表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第1章:外の世界
7/255

アレクシス王国へ

全階のあらすじ

 地上の人々との共存を目指そうと考えたアイリは凶悪仕様のダンジョンから一転させ、ベリーイージーなものに作り替えた。

そんなある日に来客が来たというアイカからの報告で、天界よりクリューネという女神が訪れた事が判明。

その女神の気まぐれな助言によりダンジョン通信という情報収集手段を得たアイリは、自らの予想でダンジョンはアレクシス王国に近い場所に出現すると断定し着々と開放準備を進めていった。

「おーいお前ら、そろそろ交代だぜ!」


「お、そうか。じゃあ頼むわ」


「あいよー」


 丁度今、リップコールの街の防壁の上で兵士が見張りの交代を終えたところだ。


「うー寒っ! もう春は過ぎそうだってのに、何でこうも寒いのかねぇ」


「夜なんてこんなもんだろ」


 確かにやや寒さを感じる。

防壁上の()()()()()()が風で揺れている。


「いや、昨日からこの街に配属になったばかりでよ、こんなに寒いとは思わなかったんだよ」


「ん? もしかして南の方の出身か?」


「ああ、あっちだとこんなに寒いなんてこたぁないんでな」


 どうやらこの国の南側は、初春でももっと暖かいようだ。


「しっかし、暇だよなぁ。何かこう面白いことでも起こんねぇかな」


「おいおい滅多なこと言うなよ? そんなことが()()の耳に入れば、魔女の森へ遠征に駆り出されるぞ?」


 少々物騒な話になってきた。魔女の森の遠征という単語は聴き逃せない。


「つってもまだ先だろ? どうせグロスエレムが動いた時の牽制なんだろうし」


「まぁな。だが万が一、グロスエレムが魔女の森に着手したら動かざるをえないぜ?」


「大丈夫だろ。グロスエレム国内のダンジョンが枯渇しない限りはな」


「しっかし理解できんよな。上手くいけば、ダンジョンは資源の宝庫なのによ、なんだって連中は潰したがるんだか」


「さぁな? 宗教国家の考えることなんざ、一般人にぁわかんねぇさ。全く、面倒な国が()()にあるよな」


 それを最後に兵士たちは口をつぐんだ。

そしてそんな兵士たちを上空から観察してた存在がいることに気がついた者はいなかった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



『なるほどね、良くやったわホーク!』


『ま、当然や。こんくらい朝飯前やで』


 今、念話で話したのは、眷族のワイルドホーク。

ホークにはダンジョンを出た東側を探索してもらってるところだ。

東側にはリップコールという街が存在した。

とはいえ物凄く遠いみたいだけど。


 そこの兵士達の話では、グロスエレム教国と隣接している。

兵士たちの上には皇帝が存在する。

街の防壁上に掲げてる国旗には、竜に跨がった騎士が描いてあった。


「うん。間違いなくプラーガ帝国ね」


「ということはお姉様、やはりこの地は……」


 ダンジョン開放と同時に、私たちは地上に出た。

そしてダンジョン周辺を見渡すと、どうやら森林の中に居るということがわかった。

そこで東側にホークを放ち、探索してもらった結果が……、


「東側にプラーガ帝国があるということは、南側にグロスエレム教国があるわね」


「そうなりますと、北側にはミリオネック同盟、西側にはアレクシス王国があるということになります」


 実のところ、プラーガ、グロスエレム。ミリオネック、アレクシス、この4つの国に隣接する森が存在し、名称を魔女の森と言われている。


 そして、その魔女の森の中にあるのが……、


「私のダンジョンってわけね……」


 もうね、なんというかね、見事にフラグを全力で回収しちゃいました! 的な感じよ。

よりによって危険な国々に四方を囲まれてるとか……ま、その辺は考えがあるから、何とかなるだろうけどね。


「これからどうしやす姉御?」


「まずは夜明けを待ちましょうか。そして夜明けと共にアレクシス王国に向かうわ」


 本来は夜明けを待つ必要はないんだけど、夜中に移動してるのを万が一冒険者に見られると、いろいろと面倒臭いのよ。

だから今回は早朝までダンジョンで寝てるつもり。


「で、一緒に行くメンバーだけど……」


 基本的に人化できる者しか連れていけないので、アンジェラかモフモフかセレンが候補になる。

ついでに紹介しとくけど、セレンは眷族のセイレーンのことね。


「あっしはできれば、人化はしたくないんですが……」


 まぁモフモフが人化したことなんて、今までほとんどなかったもんね。

なんとなく人化したくないのは知ってた。


 となると、強制的にアンジェラとセレンを連れていくことになるわね。

勿論アイカも一緒よ。


「外の世界は久々じゃのう。ちと、朝になるのが待ち遠しいのぅ」


「わかってると思うけど、朝まで大人しくしてるのよ? 興奮してその辺の木々を燃やしたり、薙ぎ倒したりしないようにね?」


「わ、わかっておるわ!」


 ちょっと動揺してるみたいだけど、本当に大丈夫よね?


