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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第1章:外の世界
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冒険者パーティ

「あの~、本当に大丈夫ですか? せめてもう少し討伐依頼で経験を積んでからでも……」


「ありがとよ。だが心配はいらねぇぜ、もうすぐDランクに成れるんだ、護衛依頼くらい問題なくこなしてやるぜ!」


「そうですか……」


 俺たちは【竜の息吹】っていう冒険者パーティを組んでいる。

リーダーは俺、カインだ。

他は前衛のガルベスに後衛のメージェを加えた計3人でのパーティでやってる。


 さっき受付嬢に止めた方がいいと言われたが冗談じゃねぇ、いつまでもEランクで(くすぶ)ってるつもりはねぇんだよ。


「お前らもそう思うだろ?」


「さぁ……な。やってみないことには何とも言えんな……」


 相変わらず口数の少ないガルベスだが、反対ってわけじゃなさそうだ。


「私も反対はしないけど、いざとなれば逃げることを考えた方がいいわね」


 おいおい、何を弱気なこと言ってやがる。

ゴブリン程度しか出ない街道の護衛なんざ楽勝だろうがよ。


「そんな機会は来ねぇから安心しろよ。それよりも依頼人はまだか?」


 指定された時間にはまだ早いが、俺はさっさと出発したくてウズウズしていた。


「あ、あれじゃない? 確か荷馬車と依頼人の護衛だったでしょ?」


 メージェが指した方には、遠くから荷馬車を引いてくるやたらと太ったおっさんが見えた。

周辺には他に誰もいない。

まさか1人で街から街へは行かないだろうから、あのおっさんで間違いなさそうだ。


「お~い、アンタが依頼人のドルトンさんかい?」


 おっさんは掛け声に気付いたようで、こちらに近付いてきた。


「どうもお待たせしました。ラムシートまでの護衛を依頼したドルトンです」


 おっさんは汗っかきなのか、割と涼しい日中にも拘わらず、ハンカチで顔を拭いている。


「冒険者パーティ【竜の息吹】のリーダーをやってるカインだ宜しくな!」


「……ガルベスだ。宜しく頼む」


「メージェよ。宜しくねドルトンさん」


 互いに自己紹介を済ませ、すぐにラムシートに向けて出発した。




「おらよ! っと」


 ズシャッ!


「ギィギャ……」


 出発早々、飛んで火に入るなんとやらで、身体を動かしたくて堪らなかった俺の前に無謀にもゴブリン3体が出現した。


 だが結果は見ての通り、強引に力押しで1体を斬りすてると、ガルベスとメージェも1体ずつ片付けてくれた。

 念のため周囲を見渡すが、もうゴブリンの気配はしない。


「ドルトンさん、大丈夫みたいだぜ」


「はい、ありがとうございます」




 思えばこの時すでに、浮き足立っていたんだろう。

その2日後に、命の危機を感じることになろうとは夢にも思わなかった。




 10匹以上のゴブリンの集団に襲われ、唯一の魔法士であるメージェが魔法を連発した結果、早々と魔力切れを起こしてしまい、俺とガルベスも疲労が蓄積されつつあった時、ゴブリンに背後をとられてまさに万事休すって場面で、颯爽(さっそう)と登場した美少女に助けられた。


 何故だか緊張して噛んじまったんで、もう一度改めて礼を言う。


「すまねぇ、今回はマジで助かったぜ!」

「助太刀感謝する」

「ありがとうお嬢さん。貴女とっても強いのね!」


「いやぁ、まぁ、それほどでも……あるかな?」


 感謝の言葉を贈られて、微妙に照れてるその姿は年相応の美少女であって、先程まで目で追えない速度で剣を振るい、凄まじい威力の魔法を放った少女と同一人物にはとても見えない。


「ところで馬車の中の人は大丈夫ですか?」


「「「あっ!」」」


 すっかり忘れてた!

この少女の戦闘に見惚れてて、護衛依頼の依頼人のことが頭からスッポリと抜けていた。

だが幸い馬車には傷一つ無いので、依頼人のドルトンさんは無事だろう。


「ドルトンさん、敵は殲滅しましたよ」


 戦闘終了を馬車の外から伝えると、中から依頼人であるドルトンさんが、重そうな体を揺らしながら出てきた。


「も、もう大丈夫なのかい?」


「はい、大丈夫です。こちらのお嬢さんが偶然通りかかってくれて、助太刀してくれました」


「この子がいなかったら危なかったわぁ……」


 ちらりと少女の方に視線を向けて、驚いた表情を見せるドルトンさん。


 気持ちは凄くわかる。

こんな只の村娘にしか見えない少女に、助太刀されて助けられたと言われれば、冗談にしか聴こえないだろう。

見た目だけなら有り得ないと笑われるところだが事実なのだ。

間違いなくこの少女は我々の命の恩人だ。

最初は驚いてたドルトンさんだが、直ぐに気を取り直していつもの商人顔に戻る。


「御助力感謝するよ。私は商人のドルトン。君が来ないと危ないところだったようだ」


「いえいえ、あ、私はアイリっていいましゅ」


 この子も噛んだ……。

だがなんとも言えない可愛さがある!

