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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第3章:アレクシス王国の暗部
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王国魔術団

前回のあらすじ

 ザードがたどり着くと、既にボーアロッカは死亡しており、薬により豹変したロッツローニがバニラを斬り伏せようとしてるところだった。

空かさず剣を受け止めたザードはロッツローニを斬り伏せ、バニラ達の危機を救う事に成功する。

 一方のホークは、城の奥地で起こっている戦闘に目を向け、そこへ駆け付けるのであった。

「さてと、こっちも急ぐでぇ」


 ザードを城に放り投げた後、ホークは城の奥地へと進んで行く。

その先にあるのは間違いなく戦地……即ち何者かと何者かが戦っているという事だ。


「せやけど、よく考えたらどっちに加勢すればええんやろな?」


 結局のところ、その戦地に着いたとしてどうすれば良いのかという事になるのだが、もしもアイリの要請とは全く関係なかった場合、最悪黙って見学するしかないかもしれない。


「ま、ええか。成るように成るやろ」


 しかし楽観的なホークは、深く考える事を放棄して先に進むのであった。

 すると見えてきたのは、そこらじゅうの地面から這い出てくるゾンビやスケルトンの姿であった。

どうやらそこら一帯は墓場になっているようで、恐らく歴代の王族や殉職した兵士達の墓なのだろうと予想出来た。


「うわぁ……こらごっつぅキツいでぇ。やっぱ夜に墓場なんかに来るもんちゃうなぁ」


 あちこちに(うごめ)くアンデッド達は一斉に城を目指しており、明らかに()()()()何かがあったのだと(うかが)える。

 そしてそのアンデッドの進行を阻止しようとしてるのがローブ姿の魔術師達であった。


「こりゃ加勢する方は決まりやな」


 そう言うとホークは魔術師達に加勢すべく駆け出した。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ホークが現場に着く、遥か前の時間帯。

魔術師達はいつものように城の地下で研究を行っていた。

地下で研究と言うと聞こえが悪いが、彼等が研究を行う環境は非常に整っていた。

 因みにだが、国の兵士や貴族達からの認識は以下の通りだ。


①暗くてジメジメした研究場所

②犯罪者のモルモットが大勢

③闇ギルドに技術提供を行っている

④王国を裏から操っている

⑤魔術団の団長の顔が怖い


 このように噂だけが先行した結果、有りもしない事が(ささや)かれているのである。

ではどれだけ違いがあるのか。


 まずは①の暗くてジメジメした研究場所だが、とんでもない! まず研究室の中は限りなく明るい。

暗い場所だと物や文字が見辛いのだから当たり前だ。

 更にジメジメした場所という事だが、これも有り得ない。

湿気や埃は薬品の天敵だ。

湿度や温度は常に適正を保っており、清掃も隅々まで行き届いている。

 もしも埃を発見された場合は、グリムロ団長からの有り難い拳骨が待っているぞ!


 次に②の犯罪者のモルモットが大勢との事だが、バカも休み休み言ってほしい。

なんでそんな連中を管理するのに人員を割かなくてはならないのか、まるで分からない。

 よく考えてほしいのだが、犯罪者ならば当然監視員が必要になるし、死なないように賄う必要もあるのだ。

それに万が一モルモットが暴走してしまったら、間違いなく貴族からの横槍が入るだろう。

下手をすると、研究結果を根こそぎ横取りされかねない。

 これだけのリスクを犯してまで研究を続ける事が出来るのか……答えは当然ノーだ。


 では続いて③の闇ギルドに技術提供を行っているという噂だが、そんな事をしてなんの得があるというのか。

 まぁこれに関しては噂の発端となる出来事があったのは事実だが、それは暗殺を決行してきた闇ギルドの構成員を捕らえたからだ。

ちょうどその時に人体の実験を行う必要性に迫られてたため、これ幸いと捕らえた構成員を()()()()()()()()()()()()()した結果、色好い返事を貰えたので、実験に協力してもらったのである。

 なので、決して技術提供を行ってる訳ではないのだ。


 そして最後の⑤についてだ。

誰が言ったか知らないが、魔術団の団長の顔が怖いという噂まで流れているのだ。

はっきり言って、余計なお世話である。

グリムロ団長の顔が怖いのは見れば分かる事なので、一々口に出す事ではない。

 因みに⑤に関しては最近出回っている噂なので、今現在出所を全力で調査中である。

勿論グリムロ団長の指示だ。


 とまぁ矢継ぎ早に説明したが、以上の事から出回ってる噂の大半は真っ赤な嘘なのだ。

⑤に関しては否定しないが……。




 ……ああ、言い忘れてたが、④に関しての余計な詮索は不要だ。

君も出来るだけ長生きをしたいだろう?


