突き止めた場所は、何て事はない貴族街にある邸の内の1つだった。

 キャメルを含む兵士達が満持紀子の所在を突き止められなかったのは、満持が密かに末端の兵士の名義で邸を購入していたからである。


「しかしよ、タイミング的にはギリギリだったよなぁ? まさに神のお導きって奴か」


 彼等が調べたところ、満持紀子は今日中に荷物を纏め、いつでも王都から脱出する事が出来るようにしていたのだ。

まさにハットが言った通り、ギリギリのタイミングだったと言える。


「ああ。それに丁度ボーアロッカが私兵を引き連れて邸を出た後らしいしな。まさに(アイリ)の導きだな」


 そしてオリベルは、ハットとは微妙に違う()と解釈した。


 そんなやり取りをしてた彼等に、別の場所で待機している仲間からの声が聴こえてくる。


『こちらノアーミー、もうすぐ門番が交代する時間よ、準備はいい?』


 彼等の必需品であるインカムから仲間の1人であるノアーミーからの声が届く。


「ああ、こちらは大丈夫だ。いつでも行ける」


 いよいよという感じにカズヨ、オリベル、ハットが立ち上がり、目の前にある邸の門番を凝視する。

 そこへ既に中庭で待機していたボルチェとデールからの声が届く。

ボルチェとデールは、昼間の内に庭師として邸に潜り込んでいたのだ。


『たった今、ヤッコサンが門に向かったよ』


『デール、ヤッコサンではなく普通に門番と言え』


 いつも通りまったく緊張感の無いデールに、ボルチェが突っ込む。


『これよりカウントダウンを開始する。10、9、8……』


 ボルチェがカウントダウンを始めると、仲間に緊張が走る。



『5』



『4』



『3』



『2』



『1』



『始動』


 ボルチェの始動という掛け声と共に動き出す闇ギルドの構成員達。

彼等が向かった先は、今まさに門番が交代のために門が開けられているところだ。


「ふぅ、漸く交代『ドスッ!』ぐふっ……」

「ん? おいどうし『ドスッ!』ごぶ……」


 外に居た門番を、オリベルとハットが手刀で気絶させる。

それに気付かず中から交代の門番が出て来たところを、同じように手刀を打ち込む。

 これにより、ボルチェとデール以外の構成員達は堂々と正面から入る事が出来る。


『こちらオリベル、ターゲット、オールクリアだ』


 門番を片付けたというオリベルからの報告を受け、ノアーミーとヤミーが西から、カンマと和代(かずよ)が東から合流し、そのままボルチェ達が待機する家畜小屋に一気に駆け込んだ。


「門番が戻らないと知ればすぐに気付かれる。各自遅れるなよ?」


 ボルチェの言葉にその場の全員が頷く。

そして速やかに邸へ忍び込んで行った。


「ターゲットが居るのは、恐らく最上階である3階だ。これより速やかに3階へ移動しターゲットを狩る」


 ボルチェが説明しながら先導する。

 満持の居場所を特定出来た理由は、昼間の内に邸の構造を確認していた際に、メイドが飲み物を持って何度も3階へ向かうのを、木窓から見てたからだ。

 更に木陰から、メイドの歩行速度と戻って来るタイミングを大雑把に計算すると、3階の奥の部屋である可能性が高まった。

勿論持っていった相手が公爵の可能性もあるが、満持は大抵公爵の傍にいる事が多いため、どのみち同じ事だ。


 そして無言で邸の中にいる使用人と兵士を物影でやり過ごしながら、無事に階段までたどり着いたのだが……。


「なぁボス、階段の両脇にある魔道具みたいなのって何だと思う?」


 よく見ると、オリベルの言った通り、階段の両脇に棒みたいな物が立っていた。


「見たことない代物だが、メイド達は何もせずに通っていた筈だ。このまま進むぞ」


 そう言ってボルチェが階段に足を乗せたその時だ。


 ビー! ビー! ビー! ビー!


