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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第3章:アレクシス王国の暗部
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閑話:眷族の秘密1

 時は遡り(さかのぼり)新たなモンスターを眷族にすべくランダム召喚を行った後の話だ。

ランダム召喚により、リヴァイ、ルー、ギンの3名が新たに眷族として仲間入りをした夜の食卓での一幕の事。


「はぐはぐ……うんうん……」


 私の隣では、アイカが必死になってケーキを貪っていた。

夜食に何故スイーツなのかという疑問はあるけど、理由はアイカだからで済まされてしまう。

だから私も徐々に気にしなくなっていったんだけど、1つだけ気になる事がある。


「ちょっとアイカ。そんなに食べるとデブるわよ?」


「んぐんぐ……お姉様、それは有り得ません。この体はお姉様を元にした自動人形(オートマタ)です。自動人形は体形が変わる事はないため、永遠にデブる事はありません」


 ……ズルくない? それ……。


「ですがお姉様は注意して下さいね、お姉様の身体は自動人形(オートマタ)ではありませんので、食べ過ぎると普通にデブります」


 そんな事は言われるまでもないわ。

私の場合はちゃんと食生活には気を付けてるし、間食も控えてるんだから。


 そういえば今日の昼間の事だけど、アイカとルーがお菓子を奪い合ってたのよね、最終的にアイカがルーに関節決められてギブアップしてたけど。

 その内ルーもデブって……あれ?


「まさかとは思うけど、ルーまで体形が変わらないって落ちじゃないでしょうね?」


「お姉様、眷族は魂が肉体に入り込んでるので、普通の生物と同じように肥ったり痩せたりしますが、ルーの場合はゴーレムですからね。もしかしたら肥らないのかもしれません」


 マジで言ってますか!?

ズルいどころの話じゃないでしょ!?

私だって食べたいけどカロリー気にして食べないように気を付けてるのに、アイカに続いてルーまで横でバクバクと食べまくってるのよ。


「聞いてみないと分かりませんが、多分肥ったりしないのでしょうね」


 世の中って不公平だわ……。

 あれ? そういえば……、


「ねぇ、さっき眷族は魂が入り込んでるって言ったわよね? それって眷族以外のモンスターってアンデッドみたいなものなの?」


「おや、そこに気付きましたか。まぁほぼ正解と言ってもいいでしょうね。外の魔物と違ってダンジョンモンスターは倒すと死骸が残らず即消滅しますからね。ですからダンジョン内では剥ぎ取りは出来ない訳です」


 新たな事実が発覚したわね。

ダンジョンのモンスターは眷族以外はアンデッドねぇ。

 というか他のダンジョンマスターは、みんな知ってるのかしら?

 それに眷族達は最初はアンデッドだったという事になるんだけど……。


「ねぇアイカ、眷族にするって事はモンスターを生き返らせるって事なの?」


「はい、これもほぼ正解です。ダンジョンで召喚されたモンスターは、既に死亡した魔物という事になります。なので死亡した魔物の肉体に入魂させて、自分に服従するモンスターとして蘇らせるという事になります」


 なんだかどんどん新事実が明かされていくんだけど、この事は眷族達も知ってるのかな?


「いえ、私は知りませんでしたな」

「妾も同じくじゃ。改めて言われると不思議じゃのぅ」


 リヴァイとアンジェラが知らないなら、他の眷族も知らないかな? そう思って眷族達の顔を見渡したけど、皆揃って首を左右に振った。


「でもほぼ正解という事は、一部違うって事よね? どうなのその辺は?」


 さっきからアイカは、ほぼ正解としか言ってないのよ、つまりまだ秘密が有るって事よね?


「今日のお姉様は冴えてますね。正にその通りで、ダンジョンモンスターにはターンアンデッドという不死者を浄化する魔法は通用しませんし、眷族達も生前の記憶は曖昧です。固体差により、ハッキリと覚えてる者と殆ど覚えてない者とで別れるようです」


 な~る程ねぇ、確かに普通のアンデッドとは違うわね。

 後、私はいつも冴えてるわよ、だから今日も冴えてるの。

そこを間違っちゃダメよ?


「生前の記憶かぁ……ちょっと気になるから皆に聞きたいんだけどいい?」






 そんな訳で、食事が終わったのを見計らって、皆に生前の記憶を語ってもらう事にしたわ。


「生前の記憶ですかい? あっしは殆ど覚えてねぇです」

(それがし)は一応覚えてるで御座る」


 さっそく聞こうと思ったんだけど、アイカの言った通り区々(まちまち)だった。


「オイラは覚えてないどぉ……」

「うむ、妾も覚えておらんのぅ」

「私は~少しなら~覚えてます~♪」


 ふむふむ、モフモフとレイクとアンジェラは覚えてないと。

逆にザードとセレンは覚えてるのね。


「私は覚えておりませんわ」

「俺は覚えてるッス!」

「ワイも覚えてるでぇ!」


 ギンは覚えてない、クロとホークは覚えてると。


「申し訳御座いませんが、私の記憶も殆どが抜け落ちてるようですなぁ」

「ルーは記憶ある。もしくは記録」


 ルーは有ってリヴァイは無しね。

 うーん、綺麗に割れたわねぇ……。

何か法則でもあるんだろうか?


