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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第3章:アレクシス王国の暗部
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内政官キャメル

前回のあらすじ


樋爪潔「お前の素性をブヘッ!」

 KO!

レミエマ「アイリさん、キャメルさんに会って下さい」

 オケ!

キャメル「あたしの言った事忘れてたわね?」

 サーセンw

「お姉様、ドローンで確認したところ、王都では入場するにあたって厳しい審査を行ってるようです」


「うーん、上手く入れるか微妙ね」


 再度私達は王都に向かってる訳だけど、その王都への入場審査が厳しく行われてるらしい。

 もしかしたら、先に帰還した騎士達に私達の風貌(ふうぼう)を聞いてたら面倒臭い事になりそう。


「ま、その時はその時に考えましょ」


 そしていよいよ街門が見えてきて最後尾に並ぶ。

最後尾といっても先に並んでるのは2人だけなので、すぐに私達の番になった。


「よーし、次の者は……ん?」


 ん? ……って何よ?

何か文句でもあるの?


(なぁ、コイツらってあの騎士が言ってた連中に似てないか?)

(ああ、確かに似てるな。でもよ、あんな話信じられるか? たかが女4人に騎士連中が負けるってよ?)

(そうなんだよなぁ。しかも魔物の群を操ってたとか言ってたしな。でもよ、鬼気迫る勢いだったぜ?)

(それって魔薬でもやってたんじゃないか?)


 私達に聞こえないようにヒソヒソと話してるみたいだけど、ドローンはバッチリとその音声を拾っていた。


「お前達、ちょっと詰所まで来てもらおう」


 って感じで結局は詰所に行くことになった……というか連行されてると言った方が正しいかもしれない。

一応キャメルという人に会いに来たと言ったら、信じられないって顔をされた。

 そんな微妙に納得いかない状況の中、私達は取り調べを受けてる最中です、はい。

 カッコつけて乗り込んどいてこの様とは……とか思ってる奴、文句があるなら代わってやるわよ?


「お前達は何処から来たのだ?」


 どこから来たと言われてもねぇ……。

まさかダンジョンから出てきましたとは言えないし、適当に答えよう。


「グロスエレムの方から? としか……」


「うげ、あの国かよ……」


 うげ、とは何よ! うげ、とは!

そっちから聞いてきたんでしょうが!

というかグロスエレム教国って嫌われてるのかしら?


「それで、この国に()()()()()()()来たんだ?」


 何を仕出かしにって、随分な言われ方よね?

あの国(グロスエレム)はこれまで何をやらかして来たのだろうか……。


「一応旅をしてるだけなんですけど? それからグロスエレム教国とは一切関係ありません」


 ダンジョン撲滅を掲げてるってだけでも迷惑なのに、なんでその国の関係者と思われなきゃなんないのよ。

本っ当~に迷惑な国ね、グロスエレムって!


「あのなぁ、グロスエレムの連中は皆そう言うんだよ。俺はあの国とは関係ないってな」


「………………」


 呆れてものも言えないわ……。

というか何も言えないわ。

いったいどうしろって言うのよこの状況。

 まさかグロスエレムを口に出しただけでピンチに陥るとか夢にも思わなかった。


 その後も何とか切り抜けようとしたが全て失敗に終わり、いよいよ強行手段に出ようかとした時、1人の女性が現れた事により救われたのである。


「あらあら、ダメじゃないのレディーを困らせちゃ」


 その女性は茶髪に犬耳だか猫耳だかを生やした獣人の女性だった……って、この人!