 突然けたたましい音が、邸全体に鳴り響いた。

これは階段の両脇にあったポール、つまり防犯ゲートによるものだ。

昼間のメイドに反応しなかったのは、個別認証で邸の住人と侵入者を識別しているからである。


「チッ! 防犯装置か。このまま一気にかけ上がる。ハット、カンマ、ノアーミー、お前達はここで足止めだ」


「「「了解」」」


 構成員3人を残し、ボルチェ達は2階へと進んで行く。

そして2階に上がり切ると、遠くからこちら目掛けて走って来る兵士と、その後ろから小型のゴーレムの姿が見えた。


「ここもか……オリベル、デール、ヤミー、お前達はここを頼む」


「「「了解」」」


『ハット、カンマ、ノアーミー、2階も同じ状況だ。2階で合流して3階への侵入を防いでくれ』


『『『了解』』』


 ボルチェは素早く1階にいる仲間にインカムで指示を出すと、カズヨを連れて3階へとかけ上がった。


 3階へたどり着くと、そこは1階2階とは異なり、不気味な静けさを保っていた。

誰も居ない……思わずそんな感覚に陥りそうになる。


「カズヨ、気を付けろ。相手は既に俺達を察知している筈だ」


「分かった!」


 階段を上がった先に見えるのは1つの通路のみ。

左右に幾つかの部屋が有るが、人の気配は感じない。

そして通路の突き当たりには、他の部屋とは違う大きな扉が有った。

 それを見て彼等は確信する。


「あそこだな」


「うん……」


 そこにアイツが……満持紀子が居る!

そう思い、突き当たりの扉まで駆け寄ると、思いっきり開け放った。








「ようこそ、汚ならしい侵入者さん」


 そこには満面の笑みを見せる、満持紀子の姿があった。


「紀子!」


 2人の予想通り、満持はそこに居た。

 1人机に寄りかかり、ボルチェとカズヨを品定めするように眺める。

その満持がカズヨと目が合った瞬間、狡猾な笑みを浮かべる。


「あら? 誰かと思えば和代じゃないの。フフ、まだ見苦しく生きてたのねぇ」


 わざとらしく驚いたように見せてカズヨを挑発するが、その間も2人は油断なく構える。


「紀子! 私は貴女を許さない。絶対に……許さない!」


 漸く辿り着いた復讐相手を前にしてカズヨが叫ぶ。

彼女にとっては、同じクラスメイト3人の仇が目の前に居るのだ。


「ふーーん? それで? たった2人だけで私を殺すつもり?」


 本来ならば追い込まれている筈の満持が余裕の表情を見せる事に、2人は違和感を覚えた。

そこでさりげなくその理由を聞き出そうと、ボルチェが会話に交ざっていく。


「随分と余裕を見せるんだな。そっちこそ、護衛も無しに逃げ切れるとでも思ってるのか?」


「あら、心配してくれるの? でも生憎と私に傷をつける事なんて不可能よ。先手を譲るから試してみたらどう?」


 明らかにこちらの攻撃を誘ってる満持の言動を怪しむ2人だが、ボルチェが携帯してた小石を満持に向かって投げてみる。

 すると小石は満持を突き抜けて奥の壁にぶつかった。


「成る程、幻術の類いか」


 幻術――つまり目の前にいる満持は、実際にはそこに居ないという事だ。


「そういう事♪ でもこれだけじゃないわよ? ちゃ~んと私を守るガーディアンが居るんだからさ」


 そう言って腕に嵌めていた腕輪を撫で始めると、腕輪から光が漏れだし、辺り全体を包み込む。

すると窓の外に見えるバルコニーに、何者かが降ってきた。

それは光沢を放つ大剣を携えた、銅像のような騎士だった。


「気を付けた方がいいわよ? その子とっても強いから。魔物で言えばCランク相当はあるんじゃないかしら。ついでに紹介するけど、名前はグロースガーディアンって言う守護者なんですって。折角来て下さったんだもの、少々お相手して下さいな、フフフ♪」


 満持の余裕の表れも明らかになる。

もし本当にCランク相当なら、2人だけだと苦しい闘いになる。

だがこの場で満持が嘘をつく理由がないため、言ってる事は本当なのだろう。

 更にこの場に満持が居ないとなると、早くしなければまた行方を眩ましてしまうかもしれない。


「カズヨ、俺があの銅像を引き受ける。お前はあっちを()れ。上から降って来たところを見れば、ターゲットは邸の屋上に居る筈だ」


「了解!」


 このまま逃がす訳にはいかない。

満持が時間稼ぎを狙ってるのなら、それに付き合う義理はない。

ボルチェがグロースガーディアンの足止めを行い、その間にカズヨが満持を捜し出す事で決まった。


「さぁ私のグロースガーディアン、私を守る為にその力を存分に発揮なさい!」


 余裕の笑みを崩さず、満持の幻影は消え去った。

そして満持の命令で動き出すグロースガーディアンは、2人に向かって駆け出す。

それを相手にするのはボルチェだが、さすがに相手はCランク相当とあって動きがいい。

何とか鍔迫(つばぜ)り合いに持ち込む事が出来たボルチェは、カズヨに向かって叫ぶ。


「今だカズヨ! 屋上へ登れ!」


「了解!」


 カズヨがボルチェの方を見ずにその脇を通り抜け、バルコニーへ飛び出す。

それを見届けたボルチェは、鍔迫り合いから身を引き、距離をとった。

 するとグロースガーディアンは、カズヨが走り抜けた後ろを一瞬だけ気にすると、ボルチェに向かって駆け出す。

既に離れたカズヨよりも、近くのボルチェをターゲットに決めたらしい。


 ブォン!