「おい、お主、何をさっきからブツブツと言っておるか」


「す、すみません、グリムロ団長。少しばかり現状の説明を……」


「馬鹿者! 口を動かすよりも手を動かさぬか!」


 ゴツン!


「いでっ!」


 ちょっと目を離すとすぐにサボろうとする者が出よる。

まったく、最近の若いもんは……って感じに思いっきり拳骨を食らった。

 等と嘆いてる場合ではなかったようだ。

席を外してた1人が血相を変えて研究室に飛び込んできたのだ。


「たたた大変です! グ、グリムロ団長! アンデッドが……アンデッドが大量に……」


「落ち着かんか馬鹿者が! ……それで、アンデッドが出たと言うのか?」


「はい! 城の裏手の墓から次々とアンデッドが這い出て来てるのです!」


 アンデッド……不死者とも言われる存在で、瘴気(しょうき)という空気中に漂う不純物を死体が多く取り込む事により、アンデッド化すると言われている。


「城の兵達はどうしている?」


「そ、それが、ボーアロッカ公爵が謀反を起こし城内になだれ込んでるため、そちらの対応に追われてるようです!」


「なんと!」


(この図ったようなタイミング……間違いなく裏で動いてる者がおるのぅ)


 だが今はそんな詮索をすべきではない。

アンデッドが蠢いてるのなら討伐しなければならないだろう。

 グリムロは余計な思考を振り払い、団員達に命ずる。


「研究は一時中断する。アンデッドを片付けに行くぞ!」


 団長であるグリムロの命令で各自の行ってた研究を中断し、身支度を整えるとすぐに墓地へと向かった。






 グリムロが30人程の団員を引き連れて墓地へ赴くと、既に這い出たアンデッドが城へと距離を詰めていた。

それも例外なく全てのアンデッドが。

だがそれを見てグリムロは確信した。


(そもそも低級のアンデッドに知能は無い。だが目指す方向は全て城の方角。それ以外は城壁で覆われておる事を考えれば、何者かが誘導しているか、命令を下したという事だが……)


 だが周囲を見渡しても術者なり統率者らしき存在は確認出来ない。

居るのは団員の魔術師と、おぞましいアンデッドのみだ。


(まさか遠隔操作を行っている訳ではあるまいな!? 技術大国として台頭してきている魔導国家ガルドーラならば、そのような魔道具が存在してもおかしくはないか……)


 グリムロが思考を巡らせている間にも、各々の団員達がアンデッドを焼き払う。

勿論グリムロも行ってるのだが、何度やっても切りがない状態だ。


「団長、おかしいです、既に数百体のアンデッドを燃やしましたが、一向に出現するペースは落ちません!」


 まるで何度でも(よみがえ)るかのように、いくらでも溢れてくるようだ。

先が見えない焼却作業に、団員が異常さを訴えてくる。


「分かっておる! 分かっておるが、その核となる存在が近くに居らん以上どうする事も出来ん!」


 現状を打開しようにも、その目標たるものが無ければ行き詰まる。 

 そうなると団員達にも綻びが生じるようになり、とうとう1人の魔術師がスケルトンの接近を許してしまう。


「カカカカカッ!」


「ぎゃっ! ……くそぅ……」


 致命傷は避けたが、既にスケルトンは槍を突き出しており、今にも矛先が魔術師に吸い込まれそうになっている。

まるでスローモーションのように魔術師の胴体に食い込もうとしてる最中(さなか)、唐突にその槍が弾け飛んだ。

しかも飛んだ先に居た、スケルトンの頭に突き刺さるというおまけ付きだ。


「よぅ、危なかったやん!」


 ふと魔術師が声のする方を見ると、そこにはチャラそうな赤毛の男が立っていた。


「た、助かった、感謝する」


 魔術師は頭を下げて礼を述べたが、この光景を見た一般兵や騎士達は、驚いて目を見開くだろう。

何故なら、魔術師と他の城勤めの者達との確執は何年も前から広がっており、魔術師は陰口を叩かれる半面、他者を見下すようになっていったのだから。

その魔術師が頭を下げるなど有り得ないという事が既に一般常識となっていた。


「これ、ボヤッとするでない。傷の手当てをして、すぐに隊列に戻るのだ!」


 和んでるところへグリムロ団長からの激が飛ぶ。


「も、申し訳ありません!」


 慌てて魔術師は傷の手当てをするべく後方に下がった。


何方(どなた)かは存ぜぬが、助太刀感謝しますぞ。」


「なぁに、かまへんかまへん。ワイはホークっちゅう(もん)やが、アイリはんに頼まれたんや、なんとか公爵言うんが謀反を起こしよったっちゅー話だったんやが、公爵はんはアンデッドなん?」