「これはキャメル殿、しかしですな、ボーアロッカ様の騎士から聞いた話の人物と一致しましたので、こうして取り調べてる訳でして」


「この娘達の身元は私が保証するわ。だって()()()()交友があったもの……ね?」


 直接会うのは初めてだけど、ダンジョン通信で見た通り女性、キャメルさんが救済に来てくれたようだ。

 当然交友はあったので頷く。

私は交友があった事を忘れてたけども……。


「じゃあもういいわね?」


「ま、まぁ、元々信憑性にかける情報でしたので構いませんが……」


 そのままキャメルさんに手を引かれて詰所を出ると、小走りで近くの広場までやってきた。


「ここならいいか……じゃあ改めて自己紹介をするわ。初めまして、キャメルよ。()()()()会うのは初めてね」


 そして改めて自己紹介をしてきたので私も自己紹介を行う。

なんか散々話した後に自己紹介するのって変な感じね。


「ありがとう御座います、キャメルさん。ダンジョン開放前を入れると、2回も助けられた事になりますね」


 キャメルさんに言われるまで忘れてたけど、以前何度かダンジョン通信でアレクシス王国の集いに参加した時に、情報提供をしてもらってたからね。


「ま、そんな細かい事は気にしないからいいわよ。それよりも……」


 う……何か嫌な予感が……。


「ねぇアイリちゃーん? 私は言った筈よ? グロスエレムの人間に扮するのは面倒な事になる! ってね」


 ……そうだったっけ? …………あぁダメだ、全然思い出せない。


「ふむ。そう言えば言うとったのぅ、グロスエレムは人間至上主義だから、注意するようにとかなんとか」

「グロスエレムの周辺国は~、迷惑を被ってると~、言われてるそうですね~♪」

「お姉様、ログが残ってるので後で確認されてみては?」


 こらアンタら! 余計な事言わない!


眷族(けんぞく)の方は優秀みたいね?」


「はい、私には勿体無いくらいです……」


 眷族が優秀なのは事実だから反論するつもりはない。

 ですがキャメルさん、細かい事は気にしないんじゃなかったの?




 ……等と言うつもりはない。

言ったら物理的に制裁されそうだから。

というか怒ってるところとかお母さんにそっくりなのよね。

それで余計に恐縮しちゃうとか。

 勿論だけど、キャメルさんに対してお母さんみたいですね! ……等と言うのは、もっての他よ。

言ったらそれが遺言になるわ、間違いなく。

何故なら鑑定したら未婚って出てきたからね。だから……ヒィ!?」


 何故だかキャメルさんの髪が逆立って、あのスーパーな野菜戦士みたくなってる!?


「ねぇ、途中から声に出てるんだけど……」


 しまった! つい本音が……。


「じゃあ今のが遺言って事でいいわね?」


 良くはないけど話し合いが拗れてイダダダダダダ!」


 気付いたら頭を両手でグリグリされてた。

私のステータスが高くても痛いものは痛い!


「アンタは一言多いのよ! 悪かったわね未婚で! どうせ今年で三十路よぉ!!」


「アダダダダイタイイタイイタイ!」


 まさかこんな所で地雷を踏み抜くとは思わなかった……。


「さすがにこれはお姉様が悪いかと……」

(しゅ)よ、学習するとよい……」

「年齢なんてただの飾りです」


 どうやらアイカ達にも見捨てられたらしい。

 というかセレン、キャラ変わってない?






 とまぁ、多少のトラブルがあったけど、私達は無事キャメルさんと合流し、今はキャメルさんのダンジョンにお邪魔している。

 そんなキャメルさんの邸は、地上部は普通の邸になってて、地下からは本来のダンジョンが姿を表すようだ。

 私達4人とキャメルさんは応接室に入ると、外に声が漏れないように結界を張る。

因みに結界を張ったのはキャメルさん。

使用人達は普通の人達らしい。


「それで、アイリはどこまで知ってるの?」


「次期国王候補の派閥で争いが起こってるという事と、それにつけ込んでプラーガ帝国の工作員が動いてる事と、国内にプラーガ帝国と内通してる貴族が居る事と、ヨゼモナールが表向き暗殺されたって事と、セレスティーラとバーミレニラとヨゼモナールの3人を保護してるって事くらいです」


 うん、実際に言葉にしてみると、かなり多くの事を知ってるわね、私。


「アンタ、実はあたしよりも詳しいんじゃないの……」


 最初にセーラさんを保護してから、なし崩し的にそうなったのよね。


「それで、ヨゼモナール様が暗殺されたのが表向きってどういう事?」


 私はレミエマに説明したのと同じように、キャメルさんにも話した。

中でも一番驚かれたのが、意外にもプラーガ帝国の工作員を捕らえた事だった。

 確かに樋爪潔(ひづめきよし)って奴は、私だけだと逃げられてた可能性はあるかも。


「……成る程、ヨゼモナール様達が無事だから国王は落ち着いてらしたのね。……いえ、それよりもそのヒヅメキヨシって言う奴はプラーガ帝国への交渉材料使えそうだわ。そいつを引き渡してくれたら報酬を用意するけど、どう?」