「っと、危ねぇ。デカイ割には良い動きじゃないか。こいつぁ厳しい……なっと!」


 キィィィン!


「チッ! 頑固オヤジが……」


 無言で大剣を振り回すグロースガーディアンを翻弄しつつ胴体を切りつけるが、ダメージが通ってる感じはしない。

動きが良いだけじゃなく、胴体も硬いようだ。

 因みにボルチェが口走った【頑固オヤジ】とは、物理防御が高く自分の持ってる武器では通用しない硬さの相手に対する嫌味である。


「容易くはないか……なら仕方ない」


 戦況を改善させる為、ボルチェはインカムをONにする。


『ノアーミー、ヤミー、どちらでもいい、増援に来れるか?』


『ごめんねぇ、ちょ~っとばかしモテ期が来たみたいで、手が離せないのよ』


『同じく。プロトガーディアンがウザ過ぎるから、暫く待っててほしい』


 ヤミーの言うプロトガーディアンとは、小型のゴーレムみたいなものであり、普通の騎士よりも防御力が遥かに高いのだ。

 故に他の面子もプロトガーディアンに手こずっていた。


『了解』


 この分だと増援は暫く見込めない。

出来れば魔法が得意なノアーミーかヤミーに頼りたかったが仕方ない。

ならば今出来る事をするのみ。


「時間を稼ぐか……」


 そう呟くと、短剣を構え直した。






 ボルチェがグロースガーディアンを相手に鍔迫り合いに持ち込んだのを見て、カズヨはバルコニーへと飛び出す。

 辺りを見渡すと、すぐ側に備え付けられてたハシゴを発見し、屋上へ登る事が出来た。

 だが周囲は暗く、遠くに街明かりが見えるだけで、注意しなければ地上に落ちてしまいそうだ。


「いったいどこに……」


 注意深く辺りを見渡すが暗くてよく見えない。

 そこで耳を澄ましてみると、前方からかすかに何らかの音が聴こえて来るのが分かった。


 そこでカズヨは、足音をたてずにゆっくりと音のする方へ近付く。


(確かこの辺りの筈……)


 そう思い立ち止まるカズヨ。

 直後に嫌な予感を感じとるとすぐに飛び退く。

すると先程立っていた場所は泥々に溶かされた跡が残っていた。

 しかしどういう訳か、その跡は徐々に修復されていくのがハッキリと見てとれる。


(建物が勝手に修復される? いや、そんな事よりもさっきの魔法は……)


 何らかの魔法なのだと思ったが、それよりもその魔法を放ってきた方に注意を向けた方がよさそうだ。


「トーチ」


 辺りを明るく照らす魔法であるトーチを、魔法が放たれた方に放り投げ照らした。

魔力が乏しいカズヨには、10秒程照らす事しか出来ないし乱発も出来ないが。

 そしてそこには……






「へぇ……中々いい勘してるじゃない」


 神々しい――というよりも神秘的な雰囲気が感じられる、先が鋭く尖ったロッドを持った満持紀子がそこに居た。


「紀子! ……何なのそれは?」


「ああコレ? 裏オークションで購入した、昔の勇者パーティの一員が装備してた貴重品よ。ロッドを振るうだけで、マッドプロミネンスって相手を溶かすグロい魔法を放つのよ。凄いでしょう?」


 裏オークション……文字通り非公式で行われる会員制のオークションで、人前には出せない()()が色々と出品されている。


「プラーガ帝国からの横流し品なんですって。ま、そんな事は私らには関係ない事よね。特に……」


 再びロッドに光が集まりだし、カズヨ目掛けて放たれる。


「これから死に行くアンタにはね!」


 先程よりも集まった光の量が多いと思ったカズヨは、思いっきり横へと飛んだ。

 すると予想通り、先程よりも広範囲で建物を溶かしていた。


「言っとくけど、建物が壊れるのを期待しても無駄よ? この邸、魔法攻撃を行えば建物に吸収して修復しちゃうから」


 これはついさっき目にした事なので、特に驚きはしない。

だがこれで、満持が好きなだけ攻撃魔法を放てるという事がハッキリした。


「なら……これで!」


 カズヨが素早くナイフを投げつける。

 満持が魔法を放つ瞬間に見える光を頼りに、そこへ向かってナイフを放つが……、


「っと、危ないわね!」


 こちらの動きが見えてるようで、命中するには至らない。


「このぉ、いい加減くたばりなさい!」


 そしてまた満持が攻撃魔法を放ってくるが、先程からこれの繰り返しだ。


(おかしい……同じ暗闇に居るのに、紀子には私が見えてる?)