「わたくしも~、連れていって~、もらえるのですね~♪」


「うん、道中しっかり頼むわね」


「分かりました~♪」


 今回はモフモフに、ダンジョンのラスボスとして控えてもらおう。


 さぁ、果報は寝て待て……とはちょっと違うけど、一休みしましょうか。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「ふぅ、ようやく魔女の森を抜けたわね」


「はい、魔女の森を抜けて2日くらいのところにラムシートの街があります」


 魔女の森を移動中に襲ってきた魔物を問題なく蹴散らし、ようやく森を抜けたところだ。


 しかし、よくよく考えるとこの4人パーティーは、全員が美女美少女で魔女の森を抜けるのは不自然だったかも知れない。


 私とアイカは普通の街娘にしか見えない。

ちゃんと服は選んだわよ? さすがに現代の洋服を着たら目立つから、この世界基準に合わせた服をチョイスした。


 セレンは金髪のセミロングで、私と同じくらいの年齢に見える。

ちなみに何故か詩人っぽくリュートを持ってたから理由を聞くと、人化するとリュートがセットで付いてくるらしい。


 そしてアンジェラだけど、ショートカットの紫髪で20代前半に見える。

身長も一番あるし、私たちの中では一番強そうに見えるわね。

 まぁ実際にそうなんだけども。

ついでに言うと、巨乳美人ね。

セレンが()()を見て黒いオーラを出してたけど、怖かったので気付かないふりをした。


 でもトータルバランスで見ると……うん、全然強そうに見えないわ、このパーティ……。

このパーティで魔女の森を歩いてるのを見られたら不審に思われてたところよ。

 時既に遅しだが、冒険者に会わなかったのは幸運だったと思う。


「して(しゅ)よ、アレクシス王国に行って何をするつもりかの?」


 おっと、そういえばまだ目的を言ってなかったわね。


「まずは冒険者登録をするわ。時には冒険者として、時にはダンジョンマスターとして動くつもりよ」


「それは~、面白そうですね~♪」


「……面白いかどうかは不明ですが、冒険者側とダンジョンマスター側の情報を仕入れて動くのは、非常に効率的ですね」


 害意のあるダンジョンマスターを発見したら、冒険者として他の冒険者を焚き付けながら攻めることができるようになる。


 但し、逆もまた然りなので、注意深くやるつもりよ。


「主よ、前方で何者かが戦闘してるようじゃが、どうする?」


 む、もしかしたら地上の人間と初遭遇かな?


「何と何が闘ってるのかわかる?」


「どれ、ちょいと待っておれ…………ふむ、どうやら何者かの馬車が、ゴブリンに襲われてるようじゃな」


 今アンジェラが行ったのは、アンジェラの持つスキルである探知波動(エクスプロルウェーブ)で誰がどこに居るかを探しだすスキルよ。


 ただし、アンジェラの知ってる存在でなければ誰が襲われてるのか分からないんだけども。

でもゴブリンなどの魔物は皆同一個体と見なされるので探知できるらしい。


 何者か……ね。

傲慢な貴族じゃなければいいけどね。

まぁ何か情報が手に入るかも知れないし、パパッとゴブリンを蹴散らしますか。


「私が助けに入るわ。みんなは後からついてきて!」


 なるべく犠牲者が出るのを見たくないから、急いで駆けつけることにした。






 ガキイィィィン!!


「ちっ、また防がれたか……くそっ、数が多いぜ!」


 数が多いせいで、中々決定打が出せねぇ!

少数なら問題ねぇはずだが、数の暴力がここまで厄介だとは思わなかった!


「文句言うなら手を動かせ! ハッ!!」


 んなことは分かってる!

分かっちゃいるが、叫ばずにはいられねぇ状況だろうがよ!


「まずいわ、そろそろ魔力が切れそう!」


「マジかよ! ……クソが!」


 2日前、俺たちなら護衛もできると言って、啖呵(たんか)切った自分を殴ってやりてぇ!


「ギャギャギャ!」 


 肩で息をしてる俺を見て好機だとでも思ったのか、俺の方に踏み込みながら剣を大振りにしてきた。


 ギィィィン!