 ……いやいや、何を言ってんだ俺は。


「ところでアイリさんはどちらに向かわれるのですか? もしラムシートに向かうのでしたら、是非護衛を頼みたいのですが。勿論報酬は出しますよ?」


 ここぞとばかりに護衛依頼の申し込みか。

本来なら冒険者ギルドを通して行うのがセオリーだが、必ず厳守しなければならないわけではない。

自分の命を他人に預けるわけで、護衛に不安を覚えたから、途中で増員したって話なら問題はない。

魔物や盗賊との戦闘で、欠員がでた場合も同様だ。

特に今回は加勢してくれなければ死んでた可能性がある分、強気には出られない。


 それに正直言ってアイリちゃんが護衛に加わってくれた方が俺としては助かる。

たとえ報酬が減ったとしてもだ。

これは実際に命の危機に遭遇しないと理解できんだろうが。


「実は私たちもラムシートに向かう途中なんですよ」


「「私たち?」」


 俺とドルトンさんは同じことを疑問に感じたため、思わず聞き返してしまった。

だが考えてみれば、魔物や盗賊が出そうな場所を1人で行動してる方がおかしい話で、他にもパーティメンバーがいると考えるのが普通だ。


 いや、このアイリちゃんの強さも、十分過ぎるほどおかしいのだが。


「ほら、あっちから歩いてきてるのが、私のパーティメンバーです」


 アイリちゃんが指さした方を見ると、少し離れた所からこちらに向かって歩いてくる3人の女性たちを発見した。

その女性たちに向かってアイリちゃんは手を振っている。


 よく見ると先頭を歩いてる美少女は、髪の色こそ違うもののアイリちゃんそっくりだ。

もしかして双子か?


 その後ろにこれまた庶民的な服装のショートカットの美女。


 さらにその後ろから、吟遊詩人風の美少女がついてくる。


 なんというか、美女美少女のパーティは華やいでていいよな。

そんなパーティを組みたいと思うのは、男なら当たり前だと思う。

いや、今のパーティは解散するつもりはないぜ?


「お姉様、どうやら間に合ったようですね」


「ええ、アンジェラが教えてくれたおかげよ」


 どうやらこのパーティの年長者と見られる美女のアンジェラさんが、ゴブリンの襲撃を知らせたらしい。


「俺はこの冒険者パーティ【竜の息吹】のリーダーでカイン、こっちのゴツいのがガルベス、その隣がメージェだ。改めて礼を言わせてくれ、ありがとう!」


「ククク、そうかそうか。何、妾は教えただけで、実際に助けたのは(しゅ)……コホン、アイリじゃがの」


「そうですね~♪ 話を聞いて直ぐに駆け出していきましたよ~♪」


 仲間に持ち上げられ、再び照れるアイリちゃんはとても可愛い。

後数年すればドストライクに入るところだ。


「みんな、この人たちもラムシートに向かうみたいだから、一緒に行くってことでいい?」


「いいと思いますよ、お姉様」

「アイリの好きにするとよい」

「~~~♪」


「仲間もいいって言ってるので、その護衛依頼受けます」


「いやぁ助かるよ! ラムシートまで残り2日くらいだが、よろしく頼む!」


 どうやらアイリちゃん以外の仲間の了承を得られたようだ。

というか、金髪の子はさっきから鼻歌を歌ってるだけのようだが……。

 こうして護衛依頼の話も纏まり、ラムシートに向けて再び動き出した。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



『しかし宜しかったのですか? 一緒に行動するということは、あまり貴重な()()()()は公にできませんが……』


『大丈夫よ。寧ろ人脈を作るなら最善の選択だと思うわ』


 情報収集ってことなら、冒険者や商人と友好的に接するのは効率的のはず。

ちなみに今は念話でやり取りをしてるので、あの人たちには聴こえてない。

 確かにアイカの言うように、コンビニ弁当やスイーツ等の贅沢品は出せないわね。


『アイカ、この依頼が完了するまでコンビニ弁当は禁止ね。念のため用意しといた干し肉と黒パンで我慢して』


『そ、そんな! 横暴です、お姉様!』


 横暴ってあんた……。

 しょうがないじゃない、他人の前で見たこともない食料品を出すのは(はばか)られるわ。

あからさまにガックリと肩を落とすアイカを背景にしつつ、ラムシートまで続く道を進んだ。


 途中何度か魔物に襲われたけど……


「ファイヤーボール!」


 ドゴーン!