 回避する動作に慣れてきたためか、幾分か冷静になったカズヨは、満持に自分の動きが見えていると感じた。


(いったいどうして……)


 理由は分からない。

だが自分の動きが見切られているのは間違いなかった。

しかし、そんな思考をしてる最中(さなか)も、満持は攻撃魔法を放ってくる。

 そしてついに膠着(こうちゃく)状態だった戦況に変化が訪れる。


「ガハッ!」


 悲痛な声が暗闇に響く。

そしてその声の主はカズヨであった。

 その声を聴いた満持はこれ以上ない嬉しそうな笑みを浮かべつつ、カズヨの下へと近付いていく。


「フッ、案外しぶとかったわね。でも結局最後に勝つのは私。アンタは私の踏み台でしかないのよ!」


 そんな勝ち誇った表情の満持に問いかける。


「1つだけ教えてほしい。なんで私達を裏切ったの?」


「は? 人生最後の質問がそれ? ま、知りたいなら教えてあげるわ。私はね、勝者に成りたいの」


「勝……者?」


「そ、勝者。私が他人の上に立ち、私が国のトップになる。つまり、私の意思1つで国が動くようにするのよ、素晴らしいでしょ? そうしたら軍備を整えて、私を無断で呼び出したプラーガ帝国を潰してやるのよ!」


「そんな事の……為に」


 落胆したようなカズヨの声は気にせず、満持は続ける。


「私にとっては重要な事なの。でもそのためにはアンタ達は邪魔だったからね。勝者は1人でいいの。そしてアンタは敗者。分かった?」






「そんなの……分かんないわ……」


「そう……。ま、分かんなくてもいいわ。アンタが理解しようがしまいが、今更どうでもいい事だし」


 そしてとうとうカズヨを見下ろせる位置までやって来た満持は、ロッドの先をカズヨに向けた。


「精々あの3人とあの世で仲良くするといいわ、それじゃね、永遠にさようなら」


 そう最後の別れを告げると、カズヨにロッドを突き刺す。

 だが……


「っ!?」


 そこで漸く気付いた。

 カズヨだと思ってたものが()()()()()だという事に。


「ええ。永遠にさようなら」


 ザシュ!


「ガハァッ!」


 カズヨは、正面から満持の喉元目掛けてナイフを突き立てた。

深々と突き刺さったそれは、致命傷足り得ると一目で分かる程だ。

 そして満持は、ゆっくりと仰向けに倒れた。


「な…………どう……じで……」


 何故カズヨが居た筈の場所にカズヨが居なかったのか……それに気付かなかったため、満持はカズヨの案じた一計に嵌まったのである。



「ふぅん……。貴女の人生最後の質問は、それでいいのね?」


 そしてカズヨは淡々と答える。

 実はかなりギリギリのタイミングでカズヨは気付いたのだ。

カズヨが身に付けている黒装束が、いつの間にか微かに光を放っている事に。

 理由は分からないが、恐らくグロースガーディアンが召喚さてた時に放たれた光が原因だと思われた。


 そこで覚悟を決めたカズヨは、黒装束を素早く脱ぐと、攻撃魔法が放たれるのを待った。

下着姿だが、気にしている余裕は無い。

 そんなカズヨに何度目かの攻撃魔法が飛んでくる。

それを上手く避けて着地すると、あたかも魔法が命中したかのように見せかけて、地面に黒装束を敷いた。

 敷く事により、うつ伏せか仰向けに見えるであろうと考えて。

そこへそうとは知らずに満持が無警戒に近付いて来たのだ。


「ぞんな……ごどで……」


「これで貴女はもう終わり」


 そして立ち去ろうとしたカズヨだったが……






「ウィンドカッター」


「ギャァァァァッ!!」


 突然背後から聴こえた声と同時に、風の刃がカズヨの右腕を切り飛ばした。


「これで貴女も終わりね」


 慌てて距離をとり後ろを振り向くと、そこにはローブを纏った人物が立っていた。


「お、お前は……」


 激痛に耐えながら声を絞り出す。

 するとあっさりとローブを脱ぎ捨てた。


「おひさしぶり……かしら?」


 カズヨには見覚えがあった。

いや、忘れる筈もないその人物は……






「プラーガ帝国の……工作員!」


 利き腕を失ったカズヨは、絶体絶命のピンチに陥ってしまった。


突然けたたましい音が、邸全体に鳴り響いた。

これは階段の両脇にあったポール、つまり防犯ゲートによるものだ。

昼間のメイドに反応しなかったのは……、

ホーク「分かったで。この防犯ゲートはインポやな!」

アイリ「下ネタは止めなさい!!」

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