 そんな訳はない、公爵は生きてる人間だ。

 ……つい先程までは。


「いや、ボーアロッカとは別口だろうな。だが肝心の術者か統率者が見当たらなくてな、アンデッドが一向に減る気配を見せん」


 要は倒すべき存在が見つからないため、アンデッドが無限に涌き出てくるという。

そのキーとなる存在を打倒できれば状況は改善される筈だ。


「ところでお主、先程アイリと言わなかったか?」


「せやで。ワイはアイリはんの眷族(けんぞく)やからな、アイリはんの指示でこうしてやって来たんや」


「そうであったか! それは頼もしい限りだ。しかし……」


 現状はひたすらアンデッドを焼却するという状況なだけに、ただここに居るだけでは状況改善は見込めない。

どうしたものかとグリムロが頭を悩ませてると、ホークの口から解決の糸口となるキーワードが飛び出した。


「墓地の奥の方って、やっぱり王族の墓が有ったりするんか?」


「うむ、その通りだが……」


(まて……もしかするとこれは……)


 術者が居ないなら、上位のアンデッドが存在するのではと思ったのだ。

つまり統率者なのだが、そうなると上に立つ者というのは王族という事になる。


「そうか、コヤツらを指揮してる王族が、奥に居るのだな!」


 戦の大将であれば、後方に陣取ってそこで指示を出す筈だ。

ならばそこへ赴き大将を討ち取れば、勝敗は決する。


「ほんならワイが行って、大将をボコってきたるで!」


「それは有り難いが、このアンデッドの群をどうやって掻い潜るつもりなのだ?」


 今も見渡す限りアンデッドが巣食っており、ここを突破するのは容易ではない。

 だがホークは自信満々に答える。


「こうするんや!」


 ホークは上空へ飛び上がると、そのまま墓地の奥へと飛び去った。

それを眺めていたグリムロは、気を取り直してアンデッドの焼却に取りかかった。






 飛び立ってすぐ、ホークの目には1体の死霊騎士(デスナイト)が立っているの確認する。


「あれがボスって奴やな」


 死霊騎士は一際大きい墓石の上に立っており、恐らくその墓石の下で眠っていた王族なのだろうと予想出来る。

 ホークは墓石に刻まれた名前を読み上げた。


「ガルドードス・サーク・アレクシスって長いやん! お前さんはガルドードスでええな?」


 言葉が通じてないのでホークの呼び掛けには反応しないが、代わりに闇魔法を放って来た。


「危な! ブラッドペインたぁえげつない魔法使うやないか!」


 そんなホークの抗議を無視して次々とブラッドペインを放ってくる。


「だぁぁぁぁ! ポンポンポンポンうっとおしいわ! ウィンドカッター!」


「コアァッ!」


 ブラッドペインを回避しつつウィンドカッターを放つが、闇のシールドによって防がれてしまった。


「クソが! ならこれでどうや!? ドローサイクロン&ウィンドスマッシュやぁ!」


 ドローサイクロン……発動させた周囲のものを1ヶ所に吸収する魔法だ。

そして吸収するのは、周りを蠢くアンデッド共だ。

その吸収したアンデッドを上空に集め、それをウィンドスマッシュの一撃でガルドードスにぶつける戦法だ。


「いてまえ!」


 アンデッドの塊はウィンドスマッシュにより加速し、ガルドードスに直撃する。

どうやら先程の闇のシールドは、物理攻撃には効果が無いらしい。


「コアァァァァァァァ!」


 直撃を受けたガルドードスは後方にぶっ飛び、墓石から落下する。


「しゃあ、作戦勝ちや! このまま一気に止めやぁ!」


 場当たり的な作戦が成功したホークは、気分を高揚させガルドードス目掛けて急降下する。

 そのガルドードスは、アンデッドの塊に押し潰されそうになりながら、ようやく塊から這い出たところだった。


「もろたで! シャイニングワイルドクローやぁ!」


 急降下してきたホークの爪が、ガルドードスの胴体をくり貫いた。


「コオォォォォォォ……」


 そして術無(すべな)くガルドードスは光の粒となって消えていった。


「貴様の名、墓石に刻んで語り継いでくれよう……なーんてな♪」


 因みに、既に墓石に刻まれている上、王族のため語り継がれている。


ホーク「タイトルおかしいやん! そこはホークVSガルドードスちゃうんか!?」

作者「…………なんとなく?」

ホーク「糞ぁ!!」

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