「ピギィィィ……」


 特に問題はなかった。

今もオークがファイヤーボールで丸焼きになったけど、これって焼き肉なんだろうか?


「アイリちゃんは食わないのか? オークの丸焼きはメチャメチャ美味いんだぜ?」


 などとカインさんが言ってるけど、人形(ひとがた)に見える時点で食べる気になれない。


 あ、そうそう、問題と言えば、夜中にこっそりとカスタードプリンを食べてるアイカを発見したのよ。

見つかったら大変なんだから止めなさいって言ったら、『鬼! 悪魔! 鬼畜!』と言いたい放題言ってふて寝した。

 もう本格的に中毒症状が出てるようで、この先止められそうにない……。


 問題繋がりで、アンジェラも夜中にこっそり狩に出かけてたことが発覚した。

理由を聞いたら、新鮮な肉が欲しかったとのこと。

 こちらも注意したら、『干し肉は飽きたのじゃーーーっ!』って言い出して駄々をこねた。

いい加減に自重しなさいあんたら。






 そんなこんなで2日目の午後。


『お姉様、ラムシートの街が見えてきました!』


 やたらとテンションの高い(念話)で話すアイカだが……。


『普通の会話なら念話じゃなくてもいいのよ? まぁいいんだけどね』


『すみません、つい♪』


 余程干し肉と黒パンから解放されるのが嬉しいらしい。

一方の私の方はというと、初めての外の街に心を躍らせていた。


『まずは冒険者ギルドね』


『冒険者登録じゃの。妾も登録してみるかのぅ?』


 それは止めたほうがいい気がする。

ステータスを測定する魔道具があったら、確実にヤバい……。


『もし紙に書いて終了ってだけなら問題ないんだけど』


『ふむ。ならばその時は登録するとしよう』


『私も~、年齢以外の記入なら~、登録したいです~♪』


 意外なことに、セレンまで登録したいと言ってきた。

別にダメってことはないからいいんだけども。

 でもそうなると……


『パーティ名を決めといた方がいいわね』


 パーティを組むならパーティ名は必要になってくるだろうしね。


『お姉様、パーティ名ならお任せください。わたくしたちにピッタリの呼び名を閃きました』


 アイカは自信たっぷりに言ってくる。

そこまで自信があるなら公表してもらおう。


『その名も【スイーツレディース】です!』


 うん、実にアイカらしいパーティ名だと思うけど……。






 パラリラパラリラパラリラ~!


「オラオラどけどけぇ! テメェら全員モンブランみたいにされてぇのか!」

「雑魚はお呼びじゃねぇんだよ、大福共!」

「打倒王国! イチゴムースで書きなぐってやんよ!」


 女の暴走族がスイーツにがっつきながら暴走してるのを想像してしまうから却下ね。


『妾ならこれだの、【新鮮生肉】じゃ』






 ワイワイ! ガヤガヤ!


「らっしゃい、らっしゃい、らっしゃーい! 仕入れたばかりの新鮮生肉はここだよぉー!」


「おおゲンさん、今日もいつもの新鮮なやつを頼むぞ」


「へい毎度!」


 なんかいい感じに取り引きされてるだけだから却下。


『私なら~、コレですね~、【永遠の17歳】です~♪』






「皆の者ーっ! 我らの女神、アベナーナ様の御降臨であーーる!」

「「「オオオッ!!」」」


「アベナーナ様の有り難ーーーぃお言葉を聞くがいい!」

「「「ウオオオッ!!」」」


「キャハ♪」


 なんか怪しい宗教団体に見えるから却下。

というか、アベナーナって誰?


 どうやら私が決めないといけないらしい。

歩きながら考えとこう……。


 そうこう思案してるうちに、街に入るために立ち並ぶ人の列の最後尾についたのだった。


アンジェラ「アンジェラじゃ、宜しくたのむぞ」ボイン!

メージェ「よ、宜しく……」チンマリ

セレン「心の友よ~♪」ペタン

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