「じゃあ覚えてる範囲でいいから教えて。まずは誰からにしようかな……」


 と考えてるとザードと目が合ったので、最初はザードからにしよう。


「む、拙者からで御座るか? では御披露いたそう、某の軌跡を……」






 某はリザードマンキング。

場所はもう忘れたが、人里から離れた沼地に居を構え、そこに住まう同胞であるリザードマンを(まと)め上げていた。


 王として君臨する事20年、繁栄していた我が国は、獣人達の侵攻により終止符を打たれる事となった。


 相手の名は思い出せぬが、その獣人が率いる部隊に歯が立たず、同胞達は次々に討ち取られていった。


「国王様! 敵はすぐそこまで迫っております! 護衛を数名連れてお逃げ下さい!」


「……それはならぬ」


「な、何故です!?」


 既に居城は包囲されつつあり、逃げ切れる状況にはなかった。

それに20年共に過ごした地を離れるなど出来なかった。


「お前も気付いてるであろう、奴等は1人も逃すつもりはない事を……」


「ぐっ…………」


 そう、奴等は某の首を取りにきたのだ。

これまで繁栄を続けてきた国の終わりを告げるために。


「これより出陣する。残ってる者は俺に続けぃ!」


「「「オオーーッ!!」」」


 死すべき時はこの地でと既に決めていた事もあり、華々しく散るために正面から突撃した。


「おい! 貴様がこの地を治めてる者だな?」


「如何にも。俺の名は○○○、この地を治めているリザードマンキング!」


「やはりそうか……俺の名は○○○! この俺と一騎討ちをしろ!」


 戦の最後を飾るに相応しいと思った。

某は当然この申し出を受けた。


「望むところよ!」


「俺の剣で切り刻んでやる! いくぞぉ!」


 しかし、何度めかの打ち合いの後、某は絶望した。


「グフォ!? 無念……」


「隊長が殺られた! 引けーっ、引けーっ!」


 某の最後を看取るには役不足だったのだ。

敵は退却し、味方は全滅した。

残ってるのは某1人となってしまった。


「1人では国は成り立たん……」


 最早玉砕するしか選択肢は無いと思った某は、敵陣に向かって突撃した。

敵陣に向かう途中で退却中の敵部隊と遭遇したが、敵陣に切り込むのに邪魔だと判断し、そのまま蹴散らした。


「見えてきた。あの山頂だな」


 山頂に陣を構えた敵軍を発見し、単身で乗り込む。

そして某と打ち合える者を徹底的に探した。


「違う違う違う違う! こんなんじゃ駄目だ! もっとだ。もっとタフで筋肉質な脳筋でなければならぬ!」


 敵陣に切り込んだが、まったく手応えがなかった。

それどころか敵は逃げ腰になり、ついには山頂から転げ落ちる者まで出始めた。

 これは(あるじ)の書物に描いてあった、逆落としというものだったのかもしれない。


「……ここにも居なかったか」


 結局、敵は陣を放棄して散り散りに逃げ出した。

だがこれしきの事で諦めたりはしない。

某は侵攻を企てた獣人の国へ1人攻め込んだ。


「だ、駄目だ! コイツの鱗は固いぞ!」

「だったらどうするよ!?」

「エンチャントされた武器が必要だ!」

「んな事言ったってねぇよそんなもん!」


 敵はパニック状態となり、かかってきた敵部隊も崩壊寸前だった。

 しかし、そこへ希望の光が現れた。


「随分と好き勝手してくれたなぁ…倍にして返してやるぜぇ!」


「やってみるがいい! 俺の名は○○○! いざ勝負だ!」


 この男は前の隊長とやらよりは遥かに強かった。

しかし、それだけだった。


「くそ、何故だ、何故当たらねぇんだ!」


 コイツの攻撃はワンパターンだったため、避けるのは簡単だったのだ。


「どうやら俺は、思い違いをしてたようだ」


「何ぃ?」


「脳筋な連中なら俺の相手に相応しいと思っていた。だがそれは違ったようだ」


「どういう意味だ?」


「脳筋はバカ。俺はたった今理解した」


「よーーーし分かった! そんなにぶち殺されてぇんなら、望み通りにしてやらぁ!!」


 そしてその男もあの隊長と同じようになってしまうのかとおもったその時だった。


「よし、今だ!!」


「「「ウインドカッター!」」」


「何だと!?」


 土埃が舞って周囲が見えなくなった時を見計らって、風の刃が某の体を切り刻んだのだ。

 そしてそれは、某の思いが(ようや、)く通じた事を意味したのだ。

 願いが叶ったのを知り、某はそのまま目を閉じた。


「あーくっそぅ! 部隊が滅茶苦茶やられたじゃねぇか!」


「だから言ったんですよ、リザードマンの地に侵攻するのはリスクが多いと」


「だってよぉ、まさかあんな化け物みたいな奴が居るとは思わんだろう?」


「兎に角、被害状況を纏めますから荒れた地の復興をお願いしますよ」


「面倒くせぇ……」






「……とまぁこんな感じで御座ったな」


「そ、そうなの……」


 なんか色々と大変だったみたいね。

それに話だけ聞いてると、敵軍も相当被害を受けたみたいだけど。


「それで今はその敵国の事はどう思ってるの?」


「特に何も。某の記憶としては残ってるので御座るが、某が体感した感じではないで御座る」


「お姉様、恐らく魂が生前の者と違うせいだと思われます」


 ……えーと、つまりそれって……、


「肉体は同じだけど、魂が違うから実感が湧かないという事?」


「そうなります」


 成る程ね、これは確かに完全に蘇生したとは言えないわね。

 一応他の眷族の話も聞いてみよう。


ザード「ところで脳筋とはどのような意味で御座ろう?」

モフモフ「そういや俺も言われた事あるな」

ルー「脳を筋肉のように鍛え上げた存在の事」

ザード&モフモフ「成る程!」

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