 元々引き渡すつもりだったし、私のダンジョンに居ても邪魔なだけだから、引き取ってくれるなら有り難い。

なので当然返答はイェスよ。


「アイリ、感謝するわ。お陰で事態を終息させる事が出来そうよ。だけど、1つだけ手に負えない事があるわ」


 キャメルさんは人指し指を立てるのと同時に、自身の犬耳だか猫耳だかをピーンと立てた。

その姿がちょっとだけ可愛いと思ったけど、当然口にはせず、その思考は闇に葬る。


「ホエロスって言うダンジョンマスターの事よ。そいつの眷族にヨゼモナール様の護衛が殺されそうになったんなら相当危険よ」


 瀕死だったミスティは、ステータスは高かった。

それにハンナも同じくらい強かったし、あのメッザーとかいう奴がスキルか魔法を使ったせいだと思う。

 でも今なら問題ないわ、アンジェラ1人で蹴散らせるだろうし、居場所もアンジェラなら探知出来るしね。


「ホエロスなら私達に任せといて。キャメルさんは貴族連中の方をお願いします。特に満持紀子(みつもちのりこ)は生け捕りで」


「プラーガの工作員を捕まえるくらいだから大丈夫だと思うけど、くれぐれも注意するのよ? こっちのミツモチノリコは確約は出来ないけど善処するわ」


 これで話はついた……と思ったところで、アイカがキャメルさんに質問を投げ掛けた。


「キャメル様、1つ気になる事があるのですが、ヨゼモナール王子達の安否を国王が知ってるような口振りだったと記憶してますが、何故なのです?」


 アイカに言われるまで気付かなかった……。

そう言われればそうよね、これじゃまるでヨゼモナールと国王が電話でもしてるように見えてくる。


「中々鋭いわね、その優秀さを称えて教えてあげるけど、王族の一部の者は念話ピアスっていうアイテムを使用して情報のやり取りを行ってるのよ」


 そうか、その念話ピアスってのをヨゼモナール達が持ってたとしたら、自分が無事だという事を伝える筈だもんね。


「ならばキャメル殿は、王族達に認められて教えて貰ったという事かの?」


 アイカに続き、アンジェラの質問には首を左右に振って答えてくれた。


「あたしはその情報を掴んだだけ。だからこの事は、あたしから聞いたって言ったら絶対にダメよ?」


 さすがに王族の秘密を知った者の末路は知りたくないので、キャメルさんから聞いたとは絶対に言わない。

 利用はするけどもね。






 キャメルさんとの情報交換も終わり、王都で1泊するための宿を探した。

話し込んでたら夜になっちゃったので。

 だったらダンジョンに帰ればいいと思うかもしれないけど、王都は結界で覆われてて直接転移する事が出来ないのよ。

ダンジョンに戻るために何度も街門を潜りたくないって事で、セキュリティの良さげな宿泊施設を見つけたので、そこに泊まることにしたわ。


「いらっしゃいませ、4名様のお泊まりでよろしいでしょうか?」


「うむ、そうじゃぞ」


 対応はアンジェラにやってもらった。

私やアイカだと舐められそうだし。


「お1人様1万サークになりますので、4名様ですと4万サークになります」


 たっっっか! 高過ぎじゃない!

今の所持金じゃ全然足りないわ……。


「あら嫌だわ、部を弁えない平民が紛れ込んでるなんて」

「まったくザマス。場違いにも程があるザマス」


 ムカつく! すんごいムカつく!

 こうなったら意地でもこの高給宿泊施設に泊まってやろうじゃないの!




 そう思って飛び出した私が向かった先は、ズバリ武器屋。


「らっしゃい! 剣でもお探しかい?」


「いえ、この剣を売りたいのよ。いくらで買い取ってくれる?」


 取り出したのは1本のロングソード。

ただし普通のロングソードじゃないわ、この剣はミスリル製のロングソードなのよ。

それに加えて簡易的なエンチャントを施したから、価値は高い筈よ。

 因みにこの剣は、ここに来る前に路地裏で召喚した物よ。

後は目の前に居る武器屋のオッサン次第でしょうね……と、思ってたら……、


「これは素晴らしい剣だ! ミスリル製の上にエンチャントまで施してある」


 顔を上げて私を見るオッサンの目は、眩しく輝いていた。


「この剣は金貨10枚……いや15枚……いやいやいや、20枚だ、金貨20枚で買い取ろう!」


 よし、取引成立!

私は金貨を受け取ると、そのまま高給宿泊施設に舞い戻り、先程馬鹿にしてきた貴族達に見せ付けるように金貨をカウンターの上に出した。

 さっきの貴族達は悔しそうな顔をして去っていった。

 よし、私の勝利に終わったから、気持ちよく寝れそうね。


アイカ「お姉様、エリクサーを売った方が早かったのでは?」

アイリ「騒ぎになるわよ、それ……」

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