「ぐ……こしゃくなぁ! デヤァ!!」


 だが隙を見せたわけじゃない俺は一応余裕を持って払いのけ、空いた胴体を袈裟斬り(けさぎり)にしてやった。

 

 ザシュ!


「ギャ! グギャ……」


 (ようや)く目の前の1匹を倒したぜ。

だが、状況は改善されねぇ!


「……まだ8匹もいやがるのか」


 まずいまずいまずい!

疲労で手元がぶれてきやがった!


「カイン後ろ!!」


「なっ!?」


 メージェの言葉に背後を振り向くと、そこには今まさに剣を降り下ろそうとするゴブリンが、視界に入ってきた。

 回避は間に合わない!

万事休すかと、思わず目を瞑ってしまったが、いつまで経っても斬撃がこない。


 恐る恐る目を開けると、そこにはゴブリンを真っ二つに切り裂いていた黒髪の美少女がいた。


「援護するわ! 貴方たちは馬車を守って!」


 いきなりで呆気にとられたが、直ぐに本来の依頼を思い出し、俺たち3人は馬車の前を固めた。


 だが援護してくれるとはいえ、1人増えたところで……、






 ぇええ!?


 俺は驚いた……いや、恐らく驚いたのは俺だけじゃく、他の2人もだろう。


 馬車の前に来た直後、2匹のゴブリンの首が

宙を舞っていた。


 何が起きた? と思ったのも束の間、今度は3匹のゴブリンが黒焦げになって倒れた。


 誰がやったかなんて1人しかいない。

あっという間に、残り3匹となったゴブリンの内1匹に剣を突き刺して、振り向き様にもう1匹を斬り捨てる。


 最後に残った1匹は、自棄を起こして俺たちに突撃してきたので、俺が剣で防いでる間に、ガルベスが突き殺した。


 あれほど苦戦したゴブリンが既に瞬滅したにもかかわらず、未だに俺たちの思考は追い付いてなかった。

俺たちは夢でも見てるのだろうか……そんな風に思ったが、渦中の少女がその夢から解き放ってくれた。


「あのぅ……大丈夫……ですか?」


 ハッとなってよく見ると、何てことはない。今は普通の少女に見える、()()

とりあえず礼を言わねばならない。


「あ、だ、大丈夫……だす。……ありがちょう」


 あれほどの窮地から救ってくれたこの少女は、間違いなく命の恩人だ。

だが俺は精一杯の礼を言おうとして噛んでしまった……。


 どうやら疲労でぶれてきたのは手元だけじゃないらしい。






「いやはや見事だのう、レベリングの時のぎこちなかった動きが嘘のようじゃ。さすがは我の(しゅ)だのぅ」


 今アンジェラが言ったように、ダンジョンでレベリングを行ってる時点では外に出るのは危険ではないかと思われたのですが、今思うと杞憂でしたね。

さすがお姉様です。


「クックックッ、助けられた者たちは驚いてるようだのぅ」


 アンジェラは探知できるから分かるのでしょうが、わたくしアイカは遠目で辛うじて人が動いてるのが見える程度です。

実に残念ながら、お姉様の勇姿を見ることはできませんが、アンジェラの嬉しそうな表情を見るに救世主のように登場し、瞬く間にゴブリンを蹴散らしたのだとイメージできます。


(たくま)しく~、成られましたね~♪」


 いや、セレンはお姉様のレベリングを見てなかったと思うのですが、わたくしの記憶違いでしょうか?


「ノリで~、言ってみました~♪」


 フムフム……ノリというものがいまいち分かりませんが、嘘を言ってもいいということなんでしょうね、わたくし一つ賢くなりました。

 これからお姉様に内緒でスイーツという異世界のお菓子を召喚する時は、ノリで召喚してみることにしましょう。


「それにしても短期間でここまで強くなるものなのでしょうか? わたくし少々疑問に思います」


「そうだのぅ。妾もそれは感じておったぞ」


「やっぱり~、神様からの~、ギフトが~、影響してるのでしょうね~♪」


 やはりそうなのでしょうね。

以前お姉様から聞いた話では、神様にお会いした時に、加護をいただいたと言っておりましたからね。


「ステータスを上昇補正しとるのかのぅ」


 こればかりはお姉様も知らないらしいですからね。

今度クリューネ様がお越しになった際に聞いてみるとしましょう。


 さて、それはともかくとして、お姉様がこっちを見て手を振ってますので、早く駆け付けることにしましょうか。


アンジェラ「ふぅ、肩が凝るのぅ」ユッサユッサ

セレン「…………そのぶら下げてるのを~、取り除けば~、宜しいかと思います~♪」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